【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
次の文章は,赤外加熱に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
赤外加熱は,塗装や印刷の乾燥のほか,食品,電子部品,半導体などの製造工程においても用いられている。赤外加熱に用いられる赤外放射源は,電熱線によって加熱されたセラミックスや,通電によって高温になったフィラメントなどである。放射源であるこれらの物質表面の単位面積から放射される分光放射パワー(波長成分ごとの放射パワー)は,\( \ \fbox { (1) } \ \)とプランクの放射則とで決まる。
\( \ \fbox { (1) } \ \)が波長及び温度に関係なく一定とすれば,物質表面から放射される全放射パワーは\( \ \fbox { (2) } \ \)で表した表面温度の\( \ \fbox { (3) } \ \)に比例する。また,放射パワーがピークとなる波長は\( \ \fbox { (2) } \ \)で表した表面温度に\( \ \fbox { (4) } \ \)。
一方,被加熱物の表面に照射された赤外放射の一部は表面で反射されるが,残りは被加熱物内部に浸透し,浸透する過程で被加熱物に吸収され,被加熱物自体が発熱して加熱される。被加熱物の吸収係数が大きいほど赤外放射は被加熱物の\( \ \fbox { (5) } \ \)で吸収される。
〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 表層 &(ロ)& 2 \ 乗 &(ハ)& 中間層 \\[ 5pt ]
&(ニ)& 3 \ 乗 &(ホ)& 無関係である &(ヘ)& 比例する \\[ 5pt ]
&(ト)& 深層 &(チ)& 分光放射率 &(リ)& 摂氏温度 \\[ 5pt ]
&(ヌ)& 反比例する &(ル)& 絶対温度 &(ヲ)& 分光反射率 \\[ 5pt ]
&(ワ)& 分光透過率 &(カ)& 4 \ 乗 &(ヨ)& 華氏温度
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
ここ十年程度の過去問では出題はされていない問題です。ステファン・ボルツマンの法則により全エネルギーが絶対温度の\( \ 4 \ \)乗に比例するというのは知っておきたい内容です。
1.ステファン・ボルツマンの法則
絶対温度\( \ T \ \)の物体から放射される全エネルギー流量\( \ E \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
E&=&\sigma T^{4} [\mathrm{W/m^{2}}] \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と求められます。ただし,\( \ \sigma \ \)はステファン・ボルツマン定数で\( \ 5.67\times 10^{-8} \ [\mathrm {W/m^{2}/K^{4}}] \ \)です。
2.プランクの法則
下図の通り物体表面から放射される放射パワーがピークとなる波長は温度に反比例するという法則です。
出典:natural science ホームページ
https://www.natural-science.or.jp/article/20111230191657.php
【解答】
(1)解答:チ
題意より,解答候補は(チ)分光放射率,(ヲ)分光反射率,(ワ)分光透過率,になりますが,解答に合うのは(チ)分光放射率のみです。分光放射率は波長ごとの放射エネルギーの比率です。
(2)解答:ル
題意より,解答候補は(リ)摂氏温度,(ル)絶対温度,(ヨ)華氏温度,ですが,熱放射で扱う温度は絶対温度です。
(3)解答:カ
題意より,解答候補は(ロ)\( \ 2 \ \)乗,(ニ)\( \ 3 \ \)乗,(カ)\( \ 4 \ \)乗,となりますが,ワンポイント解説「1.ステファン・ボルツマンの法則」の通り,絶対温度の4乗に比例します。
(4)解答:ヌ
題意より,解答候補は(ホ)無関係である,(ヘ)比例する,(ヌ)反比例する,となりますが,ワンポイント解説「2.プランクの法則」の通り,波長は表面温度に反比例します。
(5)解答:イ
題意より,解答候補は(イ)表層,(ハ)中間層,(ト)深層,となりますが,吸収係数が大きいほど表層での吸収が大きくなります。