【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
次の文章は, 配電系統の塩害に関する記述である。文中の\(\fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$}\)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
塩害は,配電系統の中で対策,処理が難しいものの1つであり,重汚損地域における塩害事故の発生には高圧配電線の\( \ \fbox { (1) } \ \)によるものがある。この発生機構は絶縁電線の表面が塩分などで汚損された状態で\( \ \fbox { (2) } \ \)を伴うと,電線表面に漏れ電流が流れ,その発生熱により局部的に電気を通しにくい\( \ \fbox { (3) } \ \)が生成される。このため,導電路が分断されて\( \ \fbox { (4) } \ \)が起こり,放電箇所に\( \ \fbox { (5) } \ \)が形成される。\( \ \fbox { (1) } \ \)は,これらが繰り返されることにより導電経路が形成されることである。
通常の塩分付着であれば,雨で洗い流されて問題ないが,台風時または強風時には,雨を伴わない海からの風で,広範囲において塩分を含んだ風が侵入し,事故に至ることがある。
〔問4の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& トラッキング &(ロ)& 乾燥帯 &(ハ)& アーク痕 \\[ 5pt ]
&(ニ)& 異相地絡故障 &(ホ)& 絶縁破壊 &(ヘ)& 短絡故障 \\[ 5pt ]
&(ト)& 炭化物 &(チ)& 微小放電 &(リ)& 半導電層 \\[ 5pt ]
&(ヌ)& き裂 &(ル)& 乾燥 &(ヲ)& 湿潤 \\[ 5pt ]
&(ワ)& アーク &(カ)& フラッシオーバ &(ヨ)& 異常電圧 \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
変電所ではなく配電系統に関する塩害が出題され,単に塩害に対する対策ではなくトラッキングのメカニズムを出題するところが,電験一種らしい問題であると思います。配電設備では変電所のようながいし洗浄や完全な密閉化は不可能なので,耐塩がいしの導入等設備として耐えうる状況を作り出す必要があります。
【用語の解説】
(イ)トラッキング
絶縁体表面が塩分やちりで汚損された状態で湿潤を伴うと絶縁体表面に漏れ電流が流れ,漏れ電流の発生熱により水分が蒸発し,局部的に乾燥帯が生成します。このため,導電路が分断され微小放電が起こります。この微小放電によって乾燥帯間に炭化物が生成され,これらが繰り返されることで,導電経路が形成されます。
(カ)フラッシオーバ
送電線への落雷により,がいし間の絶縁が破壊され,アーク放電を生じる現象を言います。
【解答】
(1)解答:イ
題意より,解答候補は(イ)トラッキング,(ニ)異相地絡故障,(カ)フラッシオーバ,になると思います。本問はトラッキングの発生機構そのものになりますので,トラッキングとなります。
(2)解答:ヲ
題意より,解答候補は(ル)乾燥,(ヲ)湿潤,等になると思います。絶縁物質は湿潤状態になると導電性が上がるので,湿潤となります。
(3)解答:ロ
題意より,解答候補は(ロ)乾燥帯,(リ)半導電層,等になると思います。湿潤状態で漏れ電流が流れると,水分が蒸発するので,乾燥帯が形成されます。
(4)解答:チ
題意より,解答候補は(ホ)絶縁破壊,(チ)微小放電,(ヌ)き裂,(ワ)アーク,等になると思います。この状態では大きな問題は発生しておらず,乾燥帯では微小放電が起こっている状態となります。
(5)解答:ト
題意より,解答候補は(ハ)アーク痕,(ト)炭化物,(リ)半導電層,等になると思います。微小放電が発生すると,その部分に炭化物が形成され,それを繰り返すことによって,導電経路ができます。