《法規》〈電気施設管理〉[R06:問7]太陽電池発電設備の点検をする際の留意事項に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,自家用電気工作物の太陽電池発電設備の点検をする際の留意事項に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

a)太陽電池セルには,日射量が多い時間帯でなくても定格に近い\( \ \fbox {  (1)  } \ \)が発生しているため,絶縁抵抗測定等に際しては,作業の安全性に十分注意を払い,適切な保護具を着用し,安全手順に従うことが不可欠である。

b)電流が流れた状態で\( \ \fbox {  (2)  } \ \)を開放するとアーク放電を起こす可能性がある。いったん生じた直流のアーク放電は消弧するのが難しいので,まず\( \ \fbox {  (3)  } \ \)の停止操作などにより,太陽電池発電システムを遮断する必要がある。

c)\( \ \fbox {  (4)  } \ \)が故障を起こしていると,太陽電池モジュールの一部がゴミや汚れ,影等で発電できなくなった場合などに,発電効率が低下するだけでなく,太陽電池モジュール内のその部分のセルが負荷となり,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)し,焼損に至る可能性がある。近年では,太陽電池モジュールの火災リスクの増大などを回避するため,竣工検査及び定期点検において,全ての\( \ \fbox {  (4)  } \ \)がその機能を保持していることを確認することが望ましいとされている。なお,雷の影響を受けた可能性がある場合には,定期点検を待たずに機能確認を実施した方がよいとされる。

〔問7の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& パワーコンディショナ        &(ロ)& 過電流遮断器 \\[ 5pt ] &(ハ)& 集電器     &(ニ)& 電力 \\[ 5pt ] &(ホ)& 負荷遮断器     &(ヘ)& 電圧 \\[ 5pt ] &(ト)& 接続箱     &(チ)& 発電停止 \\[ 5pt ] &(リ)& 断路器     &(ヌ)& 直流地絡検出装置 \\[ 5pt ] &(ル)& バイパス回路     &(ヲ)& 過熱 \\[ 5pt ] &(ワ)& 残留電荷     &(カ)& 対地電位が上昇 \\[ 5pt ] &(ヨ)& 温度 && \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

太陽光発電システムの保守及び点検に関する問題です。
太陽光発電システムは他の発電設備に比べると圧倒的にメンテナンスは楽ですが,近年経年劣化した発電設備で火災等の事故が発生しています。
近年の動向を踏まえた問題ですが,太陽光発電のメンテナンスを実務で扱っていない受験生にとっては少し厳しい問題であったかもしれません。例えわからない問題でも文脈から選択肢を絞って消去法で正答を見つけるようにして下さい。

1.太陽光発電システムで行う絶縁抵抗測定と注意事項
太陽光発電システムは長期間にわたり稼働することから,経年劣化や腐食,小動物の噛みつき等により,絶縁不良が発生する可能性があり,定期的な絶縁抵抗測定等の点検・検査を行う必要があります。

絶縁抵抗測定実施時は断路器を開放すると,アーク放電を発生してしまう可能性があるため,まずはパワーコンディショナの停止操作等により,太陽光発電システムを遮断します。しかしながら,発電を遮断するスイッチは設けられていないので,日射を受けている限り発電を継続してしまうため,注意が必要です。このように,太陽電池セル内ではシステム停止中も電圧が確立されてしまう可能性があるため,絶縁抵抗測定を行う際には作業エリアを指定しアクセスを制限する,試験実施者以外の誰も金属表面に触れないようにする,パネル部分を遮光する,適切な防護服や保護具を装着する,等の対策を行う必要があります。

夜間に実施すればこのような問題は発生しませんが,夜間に実施する場合には視界不良による転倒リスクや作業性の悪さ等の欠点があります。

2.太陽光発電システムのバイパスダイオードの不具合
バイパスダイオードは図1に示すように,太陽電池の一部が不具合の発生や影等により発電しなくなり,バイパスする必要が生じた場合にバイパスする回路です。
しかしながら,バイパスダイオードは回路素子であるため,オープン故障やショート故障が発生する可能性があります。
常時開放状態になっている場合,バイパスできないため太陽電池セル内を電流が流れ,太陽電池セルの一部が過熱,焼損する可能性があります。一方,常時短絡状態になっている場合,太陽電池からの閉回路が形成され,発電ロスが発生し,大きな電流が流れることで発熱する可能性があります。

【解答】

(1)解答:ヘ
題意より解答候補は,(ニ)電力,(ヘ)電圧,(ワ)残留電荷,(ヨ)温度,になると思います。
太陽電池セルには,日射を受けていると電圧が発生してしまう特性があるので,作業の際には注意する必要があります。

(2)解答:リ
題意より解答候補は,(ロ)過電流遮断器,(ハ)集電器,(ホ)負荷遮断器,(リ)断路器,等になると思います。
ワンポイント解説「1.太陽光発電システムで行う絶縁抵抗測定と注意事項」の通り,太陽光発電システムに設備があり,電流が流れた状態で開放するとアークが発生する可能性があるのは断路器となります。

(3)解答:イ
題意より解答候補は,(イ)パワーコンディショナ,(ハ)集電器,(ト)接続箱,等になると思います。
ワンポイント解説「1.太陽光発電システムで行う絶縁抵抗測定と注意事項」の通り,アーク発生を防止するための操作としてはパワーコンディショナの停止操作が有効です。

(4)解答:ル
題意より解答候補は,(イ)パワーコンディショナ,(ト)接続箱,(ヌ)直流地絡検出装置,(ル)バイパス回路,等になると思います。
ワンポイント解説「2.太陽光発電システムのバイパスダイオードの不具合」の通り,太陽電池モジュールの一部がゴミや汚れ,影等で発電できなくなった場合などに,発電効率が低下したり,焼損する等の問題が発生するのはバイパス回路の故障となります。

(5)解答:ヲ
題意より解答候補は,(チ)発電停止,(ヲ)過熱,(カ)対地電位が上昇,になると思います。
ワンポイント解説「2.太陽光発電システムのバイパスダイオードの不具合」の通り,バイパス回路に常時開放の不具合があった場合,太陽電池モジュール内のその部分のセルが負荷となり,過熱するおそれがあります。



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