《機械》〈照明〉[H30:問6]光束法による照明器具代数及び平均照度に関する計算・空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,光束法による照明器具代数及び平均照度の計算に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

間口\( \ X=7.0 \ \mathrm {m} \ \),奥行\( \ Y=14.0 \ \mathrm {m} \ \),天井高さ\( \ H=2.7 \ \mathrm {m} \ \),室各面の反射率が天井\( \ 70 \ % \ \),壁\( \ 50 \ % \ \),床空間\( \ 30 \ % \ \)の室がある。その床上\( \ h=0.85 \ \mathrm {m} \ \)全体を作業面とし,定格光束\( \ \mathit {\Phi} =3000 \ \mathrm {lm} \ \)のランプが\( \ 2 \ \)本入った照明器具を天井面に埋め込んで,作業面を平均照度\( \ E =500 \ \mathrm {lx} \ \)で照明したい。以下の説明に沿って,必要な照明器具台数を求め,新設時(初期)の平均照度を求める。

光束法の照明計算は,照度の定義が「単位面積当たりに入射する光束」であることに基づいている。ここでは,面に入射する光束を求める方法として,照明器具ごとにあらかじめ作成されている照明率表(表参照)を用いる。この照明率\( \ U \ \)は,照明器具が天井空間に均等配置された条件下において,室各面の相互反射後,最終的に作業面に到達する光束の\( \ \fbox {  (1)  } \ \)に対する比である。表の照明率は,作業面と照明器具との間の室部分の形状を数値化した室指数\( \ K_{\mathrm {r}} \ \)と呼ばれる値と室各面の反射率に対して与えられる。室指数は①式で求まる。
\[
\begin{eqnarray}
K_{\mathrm {r}}&=&\fbox {  (2)  } ・・・・・・・・・・・・ ① \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] ①式から\( \ K_{\mathrm {r}} \ \)を算出し,表から照明率を求めると\( \ U=0.59 \ \)となる。

一方,ここで得ようとする平均照度\( \ E =500 \ \mathrm {lx} \ \)(JISの推奨照度)は,一定期間使用した後において維持しなければならない値である。このため,維持しなければならない平均照度の新設時(初期)の平均照度に対する比として\( \ \fbox {  (3)  } \ \)を見込む。ここではこの値を\( \ 0.75 \ \)とする。

以上から,平均照度\( \ 500 \ \mathrm {lx} \ \)得るために必要な台数は\( \ \fbox {  (4)  } \ \)台となる。

いま,実際の施工を考慮して,照明器具台数\( \ N \ \)を\( \ 4 \ \)行\( \ 6 \ \)列配置の\( \ 24 \ \)台とすると,この場合の照明器具新設時(初期)の平均照度は,約\( \ \fbox {  (5)  } \ \mathrm {lx} \ \)になる。

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 光束維持率     &(ロ)& \frac {X\cdot Y}{\left( H-h\right) \left(X+Y\right) }     &(ハ)& 照明器具光束の総和 \\[ 5pt ] &(ニ)& 19     &(ホ)& ランプ定格光束の総和     &(ヘ)& 680 \\[ 5pt ] &(ト)& 760     &(チ)& 23     &(リ)& ランプ定格光束 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 21     &(ル)& \frac {\left( H-h\right) \left(X+Y\right) }{\sqrt {H\cdot X\cdot Y}}      &(ヲ)& \frac {X\cdot Y}{H\cdot \left(X+Y\right) } \\[ 5pt ] &(ワ)& 870     &(カ)& 保守率     &(ヨ)& 減光補償率 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

光束法による照度計算は一種ではあまり出題されていませんが,三種でよく出題された範囲であると思います。一種の問題なので少しだけ捻りはありますが,それほど難しい公式ではないため,復習の意味でも公式を理解し解けるようにしましょう。

1.光束法による平均照度\( \ E \ \)の計算
本問と同様に間口\( \ X \ \mathrm {[m]} \ \),奥行\( \ Y \ \mathrm {[m]} \ \),天井高さ\( \ H \ \mathrm {[m]} \ \)の室を考えます。
光源1個あたりの光束を\( \ \mathit {\Phi} \ \mathrm {[lm]} \ \),光源の個数をを\( \ N \ \mathrm {[個]} \ \)とすると,空間内の全光束\( \ F \ \mathrm {[lm]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
F&=&\mathit {\Phi}N \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,保守率を\( \ M \ \),照明率を\( \ U \ \)とすると,作業面の面積は\( \ XY \ \mathrm {[m^{2}]} \ \)なので,平均照度\( \ E \ \mathrm {[lx]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
E&=&\frac {FUM}{XY} \\[ 5pt ] &=&\frac {\mathit {\Phi} NUM}{XY} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められます。

【解答】

(1)解答:ホ
題意より,解答候補は(ハ)照明器具光束の総和,(ホ)ランプ定格光束の総和,(リ)ランプ定格光束,となると思います。照明率は作業面への入射光束の光源から放射する光束の総和に対する比になるので,ランプ定格光束の総和が最も正しいです。

(2)解答:ロ
題意より,解答候補は(ロ)\( \ \displaystyle \frac {X\cdot Y}{\left( H-h\right) \left(X+Y\right) } \ \),(ル)\( \ \displaystyle \frac {\left( H-h\right) \left(X+Y\right) }{\sqrt {H\cdot X\cdot Y}} \ \),(ヲ)\( \ \displaystyle \frac {X\cdot Y}{H\cdot \left(X+Y\right) } \ \),となると思います。室指数は\( \ \displaystyle \frac {X\cdot Y}{\left( H-h\right) \left(X+Y\right) } \ \)で与えられますが,数式を知らない場合でも,各値を代入すれば,最も適当な数式を導き出すことができます。

【具体的な導出方法】
表より,室各面の反射率が天井\( \ 70 \ % \ \),壁\( \ 50 \ % \ \),床空間\( \ 30 \ % \ \)で照明率\( \ U =0.59 \ \)となるのは\( \ K_{\mathrm {r}}=2.5 \ \)の時なので,各値を代入して\( \ K_{\mathrm {r}}=2.5 \ \)となる数式を選択します。

(ロ)の場合
\[
\begin{eqnarray}
K_{\mathrm {r}}&=&\frac {X\cdot Y}{\left( H-h\right) \left(X+Y\right) } \\[ 5pt ] &=&\frac {7\times 14}{\left( 2.7-0.85\right) \left( 7+14\right) } \\[ 5pt ] &≒&2.52 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] この場合,\( \ K_{\mathrm {r}}=2.5 \ \)を適用できます。

(ル)の場合
\[
\begin{eqnarray}
K_{\mathrm {r}}&=& \frac {\left( H-h\right) \left(X+Y\right) }{\sqrt {H\cdot X\cdot Y}} \\[ 5pt ] &=&\frac {\left( 2.7-0.85\right) \left(7+14\right) }{\sqrt {2.7\times 7\times 14}} \\[ 5pt ] &≒&2.39 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] この場合,\( \ K_{\mathrm {r}}=2.5 \ \)を適用すると照度が足りなくなってしまう可能性があるので,安全を見て\( \ K_{\mathrm {r}}=2.0 \ \)を適用します。

(ヲ)の場合
\[
\begin{eqnarray}
K_{\mathrm {r}}&=& \frac {X\cdot Y}{H\cdot \left(X+Y\right) } \\[ 5pt ] &=&\frac {7\times 14}{2.7\times \left(7+14\right) } \\[ 5pt ] &≒&1.73 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] この場合,明らかに\( \ K_{\mathrm {r}}=2.5 \ \)は不適です。

(3)解答:カ
題意より,解答候補は(イ)光束維持率,(カ)保守率,(ヨ)減光補償率,となると思います。照明の維持しなければならない照度の初期照度に対する比を保守率と言います。

(4)解答:ニ
ワンポイント解説「1.光束法による平均照度\( \ E \ \)の計算」の数式に各値を代入すると,
\[
\begin{eqnarray}
E&=&\frac {\mathit {\Phi}NUM}{XY} \\[ 5pt ] 500&<&\frac {3000\times 2 \times N\times 0.59\times 0.75}{7\times 14} \\[ 5pt ] N&>&\frac {500\times 7\times 14}{3000\times 2 \times 0.59\times 0.75} \\[ 5pt ] N&>&18.5 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,照明の数は\( \ 19 \ \)台が適当となります。

(5)解答:ワ
照明器具新設時の保守率\( \ M \ \)は\( \ 1 \ \)と考えれば良いので,平均照度\( \ E \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
E&=&\frac {\mathit {\Phi}NUM}{XY} \\[ 5pt ] &=&\frac {3000\times 2\times 24\times 0.59\times 1}{7\times 14} \\[ 5pt ] &≒&867 → 870 \ \mathrm {[lx]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められます。



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