【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
次の文章は,「電気設備技術基準の解釈」に基づく高圧電路又は特別高圧電路(本問においては,\( \ 1 \ \)次側電路という。)と低圧電路(本問においては,\( \ 2 \ \)次側電路という。)とを結合する変圧器における\( \ \mathrm {B} \ \)種接地工事に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
a \( \ 1 \ \)次側電路と\( \ 2 \ \)次側電路とを結合する変圧器には,\( \ 1 \ \)次側電路と\( \ 2 \ \)次側電路の\( \ \fbox { (1) } \ \)による危険を防止するため,\( \ 2 \ \)次側電路の中性点等の必要な箇所に\( \ \mathrm {B} \ \)種接地工事を施さなければならない。
b 接地抵抗\( \ r_{\mathrm {g}} \ [\mathrm {\Omega }] \ \)は,\( \ \fbox { (1) } \ \)発生時に自動的に\( \ 2 \ \)秒以下で\( \ 1 \ \)次側電路を遮断する装置を設けない場合には,\( \ r_{\mathrm {g}} \ \)を流れる事故電流\( \ I_{\mathrm {g}} \ [\mathrm {A } ] \ \)による\( \ 2 \ \)次側電路の\( \ \fbox { (1) } \ \)点の対地電圧が\( \ \fbox { (2) } \ \mathrm {V } \ \)以下となるような値とするが,\( \ \fbox { (3) } \ \mathrm {\Omega } \ \)未満であることを要しない。
c \( \ \fbox { (1) } \ \)は\( \ \fbox { (4) } \ \)事故となるので,\( \ 1 \ \)次側電路が中性点抵抗接地式の特別高圧電路であって,線路定数等で\( \ I_{\mathrm {g}} \ \)を計算する場合には,正相インピーダンス及び逆相インピーダンスを無視すると,正相電源,零相インピーダンス,\( \ r_{\mathrm {g}} \ \)の\( \ 3 \ \)倍の値の抵抗を直列にした等価回路を流れる電流の\( \ 3 \ \)倍が\( \ I_{\mathrm {g}} \ \)となる。
d この等価回路の正相電源電圧は\( \ \displaystyle \frac {V}{\sqrt {3}} \ \)(\( \ V \ \)は\( \ 1 \ \)次側電路の公称電圧\( \ [\mathrm {kV}] \ \)),零相インピーダンスは\( \ 3R_{\mathrm {N}} \ \)と\( \ \displaystyle \frac {1}{\mathrm {j}B_{0}} \ \)の並列回路(\( \ 1 \ \)次側電路の中性点抵抗を\( \ R_{\mathrm {N}} \ [\Omega ] \ \),\( \ 1 \ \)次側電路の対地サセプタンスを\( \ B_{0} \ [\mathrm {S}] \ \)とする。)で表すことができるので,\( \ \fbox { (5) } \ \)の大小関係のときには,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {g}}&≒&\left| \frac {V}{\sqrt{3}}\left( \frac {1}{R_{\mathrm {N}}}+\mathrm {j}3B_{0}\right) \right| \times 10^{3} =\sqrt{\frac {V^{2}}{3R_{\mathrm {N}}^{2}}+3B_{0}^{2}V^{2}}\times 10^{3} \ [\mathrm {A} ] \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となる。
〔問2の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 2線短絡地絡 &(ロ)& 300 \\[ 5pt ]
&(ハ)& 10 &(ニ)& 2線短絡 \\[ 5pt ]
&(ホ)& 接触 &(ヘ)& r_{\mathrm {g}},\frac {1}{3B_{0}} ≫R_{\mathrm {N}} \\[ 5pt ]
&(ト)& 5 &(チ)& 150 \\[ 5pt ]
&(リ)& 600 &(ヌ)& R_{\mathrm {N}},\frac {1}{3B_{0}} ≫r_{\mathrm {g}} \\[ 5pt ]
&(ル)& 1線地絡 &(ヲ)& 交叉 \\[ 5pt ]
&(ワ)& R_{\mathrm {N}},r_{\mathrm {g}} ≫\frac {1}{3B_{0}} &(カ)& 15 \\[ 5pt ]
&(ヨ)& 混触
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
B種接地工事は変圧器の混触時の電圧上昇を防止するための接地です。電気設備技術基準の解釈第17条は非常に出題頻度の高い内容なので,よく理解しておいて下さい。
1.変圧器の混触発生時の状態
図1に示すように,変圧器高低圧間で混触が発生すると,\( \ 1 \ \)線地絡事故電流が流れます。よって,等価回路は図2のようになります。図2において\( \ r_{\mathrm {g}} \ \)は十分小さいと考えると,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {g}}&≒&\left| \frac {V}{\sqrt{3}}\left( \frac {1}{R_{\mathrm {N}}}+\mathrm {j}3B_{0}\right) \right| =\sqrt{\frac {V^{2}}{3R_{\mathrm {N}}^{2}}+3B_{0}^{2}V^{2}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となります。
【関連する「電気の神髄」記事】
一線地絡時の故障計算(対称座標法)
一線地絡故障時の計算(零相インピーダンス以外を無視できる場合)
【解答】
(1)解答:ヨ
電気設備技術基準の解釈第17条第2項17-1表より,「混触」となります。
(2)解答:チ
電気設備技術基準の解釈第17条第2項17-1表より,「\( \ 150 \ \mathrm {V } \ \)」以下となります。
(3)解答:ト
電気設備技術基準の解釈第24条第1項の2より,「\( \ 5 \ \Omega \ \)」となります。
(4)解答:ル
ワンポイント解説「1.変圧器の混触発生時の状態」の通り,混触発生時は\( \ 1 \ \)線地絡事故となります。
(5)解答:ヌ
ワンポイント解説「1.変圧器の混触発生時の状態」の通り,\( \ \displaystyle R_{\mathrm {N}},\frac {1}{3B_{0}} ≫r_{\mathrm {g}} \ \)の時には,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {g}}&≒&\left| \frac {V}{\sqrt{3}}\left( \frac {1}{R_{\mathrm {N}}}+\mathrm {j}3B_{0}\right) \right| =\sqrt{\frac {V^{2}}{3R_{\mathrm {N}}^{2}}+3B_{0}^{2}V^{2}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となります。
<電気設備技術基準の解釈第17条(抜粋)>
2 \( \ \mathrm {B} \ \)種接地工事は、次の各号によること。
一 接地抵抗値は、17-1表に規定する値以下であること。
<電気設備技術基準の解釈第24条(抜粋)>
高圧電路又は特別高圧電路と低圧電路とを結合する変圧器には、次の各号により\( \ \mathrm {B} \ \)種接地工事を施すこと。
一 次のいずれかの箇所に接地工事を施すこと。(関連省令第10条)
イ 低圧側の中性点
ロ 低圧電路の使用電圧が\( \ 300 \ \mathrm {V} \ \)以下の場合において、接地工事を低圧側の中性点に施し難いときは、低圧側の1端子
ハ 低圧電路が非接地である場合においては、高圧巻線又は特別高圧巻線と低圧巻線との間に設けた金属製の混触防止板
二 接地抵抗値は、第17条第2項第一号の規定にかかわらず、(3) 5Ω 未満であることを要しない。(関連省令第11条)
三 変圧器が特別高圧電路と低圧電路とを結合するものである場合において、第17条第2項第一号の規定により計算した値が\( \ 10 \ \)を超えるときの接地抵抗値は、\( \ 10 \ \Omega \ \)以下であること。ただし、次のいずれかに該当する場合はこの限りでない。(関連省令第11条)
イ 特別高圧電路の使用電圧が\( \ 35,000 \ \mathrm {V} \ \)以下であって、当該特別高圧電路に地絡を生じた際に、\( \ 1 \ \)秒以内に自動的にこれを遮断する装置を有する場合
ロ 特別高圧電路が、第108条に規定する特別高圧架空電線路の電路である場合