【一次試験】
【総合】
やや難化
電力以外は昨年度より難しい問題が出題されました。特に理論や機械は昨年と異なり,本来の難しさを取り戻しており,受験生は苦戦したのではないかと思います。ただし,昨年度は全科目合格点が6割でしたが,今年度は各科目とも合格点の調整が入り,合格率は平年並みの20~25%程度に落ち着いたものとなりました。今後も,一次試験の合格率はこの水準で維持していくものと思います。
今年のように難しい問題が出題された年は合格点の調整が入るので,試験本番で問題を解いてみて過去問より難しいなと感じかつ得点がボーダーラインギリギリであったら,合格発表前から二次試験対策を行っておいた方が無難でしょう。
試験日実施日:平成30年9月1日
申込者数 :7,991人(前年度8,077人)
受験者数 :6,631人(前年度6,570人)
合格者数 :1,600人(前年度1,737人)
合格率 :24.1%(前年度26.4%)
科目合格者数:3,089人(前年度3,450人)
科目合格率 :46.6%(前年度52.5%)
【理論】
難化
B問題はそれほど難しくありませんでしたが,配点の高いA問題が昨年より大幅に難しくなったと思います。特に問4はあまり出題されない分野で問題文を読み解く能力が必要となり,時間を要した問題ではなかったかと思います。
昨年度は問7で空欄穴埋問題が出題されましたが,今年は全て計算問題でした。三種の時は2~3割程度知識を問う問題が出題されたと思いますが,二種の理論はより計算力が試される科目となっていることに注意して下さい。問題の傾向からも三種とは勉強の仕方も違うと思います。
出題内容としては,電磁気がA問題2問・B問題0問(昨年度もA問題2問・B問題0問),電気回路がA問題1問・B問題2問(昨年度はA問題2問・B問題2問),電子回路がA問題0問・B問題1問(昨年度もA問題0問・B問題1問),電気電子計測その他がA問題1問・B問題1問(昨年度はA問題0問・B問題1問)で,昨年と比べ電気回路の問題が1問少なく,代わりに問4の半導体の問題が入ったような印象です。
電験二種の受験生レベルであると,電磁気と電気回路はかなり習熟されている受験生も多く,点数差が開くのはこれら以外の問題であると思います。電磁気と電気回路が基本であることは変わりありませんが,三種以上に他分野の勉強にも力を入れるようにして下さい。
繰り返しになりますが,今年の問題は,全体的に計算に時間を要する問題が多く,試験時間が足りない受験生もいたのではないかと思います。電験二種の場合は三種以上に計算力を問われ,特に理論の場合は早くかつ正確に計算をする必要がありますので,普段から時間を測定して過去問を解く等計算力を上げるトレーニングをしておいて下さい。
申込者数 :6,005人(前年度6,834人)
受験者数 :4,511人(前年度5,145人)
合格者数 :1,471人(前年度2,832人)
合格率 :32.6%(前年度55.0%)
合格点 :49点(前年度54点)
【電力】
易化
問7以外の問題の難易度はそれほど易しくなっていませんが,問題文の文脈から選択肢が絞りやすい問題が多かったので,勘が当たった方が多くいたと思います。ただし,例年電力は合格率が高く,半分以上の方が合格するため,今年の難易度は平年並みと思って良いでしょう。難易度が下がったのにも関わらず,合格点も下がっているのは他の科目との兼ね合いで全体の合格率を調整するためであると思います。
計算問題が問3の(3)と問7で13点(90点中),空欄穴埋問題が77点(90点中)で,三種に比べてもかなり知識を問う問題が多いと感じると思います。これは計算問題は二次試験に多く出題されるので,一次試験ではできるだけ知識を問う問題を出題しようという試験センター側の思惑があると思われます。
出題内容は発電がA問題2問・B問題1問(昨年度もA問題2問・B問題1問),送配電がA問題2問・B問題1問(昨年度もA問題2問・B問題1問),変電がA問題0問・B問題1問(昨年度もA問題0問・B問題1問)で,電力の場合は毎年同程度のバランスで出題され,2~3年に1回程度電気材料に関する問題が出題される傾向があります。また,近年の傾向としては,一種・二種問わず新エネルギーに関する出題が増加傾向にあると感じます。この辺りも試験勉強では抑えておくことがポイントでしょう。
したがって,今後も発電と送配電を中心に一次に関しては計算よりも知識を暗記する方法が最も効率的であると思います。
申込者数 :6,529人(前年度5,434人)
受験者数 :5,072人(前年度3,952人)
合格者数 :3,040人(前年度1,488人)
合格率 :59.9%(前年度37.7%)
合格点 :52点(前年度54点)
【機械】
難化
前年度よりは大幅に難化しましたが,前年度が易しい問題であったので,今年度は平年より少しだけ難しい問題であったと思います。例年,機械は合格率が低く,今年も受験生の関門になったと思います。
計算問題が問1と問3の(2)・(3),問6の(3)~(5)で28点(90点中),空欄穴埋問題が62点(90点中)で,電力科目同様,計算問題の占める割合が三種に比べて少ない傾向にあります。これは二次試験の機械制御科目で計算問題が出題されるので,その分一次試験の計算問題の配分を少なくしようとしているものと考えられます。
出題内容としては,回転機がA問題2問・B問題0問(昨年度はA問題1問・B問題1問),静止機(変圧器含む)がA問題0問・B問題1問(昨年度はA問題1問・B問題0問),パワーエレクトロニクスがA問題1問・B問題0問(昨年度もA問題1問・B問題0問),電動機応用がA問題0問・B問題0問(昨年度もA問題0問・B問題0問),照明がA問題0問・B問題1問(昨年度もA問題0問・B問題1問),電熱がA問題1問・B問題0問(昨年度もA問題1問・B問題0問),電気化学がA問題0問・B問題1問(昨年度もA問題0問・B問題1問),電気加工がA問題0問・B問題0問(昨年度もA問題0問・B問題0問),自動制御がA問題0問・B問題0問(昨年度もA問題0問・B問題0問),メカトロニクスがA問題0問・B問題0問(昨年度もA問題0問・B問題0問),情報伝送及び処理がA問題0問・B問題1問(昨年度もA問題0問・B問題1問)となっています。
問1に誘導電動機の計算問題が出題され,今年の二次試験の問題には少し傾向の違う問題が出題されるのではないかと思ったら,やはり論説問題が出題されました。このように一次試験に出題された問題はまず二次試験には出題されません。二次試験を勉強する際にはその年の一次試験の内容は確認してから勉強する方が良いと思います。
出題傾向を見て分かるように,出題範囲は幅広いですが,出題傾向は似たような傾向があります。基本は二次試験の試験範囲である回転機,静止機,パワーエレクトロニクスを中心とした勉強になると思います。しかし,自動制御は二次試験には必ず1問出題されますが,一次試験では平成25年に出題されて以降一度も出題されていません。このように出題傾向の濃淡がはっきりしているので,一次試験は一次試験対策として,出題される配点に合わせて勉強量を調節すると良いと思います。
申込者数 :5,643人(前年度6,604人)
受験者数 :4,104人(前年度4,901人)
合格者数 :1,595人(前年度3,188人)
合格率 :38.9%(前年度65.0%)
合格点 :52点(前年度54点)
【法規】
昨年並み
合格率は昨年並みでしたが,今年は電気設備技術基準関連の問題が多く,私個人的には去年より難しく感じました。平年と比べても,今年の難易度は同程度と考えてよいと思います。法規科目は選択肢が3択に絞りやすいことや三種と勉強方法があまり変わらないことから,毎年合格率が50%以上になることが多く,今年も51.9%となりました。
問1~問7まですべて空欄穴埋問題で計算問題は一問も出題されていません。三種の時には計算問題がB問題によく出題されたと思いますが,二種ではここ数年間一度も出題されたことがありません。電気施設管理の計算問題が二次試験に出題されるので,一次試験は知識を問う問題を中心に出題するという意図があると思います。この傾向は今後も変わらないものと思われます。
出題内容は電気事業法がA問題1問・B問題0問,電気設備技術基準とその解釈がA問題3問・B問題1問,電気施設管理がA問題0問・B問題2問でした。電気設備技術基準からの出題が90点満点中55点と6割以上となり,例年以上に法律に偏った問題であったと思います。
法律に関して今後も過去問を中心に,一種や三種の過去問も含め,勉強をすると良いと思います。また日頃から過去問に出題された条文を中心にできるだけたくさんの条文を理解することが重要と思います。また,計算問題は出題されないので,一次試験対策としては参考書でもその範囲は飛ばす等思い切った選択をするのも手であると思います。
申込者数 :6,129人(前年度6,277人)
受験者数 :4,664人(前年度4,710人)
合格者数 :2,422人(前年度2,490人)
合格率 :51.9%(前年度52.9%)
合格点 :52点(前年度54点)
【二次試験】
【総合】
やや易化
昨年より電力管理の問題が易しい印象があったので,今年は合格率が上がるのでは???と期待しておりましたが,フタを開けてみたら試験センターの方で合格点を上限(108点)まで引き上げてしまいました。敢えて合格点や合格率を10年分記載させて頂いておりますが,例年平成28年のように問題が易しくても合格点は100点前後までとしているのが,今年だけ108点となり,この高い合格基準点は合格率30%を記録した平成20年以来となります。問題を見比べてみればよくわかりますが,平成20年と今年では問題の難易度は全く異なり,近年の傾向から考えてもこの合格点は厳しい裁定である印象を受けました。
近年の合格率から分かるように今後も合格基準は10~15%の相対評価であることには変わりはないと思います。問題が易しくても受験生の上位7分の1に入っていなければ合格できません。皆さん一次試験を受かってきた方が二次試験を受けるので,よりハイレベルな試験となることも踏まえて勉強期間を調整すると良いと思います。
試験日実施日:平成30年11月18日
合格基準点及び合格率推移
\[
\begin{array}{|c|c|c|c|c|}
\hline
& 合格基準点 & 受験者数 & 合格者数 & 合格率(%) \\
\hline
平成30年度 & \displaystyle {180点満点中108点以上}\atop \displaystyle {かつ各科目とも平均点-5点以上} & 2,624 & 381 & 14.5 \\
\hline
平成29年度 & \displaystyle {180点満点中99点以上}\atop \displaystyle {かつ各科目とも平均点-5点以上} & 2,435 & 329 & 13.5 \\
\hline
平成28年度 & \displaystyle {180点満点中99点以上}\atop \displaystyle {かつ各科目とも平均点-5点以上} & 2,364 & 459 & 19.4 \\
\hline
平成27年度 & \displaystyle {180点満点中90点以上}\atop \displaystyle {かつ各科目とも平均点-5点以上} & 2,406 & 297 & 12.3 \\
\hline
平成26年度 & \displaystyle {180点満点中102点以上}\atop \displaystyle {かつ各科目とも平均点-5点以上} & 2,443 & 350 & 14.3 \\
\hline
平成25年度 & \displaystyle {180点満点中90点以上}\atop \displaystyle {かつ各科目とも平均点-5点以上} & 2,503 & 282 & 11.3 \\
\hline
平成24年度 & \displaystyle {180点満点中99点以上}\atop \displaystyle {かつ各科目とも平均点-5点以上} & 2,249 & 304 & 13.5 \\
\hline
平成23年度 & \displaystyle {180点満点中93点以上}\atop \displaystyle {かつ各科目とも平均点-5点以上} & 1,942 & 219 & 11.3 \\
\hline
平成22年度 & \displaystyle {180点満点中99点以上}\atop \displaystyle {かつ各科目とも平均点-5点以上} & 2,636 & 411 & 15.6 \\
\hline
平成21年度 & \displaystyle {180点満点中93点以上}\atop \displaystyle {かつ各科目とも平均点-5点以上} & 2,490 & 255 & 10.2 \\
\hline
平成20年度 & \displaystyle {180点満点中108点以上}\atop \displaystyle {かつ各科目とも平均点以上} & 2,251 & 675 & 30.0 \\
\hline
\end{array}
\]
【電力・管理】
易化
問1の計算問題と論説問題が昨年と比べて易しくなったと思います。ただし,問3と問5は比較的難易度の高い計算問題が出題されたので,二次試験対策を計算に特化された方だと,かなり厳しい試験になったのではないかと思います。
計算問題が3問,論説問題が3問と昨年と比較すると計算問題が1問増えましたが,全体のバランスとしては例年並みであると思います。
問1は水力発電の計算問題で,問題は易しい問題ですが,単位\(\mathrm {kW}\)を揃えるのが抜けたり,水車中心標高という文言があったりするいわゆる引っ掛け問題でした。こういう問題は非常に点数差が開きやすくなるので,注意が必要です。
問2は変電所母線の結線方式に関する論説問題で,業務で設計依担当したことがある方であれば,比較的容易に解けたと思います。なかなか業務で複数の母線を扱うことが少ないので,自信のない方は他の問題を選択されたのではないかと思います。
問3は電力円線図に関する問題で,本年の問題では一番難しい問題であったと思います。計算量も多く,作図もしなければならないので,時間も非常にかかります。そのまま一種で出題した方が良いのではないかと思いました。本問を選択することはあまりオススメしません。
問4は地中送電の特徴,スポットネットワーク系統の特徴という,電験では比較的出題されやすい内容で,かなりの受験生が選択されたのではないかと思いました。(1)はできるだけたくさんの項目が記載できるよう,普段から勉強するようにして下さい。
問5は高調波に関する計算問題で,(5)以外は標準的な問題であったと思います。時間配分を考えると(5)は後回しで良いかなと思います。
問6は中性点接地方式に関する論説問題で,この内容は電験では非常に出題頻度の高い内容なので,この内容はよく理解しておいた方が良いと思います。
上記を踏まえ,私であったら,問1,問2 (or 問5),問4,問6を選択したと思います。
【機械・制御】
やや難化
問1から論説問題が出題され,問3,問4が若干難しめな印象があるので,昨年よりやや難しくなったと思います。機械・制御科目で設問全体が論説問題となったのは私が記憶している限りではありません。
問1が完答できると,時間的にも余裕ができ,楽な試験となったと思います。
問1は誘導電動機の始動方式に関する論説問題で,よく見れば実はそれほど難しくない問題ですが,60分という限られた試験時間の中でパッと問題を見た受験生は焦ったと思います。その時は周りの受験生も一緒なので,一旦落ち着くことが重要です。
問2は同期発電機に関する計算問題で,比較的オーソドックスな問題であったと思います。ただし,三相分の出力であることや単位を揃えること,計算がやや複雑であること等,考え方は易しいですが時間がかかりミスもしやすい問題であったと思います。
問3は三相サイリスタ変換装置に関する問題で,パワーエレクトロニクスが得意な方であれば計算も難しくないので,比較的容易に解けたと思います。パッと見た感じは問題文が長く,考え方が難しそうなので私だったら選択しないと思います。
問4は2自由度制御系の自動制御に関する問題で,解くのに少しだけ時間がかかる問題であると思います。伝達関数の内容が出題されているので,その部分だけ解いても部分点はもらえます。時間がないので(2)が解けないと思った時はさっと(3)に切り替えることが重要です。
私であれば,かなり選択に迷うと思いますが,問1は論説問題なのでパスし,問2と問4を選択したと思います。