《電力》〈新エネルギー発電〉[R06:問6]風力発電の基礎と系統連系方式に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,風力発電の基礎と系統連系方式に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

風速を\( \ V \ \mathrm {[m / s]} \ \),風車の受風面積を\( \ A \ \mathrm {[m^{2}]} \ \),空気密度を\( \ \rho \ \mathrm {[kg / m^{3}]} \ \),出力係数を\( \ C_{\mathrm {p}} \ \)とすると,風車出力は\( \ \fbox {  (1)  } \ \mathrm {[W]} \ \)と表される。ここで,出力係数は主として\( \ \fbox {  (2)  } \ \)とピッチ角に依存して定まる。中大型風車は,無風状態から風速が上昇しておおよそ\( \ 2~5 \ \mathrm {m / s} \ \)に達すると発電を開始し,\( \ \fbox {  (3)  } \ \)で定格出力に到達する。さらに風速が増加する場合には,ピッチ角制御により定格出力を維持する。

誘導発電機を直接系統に接続する連系方式の場合は,始動時に\( \ \fbox {  (4)  } \ \)の発生が問題となる。しかし,同期発電機を用いた\( \ \fbox {  (5)  } \ \)による連系の場合は,\( \ \fbox {  (4)  } \ \)の発生は問題とはならない。

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 11~16 \ \mathrm {m / s}     &(ロ)& \mathrm {AC} \ リンク     &(ハ)& \mathrm {DFIG} \\[ 5pt ] &(ニ)& 6~8 \ \mathrm {m / s}     &(ホ)& 短絡比       &(ヘ)& 周速比 \\[ 5pt ] &(ト)& \mathrm {DC} \ リンク     &(チ)& 7~11 \ \mathrm {m / s}     &(リ)& 高調波 \\[ 5pt ] &(ヌ)& \frac {1}{2}C_{\mathrm {p}}A^{2}\rho V^{2}       &(ル)& \frac {1}{2}C_{\mathrm {p}}A\rho V^{2}     &(ヲ)& 周波数変動 \\[ 5pt ] &(ワ)& 端子電圧     &(カ)& 突入電流     &(ヨ)& \frac {1}{2}C_{\mathrm {p}}A\rho V^{3} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

風力発電の出力と制御方法,連系方式に関する問題です。
(1)の空欄以外は\( \ 3 \ \ \)種の問題では見かけない内容であるかと思いますが,風力発電の勉強をしていると結構出てくる内容なので,覚えておくようにして下さい。

1.風力発電所の出力
図1に示すように,風車の受風面積を\( \ A \ \mathrm {[m^{2}]} \ \),風速を\( \ v \ \mathrm {[m/s]} \ \)とすると,単位時間当たりに通過する風の体積\( \ V \ \mathrm {[m^{3}/s]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
V &=&Av \ \mathrm {[m^{3}/s]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。したがって,単位時間当たりに通過する風の質量\( \ m \ \mathrm {[kg/s]} \ \)は,空気の密度を\( \ \rho \ \mathrm {[kg/m^{3}]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
m &=&\rho V \\[ 5pt ] &=&\rho Av \ \mathrm {[kg/s]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。物体の運動エネルギーは\(\displaystyle E=\frac {1}{2}mv^{2}\)であるので,単位時間当たりの風のエネルギー(≒出力)\( \ P \ \mathrm {[W]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
P &=&\frac {1}{2}mv^{2} \\[ 5pt ] &=&\frac {1}{2}\rho Av^{3} \ \mathrm {[W]}\\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められます。

2.風力発電の運転制御
一般的な風力発電の風速変化と出力の関係を図2に示します。
風速\( \ 2~5 \ \mathrm {m / s} \ \)で発電を開始するカットイン風速となり,その後風速とともに出力を増加させる部分負荷運転となります。定格出力の大きさにより異なりますが,風速\( \ 11~16 \ \mathrm {m / s} \ \)で定格出力に到達し,その後はブレードの角度でロータの回転速度を調整するピッチ制御により,定格出力を維持し,風速\( \ 25 \ \mathrm {m / s} \ \)程度のカットアウト風速に到達すると安全のためにブレードの向きを風と並行の向きにし発電を停止します。

3.風力発電に使用される発電機の種類
①誘導発電機
構造が簡単で,安価であるため,小形の風力発電によく使用されています。
しかし,励磁電流を系統から取るため,端子電圧を単体で確立することができず,系統に接続しないと発電することができません。また,発電機自身が無効電力の調整機能を持たず風速が変化すると有効電力とともに無効電力も変化してしまい,電圧変動が発生するといった問題があります。
さらに,系統に連系する際に突入電流により瞬時電圧低下を発生する恐れがあるため,ソフトスタート装置等の対応が必要となります。
近年では,大形風力発電所において二重給電誘導発電機という,可変速性能を持つ発電機が使用されます。これは誘導発電機による系統連系と交直変換器を用いた系統連系を併用する技術で出力や力率をコントロールしながら運転することができ,誘導発電機と同期発電機の長所を併せ持ったような方式となります。


出典:株式会社インプレス HP
URL:https://sgforum.impress.co.jp/article/1370

②同期発電機
同期機なので界磁電流により端子電圧を確立でき,遅れから進みまで無効電力を調整して力率を調整することが可能です。また,無効電力を調整できるので風速変化により有効電力が変化しても,無効電力を一定に保つことができ,電圧変動の問題が発生しません。したがって,系統に並列しない自立運転も可能となります。
ただし,誘導発電機に比べ構造が複雑であり,価格も高くなります。
系統とそのまま並列すると回転数が系統の周波数に依存してしまうので,系統に並列する場合は一般に交直変換器を用いて一旦直流に変換したのち再度交流に変換する直流リンク方式(\( \ \mathrm {DC} \ \)リンク方式)という方法がとられます。

【解答】

(1)解答:ヨ
題意より解答候補は,(ヌ)\( \ \displaystyle \frac {1}{2}C_{\mathrm {p}}A^{2}\rho V^{2} \ \),(ル)\( \ \displaystyle \frac {1}{2}C_{\mathrm {p}}A\rho V^{2} \ \),(ヨ)\( \ \displaystyle \frac {1}{2}C_{\mathrm {p}}A\rho V^{3} \ \),になると思います。
ワンポイント解説「1.風力発電所の出力」の通り,風速を\( \ V \ \mathrm {[m / s]} \ \),風車の受風面積を\( \ A \ \mathrm {[m^{2}]} \ \),空気密度を\( \ \rho \ \mathrm {[kg / m^{3}]} \ \),出力係数を\( \ C_{\mathrm {p}} \ \)としたときの風車出力は\( \ \displaystyle \frac {1}{2}C_{\mathrm {p}}A\rho V^{3} \ \mathrm {[W]} \ \)となります。

(2)解答:ヘ
題意より解答候補は,(ホ)短絡比,(ヘ)周速比,(ワ)端子電圧,になると思います。
このうち,出力係数に影響を与えるのは風速とブレード先端部の速度の比である周速比となります。風力発電では出力に直結する重要な内容ですが,電験ではあまり出てきたことがない用語ですので,ここで覚えておきましょう。

(3)解答:イ
題意より解答候補は,(イ)\( \ 11~16 \ \mathrm {m / s} \ \),(ニ)\( \ 6~8 \ \mathrm {m / s} \ \),(チ)\( \ 7~11 \ \mathrm {m / s} \ \),になると思います。
ワンポイント解説「2.風力発電の運転制御」の通り,中大型風車は,無風状態から風速が上昇しておおよそ\( \ 2~5 \ \mathrm {m / s} \ \)に達すると発電を開始し,\( \ 11~16 \ \mathrm {m / s} \ \)で定格出力に到達します。

(4)解答:カ
題意より解答候補は,(リ)高調波,(ヲ)周波数変動,(カ)突入電流,になると思います。
ワンポイント解説「3.風力発電に使用される発電機の種類」の通り,誘導発電機を直接系統に接続する連系方式の場合は,始動時に突入電流の発生が問題となることがあります。

(5)解答:ト
題意より解答候補は,(ロ)\( \ \mathrm {AC} \ \)リンク ,(ハ)\( \ \mathrm {DFIG} \ \),(ト)\( \ \mathrm {DC} \ \)リンク,になると思います。
ワンポイント解説「3.風力発電に使用される発電機の種類」の通り,同期発電機において突入電流の発生が問題とならない方式は\( \ \mathrm {DC} \ \)リンク方式となります。\( \ \mathrm {DFIG} \ \)は二重給電誘導発電機のことをいいます。



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