《電力・管理》〈変電〉[R04:問2]変電所に設置される酸化亜鉛形避雷器に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

電力系統には雷撃や系統運用における過渡現象などにより異常電圧が発生することがあり,電気施設の絶縁保護を目的に,変電所等に避雷器が設置される。近年は,特に,保護特性の優れた,直列ギャップを使用しない酸化亜鉛\( \left( \mathrm {ZnO} \right) \)を主成分とした酸化亜鉛形避雷器(ギャップレス避雷器)が多く使用されている。変電所に設置される酸化亜鉛形避雷器(ギャップレス避雷器)について,次の問に答えよ。

(1) 変電所における避雷器の設置上の留意点及びその理由を\( \ 100 \ \)字程度以内で述べよ。

(2) 酸化亜鉛形避雷器(ギャップレス避雷器)の特徴を三つ挙げ,それによるメリットも含めてそれぞれ\( \ 50 \ \)字程度以内で述べよ。

(3) 酸化亜鉛形避雷器(ギャップレス避雷器)では,保護レベルと機器寿命の関係を定量的に表すのに,常時連続的に印加される電圧ストレスの大きさを示す課電率(通常,連続使用電圧/動作開始電圧)を用いる。そこで,課電率による保護レベル設定と機器寿命の関係について\( \ 80 \ \)字程度以内で述べよ。

【ワンポイント解説】

変電所におけるギャップレス避雷器の設置方法とその特徴に関する問題です。
(1)と(2)は標準的な内容となりますのでできれば正答しておきたい問題,(3)が電験のテキストではまず掲載されていない内容ですが,課電率(連続使用電圧/動作開始電圧)が与えられているので,その辺りから類推すれば部分点を取得できるかなと予想されます。

1.避雷器の電圧―電流特性
避雷器に扱われる炭化ケイ素(\( \ \mathrm {SiC} \ \))素子と酸化亜鉛(\( \ \mathrm {ZnO} \ \))素子の電圧―電流特性を図1に示します。
図1のように酸化亜鉛(\( \ \mathrm {ZnO} \ \))は一般的な抵抗と異なり電圧と電流が比例せず,非線形抵抗特性と呼ばれます。
炭化ケイ素(\( \ \mathrm {SiC} \ \))素子単体では通常運転時でも電流が流れてしまう反面,酸化亜鉛(\( \ \mathrm {ZnO} \ \))素子の場合通常電圧時では電流が流れないため,近年では酸化亜鉛(\( \ \mathrm {ZnO} \ \))素子が多く採用されています。

【解答】

(1)変電所における避雷器の設置上の留意点及びその理由
(ポイント)
・図2に示すように,避雷器は対象機器に近接して設置する方が,同じ地点で誘導雷等による過電圧が発生しても影響を受けにくくなり,反射等の影響も発生しにくくなるため望ましいです。
・避雷器と大地間の接地抵抗は避雷器の性能に影響を及ぼさないよう,できるだけ小さくすることが望ましいです。

(試験センター解答)
以下の避雷器の設置上の留意点及びその理由から一つ記載されていればよい。
・避雷器は線路引込口や極力被保護機器に近く設置する(約\( \ 50 \ \mathrm {m} \ \)以下)ことが望ましく,距離があまり遠くなると被保護機器の端子に加わる異常電圧の値は避雷器の制限電圧に比べて高くなり,これを設置した効果がなくなる。
・避雷器と大地間の接地線は極力接地抵抗(インピーダンス)を小さくし,高周波サージに対するインダクタンスを抑えることで,避雷器-大地間の電圧上昇により保護レベルに影響をおよぼさないようにする。

(2)酸化亜鉛形避雷器(ギャップレス避雷器)の特徴とメリットを三つ
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.避雷器の電圧―電流特性」の内容を参考に記載します。
・酸化亜鉛なので非線形特性に優れること,ギャップレスなのでスペース上有利であること,放電ギャップの放電電圧-時間特性や続流を遮断する仕組みを検討する必要がない,等が最も一般的な特徴となるかと思います。

(試験センター解答例)
以下の酸化亜鉛形避雷器の特徴とメリットから三つ記載されていればよい。
・直列ギャップがないため放電電圧-時間特性に関係する課題がなく,機器絶縁に対する保護レベルが向上する。
・微小電流から大電流サージ領域まで高い非直線抵抗特性を有することで過電圧を抑制することができる。
・素子の単位体積当たりの処理エネルギーが大きいので,従来に比べ寸法の小型化と構造の簡素化が実現できる。
・並列素子数を増加することにより,許容される吸収エネルギーの増加が図れ,サージに対する耐量が向上する。
・無続流のため,多重雷などに対する動作責務に余裕があり温度上昇が少なく,機器の長寿命化が期待できる。
・降雨等による汚損及び洗浄時の不均一電位分布などの問題がなく,局部アークの発生を抑制することができる。

(3)課電率による保護レベル設定と機器寿命の関係
(ポイント)
・課電率が大きい程連続使用電圧に対する避雷器の動作開始電圧は低くなるため,機器の保護レベルを低く設定することができます。
・通常運転状態でも酸化亜鉛素子には連続使用電圧が印加されているため,微小な漏れ電流が発生しています。

(試験センター解答例)
課電率を高くすることで,保護レベルを低く設定でき,絶縁設計の合理化が実現できるが,機器寿命が短くなるためこの経済バランスを考慮した仕様検討が必要となる。



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