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【問題】
【難易度】★★★★☆(やや難しい)
次の文章は,コンバインドサイクル発電の熱サイクルに関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる詩句又は式を解答群の中から選び,その記号をマークシートに記入しなさい。
コンバインドサイクル発電は,ガスタービン発電の基本熱サイクルである\( \ \fbox { (1) } \ \)と汽力発電の基本熱サイクルである\( \ \fbox { (2) } \ \)を組み合わせることにより,プラント熱効率を飛躍的に高めた発電方式である。
図は,排熱回収方式コンバインドサイクル発電の理想熱サイクル線図である。この熱サイクル線図で,ガスタービンの燃焼器に相当する軌跡は\( \ \fbox { (3) } \ \)で,蒸気タービンの復水器に相当する軌跡は\( \ \fbox { (4) } \ \)である。
ガスタービン発電部分の熱効率を\( \ \eta _{G} \ \),汽力発電部分の熱効率を\( \ \eta _{S} \ \)とすると,コンバインドサイクル発電の熱効率は,\( \ \fbox { (5) } \ \)で表すことができる。

〔問1の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 7 \ から \ 8 &(ロ)& 6 \ から \ 7 &(ハ)& 2 \ から \ 3 \\[ 5pt ]
&(ニ)& ブレイトンサイクル &(ホ)& \eta _{G}+\left( 1-\eta _{G}\right) \cdot \eta _{S} &(ヘ)& 1 \ から \ 2 \\[ 5pt ]
&(ト)& 4 \ から \ 1 &(チ)& オットーサイクル &(リ)& 3 \ から \ 4 \\[ 5pt ]
&(ヌ)& カルノーサイクル &(ル)& 8 \ から \ 5 &(ヲ)& \eta _{G} \cdot \eta _{S} \\[ 5pt ]
&(ワ)& ランキンサイクル &(カ)& 5 \ から \ 6 &(ヨ)& \eta _{S}+\left( 1-\eta _{S}\right) \cdot \eta _{G} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
コンバインドサイクル発電の熱サイクルに関する問題です。
しっかりと中身を理解している方は高得点できますが,曖昧であるとかなり厳しい問題であると言えます。
まずはそれぞれの発電のフロー図を理解し,サイクルと照らし合わせると丸暗記に頼らず解けるようになるかと思います。
1.汽力発電所の基本サイクル
図1に汽力発電所の基本サイクルであるランキンサイクルのフロー,図2及び図3にランキンサイクルの\( \ P-V \ \)線図及び\( \ T-s \ \)線図を示します。
図1に示すように低温・低圧の給水(図の\( \ \mathrm {A} \ \))は給水ポンプで昇圧され,低温・高圧の水(図の\( \ \mathrm {B} \ \))となり,ボイラに供給されます。
ボイラでは燃料の燃焼により加熱され高温・高圧の蒸気(図の\( \ \mathrm {C} \ \))となり,タービンへ送られます。
タービンでは,蒸気の持つ運動エネルギーと圧力エネルギーによりタービンを回転させ圧力と温度を失い(図の\( \ \mathrm {D} \ \)),復水器により蒸気から水へ凝縮され,再び給水として給水ポンプへ送られます。
その圧力と体積の関係を示したのが図2の\( \ P-V \ \)線図,温度とエントロピーの関係を示したのが図3の\( \ T-s \ \)線図となります。
\( \ \mathrm {A}→\mathrm {B} \ \)が,給水ポンプによる断熱圧縮の過程であり,体積は大きく変化しませんが圧力が上昇します。また,圧力上昇に伴い温度も上昇します。
\( \ \mathrm {B}→\mathrm {C} \ \)が,ボイラによる等圧受熱の過程であり,水が液体から気体に変わることにより体積が膨張します。受熱により水(及び蒸気)の温度が上昇します。
\( \ \mathrm {C}→\mathrm {D} \ \)が,タービンによる断熱膨張の過程であり,蒸気の持つエネルギーをタービンを回転させるエネルギーにします。圧力と温度が低下し,体積は上昇します。
\( \ \mathrm {D}→\mathrm {A} \ \)が,復水器による等圧放熱の過程であり,蒸気を水に戻します。気体から液体になる凝縮の過程で体積が小さくなります。
2.ガスタービン発電の基本サイクル
図4にガスタービン発電の基本サイクルであるブレイトンサイクルのフロー,図5及び図6にブレイトンサイクルの\( \ P-V \ \)線図及び\( \ T-s \ \)線図を示します。
ガスタービン発電は空気圧縮機,燃焼器,ガスタービンで構成され,図4に示すように空気(図の\( \ \mathrm {A} \ \))は空気圧縮機で昇圧され,燃焼器に供給されます。(図の\( \ \mathrm {B} \ \))
燃焼器では\( \ \mathrm {LNG} \ \)等の燃料の燃焼により昇温され,ガスタービンへ送られます。(図の\( \ \mathrm {C} \ \))
ガスタービンでは,圧縮空気の持つエネルギーによりガスタービンで仕事をし,大気へ放出されます。(図の\( \ \mathrm {D} \ \))
その圧力と体積の関係を示したのが図5の\( \ P-V \ \)線図,温度とエントロピーの関係を示したのが図6の\( \ T-s \ \)線図となります。
\( \ \mathrm {A}→\mathrm {B} \ \)が,空気圧縮機による断熱圧縮の過程であり,圧力が上昇することで空気の密度が上がり体積は減少します。また,圧力上昇に伴い温度も上昇します。
\( \ \mathrm {B}→\mathrm {C} \ \)が,燃焼器による等圧受熱の過程であり,温度が上昇し,体積が膨張します。
\( \ \mathrm {C}→\mathrm {D} \ \)が,ガスタービンによる断熱膨張の過程であり,圧縮空気の持つエネルギーをタービンを回転させるエネルギーにします。圧力と温度が低下し,体積は上昇します。
\( \ \mathrm {D}→\mathrm {A} \ \)が,大気放出から吸気の過程であり,排気と吸気により新しい空気に入れ替えられます。
3.コンバインドサイクル発電
コンバインドサイクル発電は,図7に示すようにガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた方式の発電であり,ガスタービンの高温排熱を排熱回収ボイラで回収し蒸気を発生させ,蒸気タービンで発電します。
図7において,ガスタービンと蒸気タービンに直結された発電機が出力となり,排熱回収ボイラからの排ガスと復水器での熱交換が熱損失となります。
ガスタービンの効率を\( \ \eta _{\mathrm {g}} \ \),排熱回収ボイラ+蒸気タービンの効率を\( \ \eta _{\mathrm {t}} \ \)とすれば,総合効率\( \ \eta \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\eta &=& \eta _{\mathrm {g}}+\left( 1- \eta _{\mathrm {g}}\right) \eta _{\mathrm {t}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となります。一般にコンバインドサイクル発電の発電端熱効率は従来の汽力発電(約\( \ 40 \ \mathrm {%} \ \))に比べ格段に高く,近年は耐熱材料の採用によるガスタービンの高温化により,約\( \ 60 \ \mathrm {%} \ \)程度まで上昇しています。

【解答】
(1)解答:ニ
題意より,解答候補は(ニ)ブレイトンサイクル,(チ)オットーサイクル,(ヌ)力ルノーサイクル,(ワ)ランキンサイクル,になると思います。
ワンポイント解説「2.ガスタービン発電の基本サイクル」の通り,ガスタービン発電の基本熱サイクルはブレイトンサイクルとなります。
(2)解答:ワ
題意より,解答候補は(ニ)ブレイトンサイクル,(チ)オットーサイクル,(ヌ)力ルノーサイクル,(ワ)ランキンサイクル,になると思います。
ワンポイント解説「1.汽力発電所の基本サイクル」の通り,汽力発電の基本熱サイクルはランキンサイクルとなります。
(3)解答:ハ
題意より,解答候補は(イ)\( \ 7 \ \)から\( \ 8 \ \),(ロ)\( \ 6 \ \)から\( \ 7 \ \),(ハ)\( \ 2 \ \)から\( \ 3 \ \),(ヘ)\( \ 1 \ \)から\( \ 2 \ \),(リ)\( \ 3 \ \)から\( \ 4 \ \),(ル)\( \ 8 \ \)から\( \ 5 \ \),(カ)\( \ 5 \ \)から\( \ 6 \ \),になると思います。
ワンポイント解説「2.ガスタービン発電の基本サイクル」の通り,ガスタービンの燃焼器に相当する軌跡は\( \ 2 \ \)から\( \ 3 \ \)となります。
(4)解答:ル
題意より,解答候補は(イ)\( \ 7 \ \)から\( \ 8 \ \),(ロ)\( \ 6 \ \)から\( \ 7 \ \),(ハ)\( \ 2 \ \)から\( \ 3 \ \),(ヘ)\( \ 1 \ \)から\( \ 2 \ \),(リ)\( \ 3 \ \)から\( \ 4 \ \),(ル)\( \ 8 \ \)から\( \ 5 \ \),(カ)\( \ 5 \ \)から\( \ 6 \ \),になると思います。
ワンポイント解説「1.汽力発電所の基本サイクル」の通り,蒸気タービンの復水器に相当する軌跡は\( \ 8 \ \)から\( \ 5 \ \)となります。
(5)解答:ホ
題意より,解答候補は(ホ)\( \ \eta _{G}+\left( 1-\eta _{G}\right) \cdot \eta _{S} \ \),(ヲ)\( \ \eta _{G} \cdot \eta _{S} \ \),(ヨ)\( \ \eta _{S}+\left( 1-\eta _{S}\right) \cdot \eta _{G} \ \),になると思います。
ワンポイント解説「3.コンバインドサイクル発電」の通り,コンバインドサイクル発電の熱効率は\( \ \eta _{G}+\left( 1-\eta _{G}\right) \cdot \eta _{S} \ \)となります。