《電力》〈水力〉[H28:問1] 揚水発電所における揚水時の同期発電電動機の始動方式と水車の動作に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,揚水発電所における揚水時の同期発電電動機の始動方式と水車の動作に関する記述である。文中の\(\fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$}\)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

① 発電電動機の界磁回路を短絡し,回転子の\(\fbox {  (1)  }\)を利用してかご形誘導電動機として始動するのは\(\fbox {  (1)  }\)始動方式である。
② 発電電動機と他の発電機を停止状態で電気的に接続し,両機に励磁を加えた後に発電機を始動し,発電機の周波数を零から定格値まで徐々に増加させて始動するのは\(\fbox {  (2)  }\)始動方式である。
③ 発電電動機と同軸上に直結された巻線形誘導電動機の二次巻線に接続された\(\fbox {  (3)  }\)で始動トルクを制御して始動するのは直結電動機始動方式である。
④ 発電電動機の停止中にあらかじめ励磁を加え,\(\fbox {  (4)  }\)変換装置で発生した交流電力を発電電動機に加え,その周波数を低周波から定格周波数まで連続的に変えて加速するのは\(\fbox {  (4)  }\)始動方式である。
⑤ フランシス形ポンプ水車の揚水始動時には,始動トルクを軽減するため,\(\fbox {  (5)  }\)を用いて吸出管の水面を下げる。

〔問1の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 波 形   &(ロ)& アナログ-ディジタル   &(ハ)& 発電運転 \\[ 5pt ] &(ニ)& 並列運転   &(ホ)& 圧縮空気発生装置   &(ヘ)& 相切換器 \\[ 5pt ] &(ト)& スライダック   &(チ)& サイリスタ   &(リ)& ジェットポンプ \\[ 5pt ] &(ヌ)& 抵抗器   &(ル)& 制動巻線   &(ヲ)& 排水ポンプ \\[ 5pt ] &(ワ)& スリップリング   &(カ)& 同 期   &(ヨ)& ブレーキリング
\end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

揚水発電の始動方式は今後も二次試験等でも出題される可能性があります。本問を通じてよく理解しておくようにしましょう。

1.揚水発電所の揚水時の始動方式
①制動巻線始動方式
 回転子の制動巻線を利用してかご形誘導電動機として始動する方式です。構造が簡単で制動巻線を回転子に持っていれば良いという特徴がありますが,始動時の入力が系統に影響を与えるため,主に小容量機に採用されます。

②同期始動方式
 発電電動機と他の発電機を停止状態で電気的に接続し,両機に励磁を加えた後に,両機を同期しながら速度を上昇させ,規定の回転数まで上昇させたら並列する方式です。発電電動機とは別に発電機が必要で,構造や回路も複雑となりますが,系統からの入力がないため,系統への影響がない特徴があり,主に大~中容量機に採用されています。

③直結電動機始動方式
 発電電動機と同軸上に発電電動機より2極少ない(定格速度より早くなる)巻線形誘導電動機を直結し始動する方式です。巻線形誘導電動機の二次巻線に接続された抵抗器により始動トルクを制御します。発電電動機を直結するため付属設備が多くなり,軸長も長くなります。したがって,大容量かつ発電所の主機の台数が少ない場合にのみ採用されます。

④サイリスタ始動方式
 発電電動機の停止中に励磁を与え,サイリスタ変換装置で回転子の磁極位置に応じた交流電力を発電電動機に加えて回転数を上昇させる方式です。機械的な始動装置でないため,保守面で有利であり,回生制動が利用できる特徴があります。主に大容量機かつ主機の台数が多い発電所で採用されます。

【用語の解説】

(ホ)圧縮空気発生装置
 フランシス形水車の始動時に水車を水につけたまま始動すると始動トルクが大きくなりすぎるため,圧縮空気発生装置により圧縮空気を入れて吸出管の水位を下げて始動トルクを低減させます。
(ヘ)相切換器
 抵抗器の誤答を狙った選択肢と思います。相切換器というものがあるのかもしれませんが私は知りません。
(ト)スライダック
 変圧器の一種で,二次側の出力を調整することができる装置です。よく実験室や工事現場で見ることがあります。


出典:JA7QQQ気ままな絵日記ブログ

(リ)ジェットポンプ
 高圧の流体を噴射することにより発生する真空を利用し,他の流体を吸い込むポンプ。おそらくジェットブレーキと類似しているため,選択肢となっていると想定されます。水力発電所ではジェットブレーキと呼ばれるペルトン水車等の衝動水車のバケット背後に噴射してブレーキをかける機械があります。
(ル)制動巻線
 不平衡負荷運転や負荷の急変等により,発電機に逆相電流が流れると,回転子に高調波が発生し,回転子の表面が過熱することがあります。制動巻線により,この逆相電流の磁界を吸収させるのが制動巻線の役割ですが,ワンポイント解説の通り,揚水始動時に始動器として利用することもあります。
(ワ)スリップリング
 発電機から回路に電気を取り出す接続部に使用するリングです。


 出典:わかりやすい高校物理の部屋 HP

(ヨ)ブレーキリング
 あまり電験では出てこない用語です。おそらく他分野の内容であると思います。

【解答】

(1)解答:ル
ワンポイント解説の通り,回転子の制動巻線を利用してかご形誘導電動機として始動するのは制動巻線始動方式です。

(2)解答:カ
ワンポイント解説の通り,他の発電機を停止状態で電気的に接続し,両機に励磁を加えた後に発電機を始動し,発電機の周波数を零から定格値まで徐々に増加させて始動するのは同期始動方式です。

(3)解答:ヌ
ワンポイント解説の通り,直結電動機始動方式は二次巻線に接続された抵抗器で始動トルクを制御します。

(4)解答:チ
ワンポイント解説の通り,停止中にあらかじめ励磁を加え,サイリスタ変換装置で発生した交流電力を発電電動機に加え,その周波数を低周波から定格周波数まで連続的に変えて加速するのはサイリスタ始動方式です。

(5)解答:ホ
題意より,解答候補は(ホ)圧縮空気発生装置,(リ)ジェットポンプ等になると思います。フランシス形水車の始動時に水車を水につけたまま始動すると始動トルクが大きくなりすぎるため,圧縮空気を入れて吸出管の水位を下げて始動トルクを低減させます。



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