《電力》〈配電〉[H27:問3]送配電系統の電圧上昇とその対策に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,送配電系統の電圧上昇とその対策に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

都市部の送配電系統では\( \ \fbox {  (1)  } \ \)の採用や需要家側に設置された力率改善用コンデンサの常時投入などにより,深夜軽負荷帯などに無効電力発生が過剰となる場合がある。これに伴う電圧上昇対策として\( \ \fbox {  (2)  } \ \)の投入や,変圧器タップ位置の調整,発電機の進相運転(低励磁運転)などを行っている。発電機の進相運転(低励磁運転)では\( \ \fbox {  (3)  } \ \)及び補機電圧の低下などの問題がある。よって,あらかじめ運転可能範囲を十分に検討しておく必要がある。

一方,太陽光発電設備の多く導入された配電系統では,5月上旬等日照条件がよく負荷の比較的小さい期間において,太陽光発電設備による逆潮流により,特に高圧配電線末端の電圧が上昇する。電圧上昇対策は系統側条件と発電設備側条件の両面から検討することが基本であり,\( \ \fbox {  (4)  } \ \)側では\( \ \fbox {  (5)  } \ \)や出力抑制の機能をもつ自動電圧調整装置等を設置する方法が用いられている。

〔問3の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 母線連絡用遮断器     &(ロ)& 軸ねじれ共振 \\[ 5pt ] &(ハ)& \mathrm {GIS}     &(ニ)& 変圧器タップ切換 \\[ 5pt ] &(ホ)& フォルト ライド スルー         &(ヘ)& 分路リアクトル \\[ 5pt ] &(ト)& 電圧脈動の増大     &(チ)& 変電所 \\[ 5pt ] &(リ)& 進相無効電力制御     &(ヌ)& 同期安定性の悪化 \\[ 5pt ] &(ル)& アモルファス変圧器     &(ヲ)& ケーブル系統 \\[ 5pt ] &(ワ)& 系 統     &(カ)& 発電設備 \\[ 5pt ] &(ヨ)& 直列コンデンサ
\end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

電気事業法施行規則第38条に電圧の経済産業省令で定める範囲を\( \ \mathrm {100V} \ \)の場合は\( \ \mathrm {101±6V} \ \),\( \ \mathrm {200V} \ \)の場合は\( \ \mathrm {202±20V} \ \)と規定されています。本問は夜間軽負荷時や太陽光発電等の分散型電源の増加により対策が求められる物に関する内容で,非常に重要な内容となります。

【用語の解説】

(イ)母線連絡用遮断器
 母線間をつなぐ遮断器で,母線を点検する際に停電範囲を極小化するために設けられている遮断器です。
(ロ)軸ねじれ共振
 電力系統の\(LC\)の共振周波数と発電機の周波数が共振した時に,タービン軸に発生する応力を総称し,軸ねじれ共振と言います。
(ハ)\(\mathrm {GIS}\)
 ガス絶縁開閉装置の略称で,遮断器や断路器を絶縁性の高い\( \ \mathrm {SF_{6}} \ \)で充填し,コンパクトにした開閉装置です。
(ニ)変圧器タップ切換
 変圧器の一次側,二次側の巻数比を調整することができる切換型の装置です。
(ホ)フォルト ライド スルー
 系統事故等により周波数や電圧が大きく変動した際に運転継続できることを言います。
(ヘ)分路リアクトル
 夜間軽負荷時等に受電端の電圧が上がりすぎるのを抑制するために,無効電力を消費し,電圧を下げるものです。
(ト)電圧脈動の増大
 電圧脈動は直流の時によく用いる言葉ですが,直流では一定の電圧が欲しいところですが,実際には本来の電圧からわずかに振幅(脈動)がある場合がありそれを電圧脈動と言います。
(チ)変電所
 単に電圧を変化させる場所でも良いですが,電験受験者であれば,「需要場所において高圧又は特別高圧の電気を受電し、変圧器その他の電気機械器具により電気を変成する場所」と電気設備技術基準の解釈に沿って理解した方が良いと思います。
(リ)進相無効電力制御
 分路リアクトルの投入や同期調相機等による無効電力の制御を意味しているものと思われます。
(ヌ)同期安定性の悪化
 定態安定度は短絡比の小さい(同期インピーダンスの大きい)火力のタービンでは低下するので,夜間軽負荷時は安定性が悪化します。
(ル)アモルファス変圧器
 鉄心にアモルファス合金を使用したもので,鉄心にけい素鋼板を使用した従来の変圧器より鉄損が大幅に少ない特徴があります。
(ヲ)ケーブル系統
 ケーブルは地中送電線に用いられ,絶縁に架橋ポリエチレン等を使用しており,対地静電容量が架空送電線の40倍以上になります。
(ヨ)直列コンデンサ
 送電線路に直列に挿入することで電路のリアクタンスを小さくし,電圧降下を抑える働きをするものです。

【解答】

(1)解答:ヲ
用語の知識がないと解答候補が絞りにくいと思いますが,都市部では送電系統の地中化等によりケーブルを採用することが多く,静電容量が増加し,夜間軽負荷時等に電圧が高くなります。よって,解答は(ヲ)ケーブル系統となります。

(2)解答:ヘ
題意より,解答候補は(イ)母線連絡用遮断器,(ヘ)分路リアクトル,(ヨ)直列コンデンサ,等になると思いますが,電圧上昇対策として効果があるのは分路リアクトルの投入となります。

(3)解答:ヌ
題意より,解答候補は(ロ)軸ねじれ共振,(ト)電圧脈動の増大,(ヌ)同期安定性の悪化,となりますが,発電機側の進相運転では定態安定度が下がり同期安定性が悪化します。

(4)解答:カ
題意より,解答候補は(チ)変電所,(ワ)系統,(カ)発電設備,になると思いますが,自動電圧調整装置は発電設備側に設ける設備です。

(5)解答:リ
発電設備側で問題文に合う解答は(リ)進相無効電力制御のみになると思います。



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