《電力》〈水力〉[R03:問1]フランシス水車を用いた水力発電所の機器構成に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,フランシス水車を用いる場合の水力発電所内の機器構成に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

水圧管路を経た水は入口弁を通って水車へと送られる。入口弁は水車に通水又は遮水する目的で設置され,その水力発電所の地点特性(設計諸元)に合わせて,適切なタイプの入口弁が選定される。高落差大容量の発電所には,損失落差がほとんどなく,漏水が少ない\( \ \fbox {  (1)  } \ \)が用いられる場合が多い。

入口弁を経た水は,ケーシングへ送られる。ケーシングは渦巻き状であり,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)に溶接固定される。ケーシングを経た水は,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)に設置された固定羽根を通り\( \ \fbox {  (3)  } \ \)により流量調整される。

反動水車であるフランシス水車は\( \ \fbox {  (4)  } \ \)を持つ流水をランナに作用させる水車である。ランナは鋳鋼製が多く,ランナと上カバー又は下カバーの間には,一般的に内外周\( \ 2 \ \)段にシールが設けられ,この部分の水圧を減ずるとともに,ランナ上面と下面を結ぶバランスパイプやバランスホールで圧力を均衡させて\( \ \fbox {  (5)  } \ \)を減少させている。

〔問1の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& ランナベーン     &(ロ)& ガイドリング     &(ハ)& ロータリ弁 \\[ 5pt ] &(ニ)& 複葉弁(バイプレーン弁)        &(ホ)& ニードル弁     &(ヘ)& 速度水頭 \\[ 5pt ] &(ト)& 回復水頭       &(チ)& ガイドベーン       &(リ)& 水スラスト \\[ 5pt ] &(ヌ)& ディスチャージリング     &(ル)& スピードリング     &(ヲ)& 圧力水頭 \\[ 5pt ] &(ワ)& サージング     &(カ)& 水撃圧     &(ヨ)& バタフライ弁 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

フランシス水車の構造に関する問題です。
(2)や(5)のように少し重箱の隅をつつくような空欄もありますが,ほとんどの受験生がわからないと考え,それ以外の選択肢を確実に得点することが重要となります。
本問のように少し難易度が高い問題は\( \ 3 \ \)個正答できれば十分,\( \ 2 \ \)個でも仕方ないと割り切ることも重要かと思います。

1.主な弁の種類と特徴
①仕切弁(ゲート弁)
板状の弁体で流路の開閉をする弁です。
開の状態での圧力損失がほとんどなく,閉の状態での仕切性能が高いという特徴がありますが,中間開度での使用には適していません。


出典:株式会社アピステ HP

②玉形弁(グローブ弁)
仕切弁同様弁体で開閉しますが,弁全体が球体なので玉形弁またはグローブ弁と呼ばれます。
閉の状態での遮断性能が高く,中間開度での使用も可能であるため,衝動水車のニードル弁にはこのタイプの弁が使用されています。
配管で用いる場合,\( \ \mathrm {S} \ \)字の流路を辿るため,圧力損失が大きくなるというデメリットもあります。


出典:株式会社アピステ HP

③ボール弁(ロータリ弁)
穴の開いた球形の弁体を回転させることで開閉する弁です。
穴が配管の大きさと等しいため,開状態での圧力損失が小さく,仕切弁と異なり\( \ 90 \ \)度回転させるだけで開閉することが可能です。
中間開度での使用には適していません。

出典:株式会社アピステ HP

④バタフライ弁(蝶形弁)
円板状の弁体が弁棒を軸にして回転することで開閉する弁です。
中間開度での使用も可能で省スペースで設置可能ですが,円板状の弁体が開時に流路中心にあるので,圧力損失がやや大きく,ウォーターハンマー等も発生しやすいという点もあります。

2.衝動水車
水のもつ位置エネルギーを運動エネルギーに変え,流水をランナに作用させる水車を衝動水車と言います。
代表的なものにペルトン水車があり,下図に示すように主にノズル,ニードル,ランナ等から構成され,ノズルから水を噴射し,ランナを回転させます。水量は主にニードルで調整します。


出典:長野県HP

3.反動水車
水のもつ位置エネルギーを圧力エネルギーに変換し,ランナに作用させる水車を反動水車と言います。
代表的なものにフランシス水車があり,下図のようにガイドベーンとランナの羽根の開度で出力を調整します。他にもランナを通過する流水の方向が斜めのものを斜流水車,流水がランナの軸方向に通過するものをプロペラ水車と言います。高落差のものからフランシス水車→斜流水車→プロペラ水車となります。


出典:長野県HP

【解答】

(1)解答:ハ
題意より解答候補は,(ハ)ロータリ弁,(ニ)複葉弁(バイプレーン弁),(ホ)ニードル弁,(ヨ)バタフライ弁,になると思います。
水力発電所の入口弁には,ロータリ弁,複葉弁(バイプレーン弁),バタフライ弁,がそれぞれ使用されることがありますが,大容量の発電所では,損失がほとんどなく漏水も少ないロータリ弁が使用されます。
複葉弁(バイプレーン弁)はバタフライ弁の円板が二つに分かれたような構造で,中心部の圧力損失を改善したものですが,圧力損失は発生します。ニードル弁は衝動水車の流量調整弁のことなので用途が異なります。

(2)解答:ル
題意より解答候補は,(ロ)ガイドリング,(ヌ)ディスチャージリング,(ル)スピードリング,等になると思います。
ケーシングが固定されているのはスピードリングで,ステーベーンと呼ばれる案内羽根があり,ケーシングからの流れをスムースにガイドベーンへ導く役割があります。ガイドリングはガイドベーンの角度を変える役割があります。

(3)解答:チ
題意より解答候補は,(イ)ランナベーン,(ホ)ニードル弁,(チ)ガイドベーン,等になると思います。
ワンポイント解説「3.反動水車」の通り,フランシス水車で主に流量調整に使用されるのはガイドベーンです。衝動水車はニードル弁で流量調整されます。

(4)解答:ヲ
題意より解答候補は,(ヘ)速度水頭,(ト)回復水頭,(ヲ)圧力水頭,になると思います。
ワンポイント解説「3.反動水車」の通り,フランシス水車は圧力水頭を持つ流水をランナに作用させる水車です。速度水頭を用いるのはペルトン水車をはじめとする衝動水車です。回復水頭という用語は私は聞いたことがありません。

(5)解答:リ
題意より解答候補は,(リ)水スラスト,(ワ)サージング,(カ)水撃圧,等になると思います。
ランナ上面と下面を結ぶバランスパイプやバランスホールで圧力を均衡させることで減少させることができるのは水スラストとなります。水スラストとは,水圧の不均一により軸方向にかかる力のことで,水の重量にして\( \ 1 \ 000 \ \mathrm {t} \ \)以上の非常に大きな力がかかる可能性があります。
水撃圧は負荷の急変により入口弁を急速に閉鎖したとき等に流量変化時に発生する圧力で,サージタンク等の別の対策が必要となります。



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