《機械》〈パワーエレクトロニクス〉[H20:問4]太陽光発電システム用パワーコンディショナに関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,太陽光発電システム用パワーコンディショナに関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切な語句又は式を解答群の中から選び,その記号をマークシートに記入しなさい。

太陽光発電システム用パワーコンディショナ\( \ \left( \mathrm {PCS} \right) \ \)は太陽電池で発電した直流電力を交流電力に変換し,交流系統に接続された負荷設備に電力を供給するとともに,余剰電力を系統に供給する装置である。\( \ \mathrm {PCS} \ \)は直交変換だけではなく,様々な機能を有している。

太陽電池モジュールは,図に示すような特有の電圧電流特性を持つため,電圧と電流の積である発電電力を最大とする動作電圧が存在する。最大電力点追従\( \ \left( \mathrm {MPPT} \right) \ \)制御はモジュールから最大限の電力を引き出すための制御であり,\( \ \mathrm {PCS} \ \)の大きな特徴でもある。以下にその制御の一例を示す。

電池の出力電力が\( \ P_{0} \ \)で運転されているものとする。電圧を微少に減少させたときの出力電力\( \ P_{1} \ \)を計測してから,電圧を元に戻し,そのときの出力電力\( \ P_{2} \ \)を計測する。\( \ \fbox {  (1)  } \ \)を条件\( \ 1 \ \),\( \ \fbox {  (2)  } \ \)を条件\( \ 2 \ \)とするとき,条件\( \ 1 \ \)を満足する場合には,動作電圧を減少させ,条件\( \ 2 \ \)を満足する場合は,動作電圧を増加させる。条件\( \ 1 \ \),\( \ 2 \ \)ともに満足しない場合は,雲などの影響による\( \ \fbox {  (3)  } \ \)の一時的な変動があったものとして動作電圧を変更しない。この操作を一定時間間隔で行い常に最大電力点で動作するように制御する。

配電系統が停止した場合,発電電力と負荷電力が概ね平衡していると,電圧リレー\( \ \left( \mathrm {OVR, UVR} \right) \ \)や周波数リレー\( \ \left( \mathrm {OFR, UFR} \right) \ \)では停電を検出できず系統に電力を供給し続けることがある。これを\( \ \fbox {  (4)  } \ \)運転という。\( \ \mathrm {PCS} \ \)にはこのような運転状態を防止する機能が設けられており,その検出方法には,電圧波形や位相などの変化を捉える受動的方式と,電圧や周波数に変動を与え\( \ \fbox {  (4)  } \ \)運転移行時にこの変動が顕著となることを利用する能動的方式がある。また,太陽光発電システムが系統から解列された状態で運転することを\( \ \fbox {  (5)  } \ \)運転といい,\( \ \mathrm {PCS} \ \)は\( \ \mathrm {MPPT} \ \)制御から出力電圧一定制御に切り替わる。

〔問4の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& P_{0}>P_{1},P_{1}=P_{2}     &(ロ)& P_{0}=P_{1},P_{1}>P_{2}     &(ハ)& P_{0}>P_{1},P_{1}<P_{2} \\[ 5pt ] &(ニ)& P_{0}>P_{1},P_{1}>P_{2}     &(ホ)& P_{0}<P_{1},P_{1}>P_{2}     &(ヘ)& P_{0}<P_{1},P_{1}<P_{2} \\[ 5pt ] &(ト)& 無負荷     &(チ)& 並 列     &(リ)& 電界強度 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 日射強度     &(ル)& 連 系     &(ヲ)& 単 独 \\[ 5pt ] &(ワ)& 自 立     &(カ)& 磁界強度     &(ヨ)& 集 中 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

太陽光発電システム用パワーコンディショナに関する問題で,一部法規の内容も含まれている問題です。
最大電力点追従制御自体は多くの受験生が知っていると予想され,(1)(2)は問題文を読みながら条件を考えていく内容となっています。\( \ 1 \ \)種では一次試験,二次試験ともにその場で考えていく能力が求められますので,問題文をよく読んで判断できるようにしましょう。

1.最大電力点追従\( \ \left( \mathrm {MPPT}\right) \ \)制御
一般に太陽電池の電圧と電流の関係は図1のような関係があり,出力(電圧×電流)は一定ではなく図2のように変化します。
したがって,太陽光発電では太陽電池アレイの電圧を調整して,最大電力が得られるように制御し,これを最大電力点追従\( \ \left( \mathrm {MPPT}\right) \ \)制御といいます。

2.分散型電源の系統連系設備に係る用語の定義
電気設備の技術基準の解釈第220条で分散型電源の系統連系設備に係る用語の定義が下記の通り規定されています。

<電気設備の技術基準の解釈第220条(抜粋)>
この解釈において用いる分散型電源の系統連系設備に係る用語であって,次の各号に掲げるものの定義は,当該各号による。

五 単独運転 分散型電源を連系している電力系統が事故等によって系統電源と切り離された状態において,当該分散型電源が発電を継続し,線路負荷に有効電力を供給している状態

七 自立運転 分散型電源が,連系している電力系統から解列された状態において,当該分散型電源設置者の構内負荷にのみ電力を供給している状態

十 受動的方式の単独運転検出装置 単独運転移行時に生じる電圧位相又は周波数等の変化により,単独運転状態を検出する装置

十一 能動的方式の単独運転検出装置 分散型電源の有効電力出力又は無効電力出力等に平時から変動を与えておき,単独運転移行時に当該変動に起因して生じる周波数等の変化により,単独運転状態を検出する装置

【解答】

(1)解答:ホ
題意より解答候補は,(イ)\( \ P_{0}>P_{1},P_{1}=P_{2} \ \),(ロ)\( \ P_{0}=P_{1},P_{1}>P_{2} \ \),(ハ)\( \ P_{0}>P_{1},P_{1}<P_{2} \ \),(ニ)\( \ P_{0}>P_{1},P_{1}>P_{2} \ \),(ホ)\( \ P_{0}<P_{1},P_{1}>P_{2} \ \),(ヘ)\( \ P_{0}<P_{1},P_{1}<P_{2} \ \),になると思います。
ワンポイント解説「1.最大電力点追従\( \ \left( \mathrm {MPPT}\right) \ \)制御」の通り,電圧と出力電力の関係は図3のようになり,出力電力が\( \ P_{0} \ \)で運転している状態で電圧を微少に減少し\( \ P_{1} \ \)を計測してから,電圧を元に戻し\( \ P_{2} \ \)を計測するパターンは最大電力点を境に図3に示す\( \ 2 \ \)パターンとなります。このうち,最大電力点よりも電圧が小さい場合(図の左側)には電圧を増加させ,最大電力点よりも電圧が大きい場合(図の右側)には電圧を減少させます。条件\( \ 1 \ \)は電圧を減少させるパターンなので,最大電力点よりも電圧が高い\( \ P_{0}<P_{1},P_{1}>P_{2} \ \)となります。

(2)解答:ハ
題意より解答候補は,(イ)\( \ P_{0}>P_{1},P_{1}=P_{2} \ \),(ロ)\( \ P_{0}=P_{1},P_{1}>P_{2} \ \),(ハ)\( \ P_{0}>P_{1},P_{1}<P_{2} \ \),(ニ)\( \ P_{0}>P_{1},P_{1}>P_{2} \ \),(ホ)\( \ P_{0}<P_{1},P_{1}>P_{2} \ \),(ヘ)\( \ P_{0}<P_{1},P_{1}<P_{2} \ \),になると思います。
(1)と同様に,条件\( \ 2 \ \)は電圧を増加させるパターンなので,図3に示すように,最大電力点より電圧が低い\( \ P_{0}>P_{1},P_{1}<P_{2} \ \)となります。

(3)解答:ヌ
題意より解答候補は,(リ)電界強度,(ヌ)日射強度,(カ)磁界強度,になると思います。
このうち雲などの影響により出力に影響を及ぼすのは日射強度となります。

(4)解答:ヲ
題意より解答候補は,(ト)無負荷,(チ)並列,(ル)連系,(ヲ)単独,(ワ)自立,(ヨ)集中,になると思います。
ワンポイント解説「2.分散型電源の系統連系設備に係る用語の定義」の通り,配電系統が停止した場合に発電電力と負荷電力が概ね平衡しているとき,系統に電力を供給し続けることを単独運転といいます。

(5)解答:ワ
題意より解答候補は,(ト)無負荷,(チ)並列,(ル)連系,(ヲ)単独,(ワ)自立,(ヨ)集中,になると思います。
ワンポイント解説「2.分散型電源の系統連系設備に係る用語の定義」の通り,太陽光発電システムが系統から解列された状態で運転することを自立運転といいます。



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