《電力》〈水力〉[R07:問1]水力発電所の水車のうちカプラン水車に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,カプラン水車に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

カプラン水車は\( \ \fbox {  (1)  } \ \)に分類され,流水が\( \ \fbox {  (2)  } \ \)に通過する水車である。カプラン水車は比較的低落差・大容量の水車に適している。出力変化に応じて\( \ \fbox {  (3)  } \ \)の開度を自動的に変えることができるので,部分負荷での\( \ \fbox {  (4)  } \ \)が小さい。

円筒水車(チューブラ水車やバルブ水車とも呼ばれる)は\( \ 20 \ \mathrm {m} \ \)以下の超低落差用として開発された水車で,主にカプラン水車が用いられる。水車入口から吸出管まで同一直線上に配置し,更に発電機も水車に直結した構造となっており,円筒状のケーシングで構成される。発電機を小型化するために,水車と発電機の間に\( \ \fbox {  (5)  } \ \)が設けられることが多い。

〔問1の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& ガイドベーン      &(ロ)& 衝動水車     &(ハ)& 半径方向 \\[ 5pt ] &(ニ)& 騒音     &(ホ)& 軸方向     &(ヘ)& 斜流水車 \\[ 5pt ] &(ト)& 入口弁     &(チ)& 振動     &(リ)& 斜め方向 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 効率低下     &(ル)& 増速用歯車       &(ヲ)& ランナベーン \\[ 5pt ] &(ワ)& 減速用歯車    &(カ)& 反動水車     &(ヨ)& フライホイール \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

水力発電所の水車のうちカプラン水車に関する問題です。
解答群の構成から斜流水車に誘導し,(1)と(2)を連続して間違えさせようとする印象があるため,しっかりと分類できているかが問われています。
\( \ 2 \ \)種では各水車の内容について個別に出題されることも多いですが,全体としてどういう違いがあり,どのような特性を持つか理解しておくようにしましょう。

1.衝動水車
水のもつ位置エネルギーを運動エネルギーに変え,流水をランナに作用させる水車を衝動水車と言います。
代表的なものにペルトン水車があり,図1に示すように主にノズル,ニードル,ランナ等から構成され,ノズルから水を噴射し,ランナを回転させます。それぞれの役割は以下の通りです。

ノズル
ランナに向けて水を噴射します。横軸型では\( \ 1~2 \ \)個,立軸型ではさらに多くのノズルで構成されることがあります。出力に応じて使用数を変更することでニードルでの絞り損失を低減させ,効率の低下を抑えることが可能です。

ニードル
ノズルから噴射する水量を調整する弁です。

ランナ
水を受けるバケットとバケットを取り付けるディスクから構成され,噴射された水の勢いを回転力に変換します。

デフレクタ
水車の負荷が急激に減少しランナにあたる水量を減少させるときに,水圧管内圧力の異常上昇を防ぐために挿入してランナに当たる噴流をそらせます。

2.反動水車
水のもつ位置エネルギー(位置水頭)を圧力エネルギー(圧力水頭)に変換し,ランナに作用させる水車を反動水車と言います。
代表的なものにフランシス水車があり,入口にあるガイドベーンとランナの羽根の開度で出力を調整します。他にもランナを通過する流水の方向が斜めのものを斜流水車(ランナを可動羽根としたものをデリア水車),流水がランナの軸方向に通過するものをプロペラ水車(ランナを可動羽根としたものをカプラン水車)があります。高落差のものからフランシス水車→斜流水車→プロペラ水車となります。
フランシス水車はケーシング,ガイドベーン,ランナ,吸出し管等で構成され,それぞれの役割は以下の通りです。

ケーシング
渦巻形の管で水をガイドベーンに流し込むための管です

ガイドベーン
ケーシングとランナの間に設け,ランナに流入する水量を調整します。

ランナ
ケーシングから流入する水の圧力エネルギーを反動力により回転エネルギーにします。

吸出し管
ランナ出口部に設けるラッパ状の管で,ランナ出口から放水面までの速度エネルギーを位置エネルギーとして回収します。


出典:みんなが欲しかった!電験三種電力の実践問題集 P.7

3.チューブラ水車
チューブラ水車とは円筒形の水車のことをいい,下図のような水車はその形状から\( \ \mathrm {S} \ \)形チューブラ水車と呼ばれ,他にもバルブ水車等があります。
可動式のランナベーンで直並列接続も可能であることから,小水量から比較的大きな数\( \ \mathrm {MW} \ \)級の水力発電まで運転可能となります。
発電機を小型化するため,もしくは水車の回転速度が低い場合,水車と発電機の間に増速機を設けます。


出典:国土交通省 プレスリリース H29.7.26

【解答】

(1)解答:カ
題意より解答候補は,(ロ)衝動水車,(ヘ)斜流水車,(カ)反動水車,になると思います。
ワンポイント解説「2.反動水車」の通り,カプラン水車は反動水車のうちプロペラ水車に分類されます。

(2)解答:ホ
題意より解答候補は,(ハ)半径方向,(ホ)軸方向,(リ)斜め方向,になると思います。
ワンポイント解説「2.反動水車」の通り,カプラン水車は流水が軸方向に通過する水車です。

(3)解答:ヲ
題意より解答候補は,(イ)ガイドベーン,(ト)入口弁,(ヲ)ランナベーン,になると思います。
ワンポイント解説「2.反動水車」の通り,カプラン水車はプロペラ水車のうちランナベーンの開度を調整することが出来る水車です。

(4)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ニ)騒音,(チ)振動,(ヌ)効率低下,になると思います。
ワンポイント解説「2.反動水車」の通り,カプラン水車は部分負荷での効率低下が小さいという特徴があります。

(5)解答:ル
題意より解答候補は,(ル)増速用歯車,(ワ)減速用歯車,(ヨ)フライホイール,になると思います。
ワンポイント解説「3.チューブラ水車」の通り,円筒水車では,発電機を小型化するために,水車と発電機の間に増速用歯車が設けられることが多いです。



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