《電力》〈火力〉[R07:問5]汽力発電や原子力発電の作動流体として使われる蒸気に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,汽力発電や原子力発電の作動流体として使われる蒸気に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

蒸気の状態変化を表すものとして,絶対温度を縦軸に,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)を横軸に取った\( \ T-s \ \)線図がよく用いられる。\( \ T-s \ \)線図には,面積が\( \ \fbox {  (2)  } \ \)を表すという特長がある。

圧力を一定にして水を熱すると水温が上がって沸点に達する(軌跡\( \ 1→2 \ \))。

さらに熱しても水温は上昇せず,加えた熱量は水を蒸発させるために消費される状態(\( \ 2→3 \ \))になるが,この熱量のことを\( \ \fbox {  (3)  } \ \)という。

水が全て蒸発した後,さらに加熱を続けると,一定の圧力下では加えた熱量に応じて温度が上昇する(\( \ 3→4 \ \))。この状態の蒸気を\( \ \fbox {  (4)  } \ \)という。

また,\( \ T-s \ \)線図の\( \ K \ \)点のことを\( \ \fbox {  (5)  } \ \)という。

〔問5の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& エクセルギー       &(ロ)& 過熱蒸気     &(ハ)& 内部エネルギー \\[ 5pt ] &(ニ)& 顕熱     &(ホ)& 体積     &(ヘ)& 三重点 \\[ 5pt ] &(ト)& 湿り蒸気       &(チ)& 分界点        &(リ)& エントロピー \\[ 5pt ] &(ヌ)& 流量     &(ル)& 飽和蒸気     &(ヲ)& 潜熱 \\[ 5pt ] &(ワ)& 生成熱    &(カ)& 臨界点     &(ヨ)& 熱量 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

蒸気のエネルギー線図に関する問題です。
本問の理解をしっかりとするためには,熱力学の勉強が必要ですが,電験対策としてそこまで学習するのは非効率なので,ある程度暗記しておく方が良いです。
汽力発電の基本サイクルを覚え,基本サイクルと照らし合わせて理解すると\( \ P-V \ \)線図や\( \ T-s \ \)線図がなんとなく理解でき,多くの問題が解けるようになるかと思います。

1.汽力発電所の基本サイクル
図1に汽力発電所の基本サイクルであるランキンサイクルのフロー,図2及び図3にランキンサイクルの\( \ P-V \ \)線図及び\( \ T-s \ \)線図を示します。

図1に示すように低温・低圧の給水(図の\( \ \mathrm {A} \ \))は給水ポンプで昇圧され,低温・高圧の水(図の\( \ \mathrm {B} \ \))となり,ボイラに供給されます。
ボイラでは燃料の燃焼により加熱され高温・高圧の蒸気(図の\( \ \mathrm {C} \ \))となり,タービンへ送られます。
タービンでは,蒸気の持つ運動エネルギーと圧力エネルギーによりタービンを回転させ圧力と温度を失い(図の\( \ \mathrm {D} \ \)),復水器により蒸気から水へ凝縮され,再び給水として給水ポンプへ送られます。
その圧力と体積の関係を示したのが図2の\( \ P-V \ \)線図,温度とエントロピーの関係を示したのが図3の\( \ T-s \ \)線図となります。
\( \ \mathrm {A}→\mathrm {B} \ \)が,給水ポンプによる断熱圧縮の過程であり,体積は大きく変化しませんが圧力が上昇します。また,圧力上昇に伴い温度も上昇します。
\( \ \mathrm {B}→\mathrm {C} \ \)が,ボイラによる等圧受熱の過程であり,水が液体から気体に変わることにより体積が膨張します。受熱により水(及び蒸気)の温度が上昇します。
\( \ \mathrm {C}→\mathrm {D} \ \)が,タービンによる断熱膨張の過程であり,蒸気の持つエネルギーをタービンを回転させるエネルギーにします。圧力と温度が低下し,体積は上昇します。
\( \ \mathrm {D}→\mathrm {A} \ \)が,復水器による等圧放熱の過程であり,蒸気を水に戻します。気体から液体になる凝縮の過程で体積が小さくなります。



【解答】

(1)解答:リ
題意より解答候補は,(イ)エクセルギー,(ハ)内部エネルギー,(ホ)体積,(リ)エントロピー,(ヌ)流量,(ヨ)熱量,等になると思います。
ワンポイント解説「1.汽力発電所の基本サイクル」の通り,\( \ T-s \ \)線図の横軸\( \ s \ \)はエントロピーとなります。

(2)解答:ヨ
題意より解答候補は,(イ)エクセルギー,(ハ)内部エネルギー,(ホ)体積,(リ)エントロピー,(ヌ)流量,(ヨ)熱量,等になると思います。
縦軸の絶対温度\( \ T \ \)の単位は\( \ \mathrm {[K]} \ \),横軸のエントロピー\( \ s \ \)の単位は\( \ \mathrm {[J / K]} \ \)であり,その積である面積は熱量\( \ \mathrm {[J]} \ \)となります。

(3)解答:ヲ
題意より解答候補は,(ニ)顕熱,(ヲ)潜熱,(ワ)生成熱,になると思います。
\( \ 2→3 \ \)の過程のように温度が変化せず,水を蒸発させるため使われる熱量のことを潜熱といいます。一方,\( \ 1→2 \ \)及び\( \ 3→4 \ \)のように水の温度上昇のために使われる熱量を顕熱といいます。

(4)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)過熱蒸気,(ト)湿り蒸気,(ル)飽和蒸気,になると思います。
\( \ 3→4 \ \)の過程は水が完全に蒸発した飽和蒸気から更に加熱された状態なので,過熱蒸気と呼ばれます。\( \ 2→3 \ \)の過程の水分を含む状態の蒸気を湿り蒸気といいます。

(5)解答:カ
題意より解答候補は,(ヘ)三重点,(チ)分界点,(カ)臨界点,になると思います。
\( \ T-s \ \)線図の\( \ K \ \)点のことを臨界点といい,この点以上になると水と蒸気の密度差がなくなり,連続的に変化します。水の臨界圧力は約\( \ 22.06 \ \mathrm {MPa} \ \),臨界温度は約\( \ 374.1 \ \mathrm {{}^{\circ} C} \ \)です。



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