Contents
【問題】
【難易度】★★★★★(難しい)
次の文章は,変電機器の内部異常を発見するのに有効な外部診断手法の一つである部分放電測定に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
絶縁異常を確実に探知する手法として,\( \ \fbox { (1) } \ \)に流れる放電電流を\( \ \fbox { (2) } \ \)により検出して部分放電の有無を判定する手法や,部分放電時の弾性波(圧力波)により\( \ \fbox { (3) } \ \)に生じる\( \ \fbox { (4) } \ \)を検出するセンサを取り付けたり,超音波マイクによって放電音を検出したりする方法,及びそれらの手法を併用することで,より高精度に部分放電と判定するなどの手法がある。
位置標定も目的とする場合は,これらの手法のセンサを複数セットし,検出した複数の信号の\( \ \fbox { (5) } \ \)とセンサの位置との関係により放電箇所を特定する方法がある。
〔問2の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 抵抗値変化 &(ロ)& 導体シールド &(ハ)& ブースター \\[ 5pt ]
&(ニ)& 減衰率 &(ホ)& 強度 &(ヘ)& 絶縁スペーサ \\[ 5pt ]
&(ト)& 高周波 \ \mathrm {CT} &(チ)& 母線 &(リ)& 音響信号 \\[ 5pt ]
&(ヌ)& 高調波フィルタ &(ル)& 温度変化 &(ヲ)& 接地線 \\[ 5pt ]
&(ワ)& タンク表面 &(カ)& 主回路 &(ヨ)& 時間差 \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
部分放電測定による変電機器の内部異常診断に関する難問です。
電験参考書にはほぼ記載がないので,受験生にはかなり厳しい問題であったかと思います。
勉強効率を考えるとあまりオススメはできませんが,専門書では部分放電測定について説明がされているものもありますので,興味のある方は勉強してみて下さい。
1.変電機器の絶縁異常診断技術
絶縁異常の際には,その箇所において部分放電が発生するため,それを検出する技術が使用されます。
①電気的方法
部分放電に伴い発生する,電磁波,電圧,電流を検出します。
電磁波検出には,外部ノイズの影響の少ない\( \ \mathrm {UHF} \ \)帯域の電磁波を検出する内部電極,絶縁スペーサの埋め込み電極,スペーサの外側に取り付けるサーチコイル,等のセンサによる方法があります。
電圧検出には,箔状の金属電極をタンク外側に取り付けて検出する方法,電流検出には,接地線\( \ \mathrm {GIS} \ \)の接地線に\( \mathrm {CT} \ \)を取り付ける方法等があります。
②機械的手法
部分放電により発生する圧力波や\( \ \mathrm {GIS} \ \)内異物の静電気力による振動や超音波をタンク表面につけたセンサで検出します。
振動検出には振動加速度センサ,超音波検出には超音波\( \ \left( \mathrm {AE}\right) \ \)センサを使用します。
③化学的手法
部分放電により発生する分解ガスを検出します。
ガスチェッカ(呈色反応試薬)を用いて分解ガスの有無を調べる方法,ガスクロマトグラフィーでガスの種類や濃度を調べる方法,等があります。
【解答】
(1)解答:ヲ
題意より解答候補は,(ヘ)絶縁スペーサ,(チ)母線,(ヲ)接地線,(ワ)タンク表面,(カ)主回路,等になると思います。
ワンポイント解説「1.変電機器の絶縁異常診断技術」の通り,接地線に流れる放電電流を測定し部分放電を検出する方法があります。
(2)解答:ト
題意より解答候補は,(ハ)ブースター,(ト)高周波\( \ \mathrm {CT} \ \),(ヌ)高調波フィルタ,等になると思います。
ワンポイント解説「1.変電機器の絶縁異常診断技術」の通り,接地線に流れる放電電流を検出するのは高周波\( \ \mathrm {CT} \ \)となります。
(3)解答:ワ
題意より解答候補は,(ロ)導体シールド,(ヘ)絶縁スペーサ,(ヌ)高調波フィルタ,(ヲ)接地線,(ワ)タンク表面,等になると思います。
ワンポイント解説「1.変電機器の絶縁異常診断技術」の通り,部分放電時の弾性波(圧力波)をタンク表面にて検出します。
(4)解答:リ
題意より解答候補は,(イ)抵抗値変化,(ニ)減衰率,(リ)音響信号,(ル)温度変化,等になると思います。
ワンポイント解説「1.変電機器の絶縁異常診断技術」の通り,部分放電時の弾性波(圧力波)によりタンク表面に生じる音響信号を検出するセンサを用いた手法があります。
(5)解答:ヨ
題意より解答候補は,(ニ)減衰率,(ホ)強度,(ヨ)時間差,になると思います。
部分放電の発生のみでなく,場所も特定したい場合には,複数のセンサを用いて,部分放電発生から検出までの時間差を計測してそれぞれの場所からの距離を基に場所を特定します。