《電力》〈変電〉[R03:問4]電力系統の中性点接地による異常電圧抑制に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,電力系統の中性点接地による異常電圧抑制に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

電力系統に\( \ 1 \ \)線地絡故障のような不平衡故障が起こると変圧器や回転機の三相巻線の\( \ \fbox {  (1)  } \ \)の中性点接地を経由して大地を帰路とする地絡電流が流れる。中性点と大地との接地インピーダンスを小さくすると,地絡電流を検出する保護リレーの動作が確実となり,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)の電位上昇を抑えることができて,機器の絶縁レベルを軽減できる。その反面,近辺での通信線路に発生する\( \ \fbox {  (3)  } \ \)が大きくなる。

一方で,接地インピーダンスを大きくすると,\( \ 1 \ \)線地絡故障の場合には,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)の対地電圧は相電圧の\( \ \fbox {  (4)  } \ \)倍まで上昇するとともに,長距離線路では対地静電容量が大きいために\( \ \fbox {  (5)  } \ \)が発生して機器の絶縁を脅かす過渡的異常電圧が生じることがある。

〔問4の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& \sqrt {2}     &(ロ)& 系統脱調     &(ハ)& 2 \\[ 5pt ] &(ニ)& 電磁誘導電圧     &(ホ)& 間欠アーク地絡      &(ヘ)& 健全相 \\[ 5pt ] &(ト)& 第三調波電圧     &(チ)& 進み相     &(リ)& \Delta \ 結線 \\[ 5pt ] &(ヌ)& \mathrm {Y} \ 結線     &(ル)& 故障相     &(ヲ)& \sqrt {3} \\[ 5pt ] &(ワ)& フェランチ効果      &(カ)& 雷電圧     &(ヨ)& \mathrm {V} \ 結線 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

\( \ 1 \ \)線地絡故障発生時を中心とした異常電圧抑制に関する問題です。
各中性点接地方式の特徴は\( \ 3 \ \)種の頃から出題されていた内容かと思いますので,確実に得点しておきたいところです。

1.中性点接地方式の種類と特徴
各中性点接地方式の特徴は下表の通りです。
高電圧では線路や機器絶縁にコストがかかるので直接接地を採用し,合わせて高速遮断や高速再閉路が採用されている,低電圧では一線地絡時の健全相の電圧上昇がそれほど問題とならないため中性点接地を不要とし,\( \ \Delta -\Delta \ \)結線を採用できるようにしている等,丸暗記ではなくなぜそうするのかも理解しておくと良いと思います。
\[
\begin{array}{|c|c|c|c|c|}
\hline
&  非接地  &  抵抗接地  &  消弧リアクトル接地  &  直接接地  \\
\hline
地絡電流 & 小 & 中 & 最小 & 最大 \\
\hline
健全相電圧上昇 & 大 & 中 & 大 & 小 \\
\hline
リレー検出 & 難 & 容易 & 難 & 確実 \\
\hline
コスト & 0 & 中 & 大 & 小 \\
\hline
電圧階級 & \ ~33 \ \mathrm {kV} \ & \ 22~154 \ \mathrm {kV} \ & \ 66~77 \ \mathrm {kV} \ & \ 187 \ \mathrm {kV}~ \ \\
\hline
\end{array}
\]

【解答】

(1)解答:ヌ
題意より解答候補は,(リ)\( \ \mathrm {\Delta } \ \)結線,(ヌ)\( \ \mathrm {Y} \ \)結線,(ヨ)\( \ \mathrm {V} \ \)結線,になると思います。
中性点は\( \ \mathrm {Y} \ \)結線の中心点のことをいい,地絡電流は中性点接地を経由して流れます。

(2)解答:ヘ
題意より解答候補は,(ヘ)健全相,(チ)進み相,(ル)故障相,になると思います。
\( \ 1 \ \)線完全地絡が発生すると故障相の電圧が零となるため,健全相の対地電圧が上昇します。ワンポイント解説「1.中性点接地方式の種類と特徴」の通り,直接接地等の接地インピーダンスが小さい接地方式では健全相の電位上昇が抑えることが可能となります。

(3)解答:ニ
題意より解答候補は,(ニ)電磁誘導電圧,(ト)第三調波電圧,(カ)雷電圧,になると思います。
接地インピーダンスが小さいとき,地絡電流が大きくなるため通信線路に発生する電磁誘導電圧が大きくなり,電磁誘導障害が発生する可能性が高くなります。

(4)解答:ヲ
題意より解答候補は,(イ)\( \ \sqrt {2} \ \),(ハ)\( \ 2 \ \),(ヲ)\( \ \sqrt {3} \ \),になると思います。
\( \ 1 \ \)線地絡発生時は故障相の電圧が零となるため,理論上健全相の対地電圧が故障相との電圧差,すなわち線間電圧まで上昇することになります。したがって,\( \ \sqrt {3} \ \)倍まで上昇する可能性があります。

(5)解答:ホ
題意より解答候補は,(ロ)系統脱調,(ホ)間欠アーク地絡,(ワ)フェランチ効果,になると思います。
\( \ 1 \ \)線地絡故障時等の過渡的異常電圧で発生するのは間欠アーク地絡となります。フェランチ効果も長距離線路の対地静電容量が大きい場合に発生しやすいですが,こちらは夜間休祭日等の軽負荷時に発生する現象のことをいいます。



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