【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
ある交流入力電力を別の交流電力(交流電圧,周波数)に直接変換する方式として,マトリックスコンバータがある。これについて,次の問に答えよ。
(1) 双方向に流れるバルブデバイスユニット(モジュール)を構成したとき,コンバータ部の\( \ 1 \ \)アーム分のバルブデバイスユニット(モジュール)の接続図を単一機能バルブデバイスを用いて示せ。
(2) 図に示す主回路接続図のうち,三相電源を入力とし,誘導電動機へ三相を出力するマトリックスコンバータ部の接続図(図の一点鎖線内)を示せ。ただし,方向バルブデバイスユニット(モジュール)の表示は,スイッチ記号(下図)にて表示すること。
(3) 双方向バルブデバイスユニット(モジュール)を使用したマトリックスコンバータと,\( \ \mathrm {PWM} \ \)(パルス幅変調)を用いた順変換回路と逆変換回路を有する電動機駆動用インバータ回路とを比較した場合のマトリックスコンバータの特徴を三つ挙げよ。
【ワンポイント解説】
マトリックスコンバータに関する問題です。
知っていれば確実に得点できるチャンス問題となりますが,電験ではあまり扱わないコンバータなので知らない受験生の方が多かったと思います。
1.マトリックスコンバータ
マトリックスコンバータは周波数の異なる交流の電力変換を行うことができる装置です。
図1のように\( \ 9 \ \)つの双方向スイッチ機能を持つバルブデバイスユニットを用いて,直流を介することなく直接異なる周波数に変換することが可能な装置で,図2のようにマトリックス形に書き換えることができるため,マトリックスコンバータと呼ばれています。三相入力の各相でスイッチングを行うため出力電流の高調波が少なく,直流平滑回路が不要で小形化ができ長寿命となる反面,スイッチングを高速制御しなければならないという特徴があります。
双方向スイッチには\( \ \mathrm {IGBT} \ \)のような自己消弧形素子とダイオードを組み合わせた図3に示すようなスイッチが用いられます。

【解答】
(1)コンバータ部の\( \ 1 \ \)アーム分のバルブデバイスユニット(モジュール)の接続図
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.マトリックスコンバータ」の通りです。
(試験センター解答例)
等,双方向スイッチ機能を有する回路
(2)三相電源を入力とし,誘導電動機へ三相を出力するマトリックスコンバータ部の接続図
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.マトリックスコンバータ」の通りです。
(試験センター解答例)
下図の一点鎖線内の図が描いてあればよい。
(3)マトリックスコンバータの特徴を三つ
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.マトリックスコンバータ」の通りです。
・図4のように順変換回路と逆変換回路を有するコンバータをサイクロコンバータといいます。

(試験センター解答例)
下記の項目のうち,いずれか3項目を解答すればよい。
・スイッチング素子には,自己消弧形の逆阻止特性(複数の素子を用いて同等の機能を発揮してもよい。)を有するものが必要である。また,双方向スイッチを構成する必要がある。
・直流平滑コンデンサや直流平滑リアクトルが不要である。
・直流平滑回路がないので小形化しやすい。
・主回路に直流平滑回路がないので高速制御が必要である。