《法規》〈電気施設管理〉[R08:問7]電力系統における電圧・無効電力調整に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,電力系統における電圧・無効電力調整に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

電力系統においては,負荷の変化あるいは系統の運用状況によって,系統内の電流が変化するとともに各所の電圧が変動する。需要家地点における電圧の大幅な変動は,需要家の電気機器の正常な使用や寿命などに影響を与える。また,電圧が低下すると同じ電力を送電するために送電線の電流が増加し,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)が増加する。さらに,電力需要の急増等により受電端電圧が異常に低下し電圧維持が困難になる\( \ \fbox {  (2)  } \ \)を避けるために,重負荷状態においては電圧を高めに運用する必要もある。

このため,電力供給側においては,需要家に対する供給点及び電力系統内の各所の電圧が適正な値となるよう,変圧器の負荷時タップ切替装置による\( \ \fbox {  (3)  } \ \)制御を行うとともに,調相設備の投入・開放や発電機の\( \ \fbox {  (4)  } \ \)等による無効電力制御を行っている。

また,需要家の電気設備の負荷が誘導電動機等の影響で遅れ力率の場合に,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)を設置して力率を\( \ 100 \ % \ \)に近づけることで,受電変圧器等の設備容量を削減できるだけでなく,電力系統における電圧降下及び\( \ \fbox {  (1)  } \ \)の低減の効果も得られる。一方,軽負荷期には,電圧上昇が問題になっており,一般送配電事業者は,電圧調整のために必要があるときは,需要家の\( \ \fbox {  (5)  } \ \)を開放するよう依頼している。

〔問7の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& フリッカ     &(ロ)& 変圧比 \\[ 5pt ] &(ハ)& フェランチ効果         &(ニ)& 速度調整 \\[ 5pt ] &(ホ)& 電圧調整器     &(ヘ)& 励磁調整 \\[ 5pt ] &(ト)& 高調波     &(チ)& 周波数 \\[ 5pt ] &(リ)& 位相     &(ヌ)& 瞬時電圧低下 \\[ 5pt ] &(ル)& 送電損失     &(ヲ)& 分路リアクトル \\[ 5pt ] &(ワ)& 出力調整     &(カ)& 電圧不安定現象 \\[ 5pt ] &(ヨ)& 電力用コンデンサ && \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

電力系統における電圧・無効電力調整に関する問題です。
本問の内容は電力科目のテキストに記載されていることが多いと思います。電気施設管理は電力科目とリンクしている箇所もありますので,過去問でわからない箇所があれば電力科目のテキストも参考にしてみるようにしてみて下さい。

1.三相\( \ 3 \ \)線式送電線の電圧降下の近似式
三相回路においては,一相分の等価回路及びベクトル図は図1及び図2のように描くことができ,送電端電圧と受電端電圧の位相差\( \ \delta \ \mathrm {[rad]} \ \)が無視できるぐらい小さいとしたときの電圧降下\( \ \varepsilon \ \mathrm {[V]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {V_{\mathrm {s}}}{\sqrt {3}}&≃&\frac {V_{\mathrm {r}}}{\sqrt {3}}+RI\cos \theta +XI\sin \theta \\[ 5pt ] \frac {V_{\mathrm {s}}}{\sqrt {3}}-\frac {V_{\mathrm {r}}}{\sqrt {3}}&=&RI\cos \theta +XI\sin \theta \\[ 5pt ] V_{\mathrm {s}}-V_{\mathrm {r}}&=&\sqrt {3}\left( RI\cos \theta +XI\sin \theta \right) \\[ 5pt ] \varepsilon &=&\sqrt {3}I\left( R\cos \theta +X\sin \theta \right) \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められます。

2.送電線の送電電力と電力損失
送電端の電圧が\( \ V_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[V]} \ \),受電端の電圧が\( \ V_{\mathrm {r}} \ \mathrm {[V]} \ \),送電線の\( \ 1 \ \)線あたりの抵抗が\( \ r \ \mathrm {[\Omega ]} \ \),リアクタンスが\( \ x \ \mathrm {[\Omega ]} \ \),送電線に流れる電流が\( \ I \ \mathrm {[A]} \ \),負荷の力率が\( \ \cos \theta \ \)であるとすると,送電線の一相分等価回路は図3のように描くことができます。

このとき,負荷電力\( \ P \ \mathrm {[W]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
P &=&\sqrt {3}V_{\mathrm {r}}I\cos \theta \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,上式より,
\[
\begin{eqnarray}
I &=&\frac {P}{\sqrt {3}V_{\mathrm {r}}\cos \theta } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるため,送電線での電力損失\( \ P_{\mathrm {L}} \ \mathrm {[W]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {L}} &=&3rI^{2} \\[ 5pt ] &=&3r\left( \frac {P}{\sqrt {3}V_{\mathrm {r}}\cos \theta }\right) ^{2} \\[ 5pt ] &=&\frac {P^{2}r}{V_{\mathrm {r}}^{2}\cos ^{2}\theta } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

3.配電線路における電圧調整
①負荷時タップ切換変圧器(\( \ \mathrm {LRT} \ \))
 配電用変電所で行う調整で,変圧器のタップを切り換えることで,変圧比を調整し電圧を調整します。

②負荷時電圧調整器(\( \ \mathrm {LRA} \ \))
 配電用変電所に設置する電圧調整器で,母線電圧を調整します。

③柱上変圧器のタップ調整
 高圧線の変電所からの距離に応じて柱上変圧器のタップを調整し,低圧線の電圧を適正範囲内に調整します。

④自動電圧調整器(\( \ \mathrm {SVR} \ \))
 高圧配電線の途中に設置し,タップ切換器,変圧器,制御機構等で構成され,電圧を自動で調整します。

⑤昇圧器
 配電線のこう長が長くなり負荷の端子電圧が低くなる場合に設置します。

⑥電力用コンデンサ
 配電線路上に電力用コンデンサを設置し,開閉することで力率の改善を行い電圧を調整します。

4.電圧不安定現象
電力需要が増大すると,送電線の抵抗及びリアクタンスによる電圧降下が大きくなり,受電端電圧が低下します。さらに電力需要を満たすために負荷電流が増加すると,安定限界点(図4のカーブの右先端)を超えて急激に電圧が低下し,系統全体の電圧が維持できなくなり大規模停電に至る可能性があります。これを電圧不安定現象と呼びます。

5.同期機の\( \ \mathrm {V} \ \)曲線
同期機の界磁電流と電機子電流の関係である\( \ \mathrm {V} \ \)曲線(位相特性曲線)は図5のようになります。
力率\( \ 1 \ \)を最小値として界磁電流を大きくすれば,電動機の場合進み位相となり,界磁電流を小さくすれば遅れ位相となります。また,発電機の場合は逆となります。
また,負荷が大きくなると曲線は上側に移動し,同じ力率においては電機子電流が大きくなります。

【解答】

(1)解答:ル
題意より,解答候補は(ト)高調波,(チ)周波数,(リ)位相,(ル)送電損失,等になると思います。
ワンポイント解説「2.送電線の送電電力と電力損失」の通り,電力損失は電流の\( \ 2 \ \)乗に比例するため,電圧が低下すると同じ電力を送電するために送電線の電流が増加し,送電損失が増加します。

(2)解答:カ
題意より,解答候補は(イ)フリッカ,(ハ)フェランチ効果,(ヌ)瞬時電圧低下,(カ)電圧不安定現象,になると思います。
ワンポイント解説「4.電圧不安定現象」の通り,電力需要の急増等により受電端電圧が異常に低下し電圧維持が困難になる現象を電圧不安定現象といいます。

(3)解答:ロ
題意より,解答候補は(ロ)変圧比,(チ)周波数,(リ)位相,等になると思います。
ワンポイント解説「3.配電線路における電圧調整」の通り,変圧器の負荷時タップ切替装置により変圧比制御を行うことができます。

(4)解答:ヘ
題意より,解答候補は(ニ)速度調整,(ヘ)励磁調整,(ワ)出力調整,になると思います。
ワンポイント解説「5.同期機の\( \ \mathrm {V} \ \)曲線」の通り,発電機の無効電力調整は励磁調整により行うことができます。

(5)解答:ヨ
題意より,解答候補は(ホ)電圧調整器,(ヲ)分路リアクトル,(ヨ)電力用コンデンサ,になると思います。
ワンポイント解説「3.配電線路における電圧調整」の通り,遅れ力率の場合には電力用コンデンサを設置し力率を改善し,電圧上昇時には電力用コンデンサを開放することにより電圧値を改善することができます。



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