《電力》〈配電〉[H19:問4]配電線に生じる電圧フリッカに関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,フリッカに関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる語句又は数値を解答群の中から選び,その記号をマークシートに記入しなさい。

配電線にアーク炉や溶接機などのような変動負荷が接続されると,その負荷電流による電圧降下のために配電線の電圧が変動する。この電圧変動が頻繁に繰り返され,照明の明るさにちらつきを生じる現象をフリッカという。

電圧変動に対し最も敏感にちらつきを生じるのは\( \ \fbox {  (1)  } \ \)であり,フリッ力は,そのちらつきをもって評価される。

日本においては,現在,次式により算出される値による評価が推奨されている。
\[
\begin{eqnarray}
&& \sqrt {\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \left( a_{n}\mathit {\Delta } V_{n}\right) ^{2} } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] 式の\( \ \mathit {\Delta } V_{n} \ \)は\( \ n \ \)次変動周波数における,電圧の実効値である。また,\( \ a_{n} \ \)は各変動周波数におけるちらつき視感度係数であり,その値が\( \ \fbox {  (2)  } \ \)となる\( \ \fbox {  (3)  } \ \mathrm {[Hz]} \ \)のときを\( \ 1.0 \ \)としたものとなっている。

なおフリッカは,ちらつき評価試験で\( \ 50 \ \mathrm {[%]} \ \)の人にちらつきがあると認識される\( \ \fbox {  (4)  } \ \mathrm {[V]} \ \)を限度値とする考え方が一般的である。

フリッカ防止の対策としては,電流変動を補償する方法があり,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)等が用いられている。

〔問4の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 1     &(ロ)& 自動力率調整装置 \ \left( \mathrm {APFR} \right)     &(ハ)& 0.12 \\[ 5pt ] &(ニ)& 0.45     &(ホ)& 蛍光灯     &(ヘ)& 白熱灯 \\[ 5pt ] &(ト)& ハロゲン灯     &(チ)& 3     &(リ)& 最 小 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 10     &(ル)& 自動電圧調整装置 \ \left( \mathrm {SVR} \right)     &(ヲ)& 0.23 \\[ 5pt ] &(ワ)& 平均値     &(カ)& 静止形無効電力補償装置 \ \left( \mathrm {SVC} \right)         &(ヨ)& 最 大 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

配電線に発生する電圧フリッカに関する問題です。
電圧フリッカに関しては二次試験でも出題される可能性があるため,空欄穴埋ができるレベルではなく,概要を説明できるレベルにしておく必要があります。

1.電圧フリッカ
①電圧フリッカの発生源及び原因
送配電線に製鉄用アーク溶解炉や溶接機など負荷変動の大きい負荷を短絡容量の小さい系統に接続されると,負荷電流変化による線路の電圧降下の変化の繰り返しにより,電圧変動が生じます。
短絡容量\( \ P_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[V\cdot A]} \ \)は,定格容量\( \ P_{\mathrm {n}} \ \mathrm {[V\cdot A]} \ \),線路の百分率インピーダンス\( \ %Z \ \mathrm {[%]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {s}} &=&\frac {P_{\mathrm {n}}}{%Z}\times 100 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求められ,線路のインピーダンスに反比例します。線路のインピーダンスが大きいほど電圧変動は大きくなるため,短絡容量が小さいほど電圧変動は大きくなります。

②電圧フリッカによる影響
電球や蛍光灯等の照明機器にちらつきが生じます。
特に電圧変動の周波数が\( \ 10 \ \mathrm {[Hz]} \ \)程度のときに人が感知しやすいです。フリッカの認識率は電圧降下の大きさが大きくなるほど増加し,\( \ 0.4~0.5 \ \mathrm {[V]} \ \)程度で\( \ 50 \ \mathrm {[%]} \ \)の人にちらつきがあると認識されることから,これを最大値として抑制するのが望ましいとされています。

③電圧フリッカの対策
・短絡容量の大きい系統から受電する
・配電用変圧器の容量を大きくし,線路インピーダンスを減少させる
・アーク溶解炉や溶接機を専用線もしくは専用変圧器とする
・電源側に直列コンデンサを設置する
・負荷側に無効電力補償装置(\( \ \mathrm {SVC} \ \))を設置する
・負荷側に直列リアクトルと同期調相機を挿入し,無効電力変動を同期調相機で吸収する
・アーク溶解炉の供給回路に可飽和リアクトルを設置する

【解答】

(1)解答:ヘ
題意より,解答候補は(ホ)蛍光灯,(ヘ)白熱灯,(ト)ハロゲン灯,になると思います。
このうち最も敏感にちらつきを生じるのは白熱灯となります。近年は白熱灯や蛍光灯が減ってきているので,本選択肢の内容は参考程度で良いかと思います。

(2)解答:ヨ
題意より,解答候補は(リ)最小,(ワ)平均値,(ヨ)最大,になると思います。
ちらつき視感度係数は最大値を基準とします。

(3)解答:ヌ
題意より,解答候補は(イ)\( \ 1 \ \),(チ)\( \ 3 \ \),(ヌ)\( \ 10 \ \),になると思います。
ワンポイント解説「1.電圧フリッカ」の通り,電圧変動の周波数が\( \ 10 \ \mathrm {[Hz]} \ \)程度のときに人が感知しやすく,これを\( \ 1.0 \ \)としたものとなっています。

(4)解答:ニ
題意より,解答候補は(ハ)\( \ 0.12 \ \),(ニ)\( \ 0.45 \ \),(ヲ)\( \ 0.23 \ \),になると思います。
ワンポイント解説「1.電圧フリッカ」の通り,ちらつき評価試験で\( \ 50 \ \mathrm {[%]} \ \)の人にちらつきがあると認識される約\( \ 0.45 \ \mathrm {[V]} \ \)を限度値とする考え方が一般的です。

(5)解答:カ
題意より,解答候補は(ロ)自動力率調整装置\( \ \left( \mathrm {APFR} \right) \ \),(ル)自動電圧調整装置\( \ \left( \mathrm {SVR} \right) \ \),(カ)静止形無効電力補償装置\( \ \left( \mathrm {SVC} \right) \ \),になると思います。
ワンポイント解説「1.電圧フリッカ」の通り,フリッカ防止の対策として有効なのは静止形無効電力補償装置\( \ \left( \mathrm {SVC} \right) \ \)となります。



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