《電力》〈新エネルギー発電〉[H23:問6]風力発電の発電機に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,風力発電の発電機に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

風力発電の発電機は,風速の変動で\( \ \fbox {  (1)  } \ \)が変化し,端子電圧の周波数,電圧が変動するため,系統に連系するにはこれを解決する必要がある。このため,周波数に関係なく,電圧調整も容易な直流発電機が用いられたこともあったが,保守性と経済性の問題から,現在はあまり使われていない。現在主に使われているのものは,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)と\( \ \fbox {  (3)  } \ \)である。\( \ \fbox {  (2)  } \ \)は界磁により端子電圧を確立でき,力率の調整も可能である長所を持つが,構造が若干複雑で,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)は直接系統と接続する場合,系統の周波数に依存する。このため,主に出力電圧を直流化したのち,交直変換器で系統の周波数と一致させる方法が採られる。\( \ \fbox {  (3)  } \ \)は構造が簡単で,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)が系統の周波数に依存しないため,直接系統と接続可能であるが,端子電圧を単体で確立できないため\( \ \fbox {  (4)  } \ \)が困難であり,力率の調整能力も無い。なお,最近の大形風力発電機では両者の長所を併せ持ち,運転上\( \ \fbox {  (5)  } \ \)に優れる二重給電誘導発電機が主に用いられている。

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 保 守     &(ロ)& 同期発電機     &(ハ)& 調速機運転 \\[ 5pt ] &(ニ)& ヨー角     &(ホ)& \mathrm {SVC}     &(ヘ)& 軸の回転速度 \\[ 5pt ] &(ト)& 自立運転     &(チ)& ピッチ角     &(リ)& 電力貯蔵 \\[ 5pt ] &(ヌ)& インバータ       &(ル)& 同期調相機       &(ヲ)& 誘導発電機 \\[ 5pt ] &(ワ)& 可変速性能     &(カ)& 直巻発電機     &(ヨ)& 高調波抑制性能 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

風力発電に使用される発電機に関する問題です。
電験の参考書では記載の少ない専門書に掲載されているような内容で,機械科目の知識も必要とする\( \ 3 \ \)種よりも高度となった\( \ 2 \ \)種らしい問題と言えると思います。

1.風力発電に使用される発電機の種類

①誘導発電機
構造が簡単で,安価であるため,小形の風力発電によく使用されています。
しかし,励磁電流を系統から取るため,端子電圧を単体で確立することができず,系統に接続しないと発電することができません。また,発電機自身が無効電力の調整機能を持たず風速が変化すると有効電力とともに無効電力も変化してしまい,電圧変動が発生するといった問題があります。
さらに,系統に連系する際に突入電流により瞬時電圧低下を発生する恐れがあるため,限流リアクトルを設置する等の対応が必要となります。
近年では,大形風力発電所において二重給電誘導発電機という,可変速性能を持つ発電機が使用されます。これは誘導発電機による系統連系と交直変換器を用いた系統連系を併用する技術で出力や力率をコントロールしながら運転することができ,誘導発電機と同期発電機の長所を併せ持ったような方式となります。


出典:株式会社インプレス HP
URL:https://sgforum.impress.co.jp/article/1370

②同期発電機
同期機なので界磁電流により端子電圧を確立でき,遅れから進みまで無効電力を調整して力率を調整することが可能です。また,無効電力を調整できるので風速変化により有効電力が変化しても,無効電力を一定に保つことができ,電圧変動の問題が発生しません。したがって,系統に並列しない自立運転も可能となります。
ただし,誘導発電機に比べ構造が複雑であり,価格も高くなります。
系統とそのまま並列すると回転数が系統の周波数に依存してしまうので,系統に並列する場合は一般に交直変換器を用いて一旦直流に変換したのち再度交流に変換する直流リンク方式という方法がとられます。

【解答】

(1)解答:ヘ
題意より解答候補は,(ニ)ヨー角,(ヘ)軸の回転速度,(チ)ピッチ角,等になると思います。
このうち,風速の変動で変化するものは軸の回転速度です。
ヨー制御は風車の向きを風向きに合わせて方向転換する制御,ピッチ制御はブレードの角度を風速に合わせてコントロールする制御,であり,どちらも風速の変動で「変化させるもの」という表現の方が適切かと思います。

(2)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)同期発電機,(ル)同期調相機,(ヲ)誘導発電機,(カ)直巻発電機,等になると思います。
このうち,風力発電の発電機に採用されているのは同期発電機と誘導発電機ですが,「界磁により端子電圧を確立でき,力率の調整も可能である」ということから同期発電機であることがわかります。

(3)解答:ヲ
題意より解答候補は,(ロ)同期発電機,(ル)同期調相機,(ヲ)誘導発電機,(カ)直巻発電機,等になると思います。
「構造が簡単で,軸の回転速度が周波数に依存しない」となっていること等から誘導発電機であることがわかります。

(4)解答:ト
題意より解答候補は,(イ)保守,(ハ)調速機運転,(ト)自立運転,(リ)電力貯蔵,等になると思います。
誘導発電機は保守性はよく,直接系統と接続可能ですが,端子電圧を確立できないため自立運転ができないという特徴があります。

(5)解答:ワ
題意より解答候補は,(ワ)可変速性能,(ヨ)高調波抑制性能,等になると思います。
ワンポイント解説「1.風力発電に使用される発電機の種類」の通り,二重給電誘導発電機は可変速性能に優れるという特徴があります。



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