《電力・管理》〈送電〉[R02:問5]特別高圧架空電線路による電磁誘導障害に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

特別高圧架空電線路による電磁誘導障害について,次の問に答えよ。

(1) 電磁誘導作用により通信線に誘起される電圧の種類を二つ挙げ,それぞれの発生原理について,簡潔に説明せよ。

(2) 電磁誘導障害の防止対策のうち,架空電線路側の対策について,二つ答えよ。

【ワンポイント解説】

電磁誘導障害に関する出題です。
三つの内容はわかっていても,名称を忘れてしまった受験生も多かったのではないかと思います。(1)の電圧の種類の名称を覚えていれば選択すべき問題であると思います。
本問とは直接関係はないですが,静電誘導障害と電磁誘導障害のメカニズムはしっかりと理解しておくようにしましょう。

1.静電誘導障害
送電線と通信線間の相互静電容量と通信線と大地間の対地静電容量により,送電線の電圧が分圧されるため発生します。
定量的には,図1の示すように各部電圧と静電容量を定めると,送電線から通信線へ流れる電流の合計は,通信線から大地へ流れる電流と等しいので,
\[
\begin{eqnarray}
\mathrm {j}\omega C_{\mathrm {a}} \left( {\dot E}_{\mathrm {a}}-{\dot E}_{0}\right) +\mathrm {j}\omega C_{\mathrm {b}} \left( {\dot E}_{\mathrm {b}}-{\dot E}_{0}\right) +\mathrm {j}\omega C_{\mathrm {c}} \left( {\dot E}_{\mathrm {c}}-{\dot E}_{0}\right) &=&\mathrm {j}\omega C_{0}{\dot E}_{0} \\[ 5pt ] C_{\mathrm {a}}{\dot E}_{\mathrm {a}}- C_{\mathrm {a}}{\dot E}_{0}+C_{\mathrm {b}}{\dot E}_{\mathrm {b}} -C_{\mathrm {b}}{\dot E}_{0}+C_{\mathrm {c}} {\dot E}_{\mathrm {c}}-C_{\mathrm {c}} {\dot E}_{0} &=& C_{0}{\dot E}_{0} \\[ 5pt ] \left( C_{\mathrm {a}}+C_{\mathrm {b}}+C_{\mathrm {c}}+C_{0}\right) {\dot E}_{0}&=&C_{\mathrm {a}}{\dot E}_{\mathrm {a}}+C_{\mathrm {b}}{\dot E}_{\mathrm {b}}+C_{\mathrm {c}} {\dot E}_{\mathrm {c}} \\[ 5pt ] {\dot E}_{0}&=&\frac {C_{\mathrm {a}} {\dot E}_{\mathrm {a}}+C_{\mathrm {b}} {\dot E}_{\mathrm {b}}+C_{\mathrm {c}} {\dot E}_{\mathrm {c}}}{C_{\mathrm {a}}+C_{\mathrm {b}}+C_{\mathrm {c}}+C_{0}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。ここで,よくねん架された送電線であれば,静電容量は等しくなり,\( \ {\dot E}_{0}≒0 \ \)となります。

2.電磁誘導障害
送電線と通信線との相互インダクタンスと送電線に流れる各電流の電磁誘導により誘導電圧が発生します。
定量的には,図2のように各電流と相互インダクタンス\( \ M \ \)と並行区間長\( \ L \ \)を定めると,通信線に発生する電圧\( \ {\dot V}_{0} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
{\dot V}_{0}&=&\mathrm {j}\omega ML {\dot I}_{\mathrm {a}}+\mathrm {j}\omega ML {\dot I}_{\mathrm {b}}+\mathrm {j}\omega ML {\dot I}_{\mathrm {c}} \\[ 5pt ] &=&\mathrm {j}\omega ML \left( {\dot I}_{\mathrm {a}}+{\dot I}_{\mathrm {b}}+{\dot I}_{\mathrm {c}} \right)
\end{eqnarray}
\] となります。通常運転時,\( \ {\dot I}_{\mathrm {a}}+{\dot I}_{\mathrm {b}}+{\dot I}_{\mathrm {c}} ≒0 \ \)であるので,\( \ {\dot V}_{0}≒0 \ \)となります。

3.電磁誘導障害の種類
電磁誘導障害を与える電圧には以下の3種類があります。
①常時誘導電圧
三相電流の不平衡もしくは図2のように,各相と通信線との離隔距離が等しくない場合に発生する電圧です。

②異常時誘導電圧
送電線の地絡電流により誘導される電圧です。

③誘導雑音電圧
送電線を流れる高調波電流により誘導される電圧です。

【解答】

(1)電磁誘導作用により通信線に誘起される電圧二つとそれぞれの発生原理
(ポイント)
・ワンポイント解説「3.電磁誘導障害の種類」の通りです。

(試験センター解答)
①異常時誘導電圧:
送電線に一線地絡事故が発生した場合に地絡電流が大地帰路電流となって流れることにより,隣接する通信線路と大地間に誘起される電圧

②常時誘導電圧:
送電線の常時運転時に,各相の負荷電流の不平衡や各相導体と通信線の離隔の不整合によって誘起される電圧

③誘導雑音電圧:
送電線に流れる常時の高調波電流に起因して生じる電圧

(2)電磁誘導障害の防止対策のうち,架空電線路側の対策
(ポイント)
・原因となるものを除去もしくは軽減すれば良いので,発生しにくくする,発生していても問題が発生しないようにするもしくは発生したら速やかに除去する等の観点から見れば,自ずと正答が導き出せると思います。

(試験センター解答例)
以下の主な対策から二つ記載されていればよい。
①架空地線の条数を増やす。
②架空地線に導電率のよい鋼心イ号アルミより線やアルミ被鋼より線を使用する。
③送電線をねん架する。
④送電系統の保護継電方式に高速遮断方式を採用する。
⑤遮へい線を設置する。
⑥送電線のルートを変更し,お互いの離隔距離を大きくする。
⑦中性点抵抗接地方式の抵抗値を大きくする。
⑧中性点接地方式に消弧リアクトル接地方式を採用する。



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