【問題】
【難易度】★★★★☆(やや難しい)
次の文章は,水力発電所に設置される入口弁に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
入口弁は\( \ \fbox { (1) } \ \)の入口に設置され,水車の起動・停止に伴って開閉される止水弁であり,主弁と側路弁からなる。入口弁の主たる設置目的として,\( \ \fbox { (2) } \ \)の低減やガイドベーン又は\( \ \fbox { (3) } \ \)の摩耗を防ぐことが挙げられる。水車起動時には,まず側路弁を開き主弁前後の水圧を均衡させ,その後,主弁を開いていくことで\( \ \fbox { (4) } \ \)の低減を図る。また,水車停止時にガイドベーン又は\( \ \fbox { (3) } \ \)が閉鎖不能になった場合は流水遮断する機能を有する。
入口弁の主弁には複数の形式があるが,落差・流量に応じて採用する形式を使い分けている。中落差・中流量の発電所では古くから\( \ \fbox { (5) } \ \)が用いられてきたが,最近では\( \ \fbox { (5) } \ \)に代わって,圧力損失が比較的小さい\( \ \fbox { (6) } \ \)が採用されている。高落差・大流量で多く採用される\( \ \fbox { (7) } \ \)は流れ方向に直角に設けられた軸を中心として\( \ \fbox { (8) } \ \)の弁体が回転する。水車発電機の運転中は,この弁体内を流水が通過するので,圧力損失が比較的小さい。
また,遮水性が高い水路用ゲートがあり低落差の場合は,入口弁を省略するケースもある。
〔問5の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& ステイベーン先端の摩耗         &(ロ)& ランナベーン \\[ 5pt ]
&(ハ)& ちょう形弁     &(ニ)& 円盤状 \\[ 5pt ]
&(ホ)& ケーシング     &(ヘ)& 主弁シール部の摩耗 \\[ 5pt ]
&(ト)& スルース弁     &(チ)& バイパス弁 \\[ 5pt ]
&(リ)& 流量調整部の起動トルク     &(ヌ)& シールリング \\[ 5pt ]
&(ル)& ガイドベーン     &(ヲ)& 複葉弁 \\[ 5pt ]
&(ワ)& ニードル弁     &(カ)& 停止時の漏水量 \\[ 5pt ]
&(ヨ)& ステイベーン     &(タ)& ロータリ弁 \\[ 5pt ]
&(レ)& 円筒状     &(ソ)& 起動時の漏水量 \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
水力発電所に設置される入口弁に関する問題です。
電験受験生のほとんどが専門外であり,電気というよりは機械的な内容であるため,少し厳しい問題であったかと思います。
ただし,\( \ 2 \ \)種で類題が取り扱われたことはある内容なので,過去問をしっかりと学習された方は高得点できた可能性が高いと予想されます。
1.主な弁の種類と特徴
①仕切弁(ゲート弁)
板状の弁体で流路の開閉をする弁です。
開の状態での圧力損失がほとんどなく,閉の状態での仕切性能が高いという特徴がありますが,中間開度での使用には適していません。
出典:株式会社アピステ HP
https://www.apiste.co.jp/column/detail/id=4607
②玉形弁(グローブ弁)
仕切弁同様弁体で開閉しますが,弁全体が球体なので玉形弁またはグローブ弁と呼ばれます。
閉の状態での遮断性能が高く,中間開度での使用も可能であるため,衝動水車のニードル弁にはこのタイプの弁が使用されています。
配管で用いる場合,\( \ \mathrm {S} \ \)字の流路を辿るため,圧力損失が大きくなるというデメリットもあります。
出典:株式会社アピステ HP
https://www.apiste.co.jp/column/detail/id=4607
③ボール弁(ロータリ弁)
穴の開いた球形の弁体を回転させることで開閉する弁です。
穴が配管の大きさと等しいため,開状態での圧力損失が小さく,仕切弁と異なり\( \ 90 \ \)度回転させるだけで開閉することが可能です。
中間開度での使用には適していません。
出典:株式会社アピステ HP
https://www.apiste.co.jp/column/detail/id=4607
④バタフライ弁(蝶形弁)
円板状の弁体が弁棒を軸にして回転することで開閉する弁です。
中間開度での使用も可能で省スペースで設置可能ですが,円板状の弁体が開時に流路中心にあるので,圧力損失がやや大きく,ウォーターハンマー等も発生しやすいという点もあります。
バタフライ弁の圧力損失を改善するため,弁棒を複数とし流路中心にしない構造の複葉弁という弁もあります。
出典:株式会社アピステ HP
https://www.apiste.co.jp/column/detail/id=4607
2.水力発電所の入口弁
入口弁は,主にケーシングの入口に設ける弁で,
 ・水車停止時の漏水を減少させ,ニードルもしくはガイドベーンの摩耗を防ぐ
 ・水車停止時にニードル又はガイドベーンが閉鎖不能となったとき流水を遮断する
 ・水路を共有するほかの水車などがある場合に当該水車のみを断水する
 ・水車の内部点検時の水車断水時間を短縮する 等
のために設けられます。現在多く使用されている入口弁の形式には,ロータリ弁,バタフライ弁,複葉弁等があります。
落差が大きい場合等弁の前後圧力差が大きい場合は,主弁のトルク過大やシール部の摩耗の観点から主弁とバイパス弁から構成され,通水の際にはまずバイパス弁を開き前後の水圧を均等にした後主弁を開くようにします。
出典:神奈川県 HP
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/ch5/kouzou.html
【解答】
(1)解答:ホ
題意より解答候補は,(ロ)ランナベーン,(ホ)ケーシング,(ヌ)シールリング,(ル)ガイドベーン,(ヨ)ステイベーン,等になると思います。
ワンポイント解説「2.水力発電所の入口弁」の通り,入口弁はケーシングの入口に設置される弁となります。
(2)解答:カ
題意より解答候補は,(イ)ステイベーン先端の摩耗,(ヘ)主弁シール部の摩耗,(リ)流量調整部の起動トルク,(カ)停止時の漏水量,(ソ)起動時の漏水量,等になると思います。
ワンポイント解説「2.水力発電所の入口弁」の通り,入口弁の目的として適当なのは停止時の漏水量の低減となります。
(3)解答:ワ
題意より解答候補は,(ロ)ランナベーン,(ホ)ケーシング,(チ)バイパス弁,(ヌ)シールリング,(ル)ガイドベーン,(ワ)ニードル弁,(ヨ)ステイベーン,等になると思います。
ワンポイント解説「2.水力発電所の入口弁」の通り,入口弁の目的として適当なのはニードル弁の摩耗の防止となります。
(4)解答:ヘ
題意より解答候補は,(イ)ステイベーン先端の摩耗,(ヘ)主弁シール部の摩耗,(リ)流量調整部の起動トルク,(カ)停止時の漏水量,(ソ)起動時の漏水量,等になると思います。
ワンポイント解説「2.水力発電所の入口弁」の通り,入口弁の目的として適当なのは主弁シール部の摩耗の低減となります。
(5)解答:ハ
題意より解答候補は,(ハ)ちょう形弁,(ト)スルース弁,(ヲ)複葉弁,(タ)ロータリ弁,になると思います。
中落差・中流量の発電所で古くから使われているのはちょう形弁となります。その後の文章の「圧力損失が比較的小さい」がヒントになっています。
(6)解答:ヲ
題意より解答候補は,(ハ)ちょう形弁,(ト)スルース弁,(ヲ)複葉弁,(タ)ロータリ弁,になると思います。
中落差・中流量の発電所で最近使われているのは複葉弁で,中心部を軸に回転しないため圧力損失がちょう形弁よりも小さくなります。
(7)解答:タ
題意より解答候補は,(ハ)ちょう形弁,(ト)スルース弁,(ヲ)複葉弁,(タ)ロータリ弁,になると思います。
このうち高落差・大流量の発電所で使われているのはロータリ弁となります。
(8)解答:レ
題意より解答候補は,(ニ)円盤状,(レ)円筒状,になると思います。
ワンポイント解説「1.主な弁の種類と特徴」の通り,ロータリ弁は流れ方向に直角に設けられた軸を中心として円筒状の弁体が回転します。







 
	        	        		 
	        	        		 
	        	        		 
	        	        		 
	        	        		 
	        	        		 
	        	        		 
	        	        		









 愛知県出身 愛称たけちゃん
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