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【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
次の文章は,変流器に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる語句又は式を解答群の中から選び,その記号をマークシー トに記入しなさい。
変流器は,主回路に流れる交流の大電流を,測定しやすい大きさの電流に変換する場合や主回路と測定回路を絶縁する場合などに使われる変圧器である。変流器の二次側には電流計などが接続されるが,これらの負荷は\( \ \fbox { (1) } \ \)と呼ばれる。
変流器の一次巻線の巻数は\( \ 1 \ \)~数回程度で,一次電流が定格電流のとき二次電流が\( \ 1 \ \mathrm {[A]} \ \)又は\( \ 5 \ \mathrm {[A]} \ \)となるように作るのが標準である。等価回路としては通常の変圧器と同じであるから,\( \ \fbox { (2) } \ \)が十分大きければ,一次電流\( \ I_{1} \ \)と二次電流\( \ I_{2} \ \)の比はほぼ正確に巻数に反比例する。\( \ \fbox { (2) } \ \)の大きさ及び\( \ \fbox { (1) } \ \)のインピーダンスの大きさと位相角により\( \ I_{1} \ \)と\( \ I_{2} \ \)の比が変化し,両者の間に位相差が生じる。定格の一次電流及び二次電流を\( \ I_{1n} \ \),\( \ I_{2n} \ \)とするとき
\[
\begin{eqnarray}
\varepsilon &=&\frac {\displaystyle \frac {I_{1n}}{I_{2n}}-\frac {I_{1}}{I_{2}}}{ \ \fbox { (3) } \ }\times 100 \ \mathrm {[%]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
を\( \ \fbox { (4) } \ \)誤差といい,変流比に対する誤差を示す。\( \ I_{1} \ \)と\( \ I_{2} \ \)との間の位相差は,電力測定の場合に誤差の原因となる。変流器の誤差を少なくするには\( \ \fbox { (5) } \ \)の鉄心を使用し,励磁電流を小さくすることである。一次電流の大きさは一次側回路の条件で決まり,一次電流の起磁力を打ち消すように二次電流が流れるので,二次側を開くと一次電流が励磁電流となって,二次端子には極めて高い電圧が発生して危険である。
〔問2の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 比透磁率 &(ロ)& 負 担 &(ハ)& \frac {I_{2n}}{I_{1n}} \\[ 5pt ]
&(ニ)& 許 容 &(ホ)& 励磁インピーダンス &(ヘ)& 高誘電率 \\[ 5pt ]
&(ト)& 抵 抗 &(チ)& 比 &(リ)& リアクタンス \\[ 5pt ]
&(ヌ)& 高透磁率 &(ル)& 打切り &(ヲ)& \frac {I_{1n}}{I_{2n}} \\[ 5pt ]
&(ワ)& 励磁アドミタンス &(カ)& \frac {I_{1}}{I_{2}} &(ヨ)& 漏れインピーダンス \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
変流器の特徴や誤差に関する問題です。
\( \ 3 \ \)種では計器用変圧器と変流器の違いや注意点等の出題が多かったと思いますが,本問ではその中身や誤差等もう少し奥深い内容が出題されています。
変圧器の特徴を理解していれば,それほど難解ではありませんので,しっかりと本問で理解しておくようにしましょう。
1.計器用変成器
計器用変成器はそのままでは測定困難な高電圧や大電流を測定可能な大きさの電圧や電流に変成して測定機器を接続する機器です。計器用変圧器と変流器があります。
①計器用変圧器\( \ \left( \mathrm {VT} \right) \ \)
図1のように一次(主回路)側の高電圧を二次(計器)側の低電圧に変換する機器となります。
一次二次の巻数比と変圧比の関係は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {N_{1}}{N_{2}}&=&\frac {V_{1}}{V_{2}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となります。
計器用変圧器\( \ \mathrm {VT} \ \)の二次側を短絡すると,二次側に電圧を発生させるため過大な電流が流れ,機器の焼損や波及事故が発生してしまう可能性があるので,二次側は絶対に短絡してはいけません。

②変流器\( \ \left( \mathrm {CT} \right) \ \)
図2のように一次(主回路)側の大電流を二次(計器)側の測定電流に変換する機器となります。
一次二次の巻数比と変流比の関係は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {N_{1}}{N_{2}}&=&\frac {I_{2}}{I_{1}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となります。
変流器\( \ \mathrm {CT} \ \)の二次側を開放すると測定電流が全て励磁電流となるので,鉄心の磁束密度が著しく大きくなり,焼損するおそれがあります。したがって,二次側は絶対に開放してはいけません。

2.変流器の等価回路
変流器の二次側換算等価回路は図3のようになります。ただし,\( \ {\dot I}_{1} \ \mathrm {[A]} \ \)は一次電流,\( \ {\dot I}_{2} \ \mathrm {[A]} \ \)は二次電流,\( \ {\dot I}_{0} \ \mathrm {[A]} \ \)は励磁電流,\( \ r_{2} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)は二次巻線抵抗,\( \ x_{2} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)は二次漏れリアクタンス,\( \ {\dot Z}_{0} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)は励磁インピーダンス,\( \ {\dot Z}_{\mathrm {b}} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)は負担,\( \ K_{\mathrm {n}} \ \)は変流比です。
変圧器の等価回路とほぼ同じなので,新たに暗記する必要はありませんが,変圧器が巻数比(変圧比)を一般に使用するのに対し変流器は変流比を使用しているところ,二次側に接続する計器や継電器を一般的な負荷と区別するため負担と呼ぶところ,等が異なります。

3.計器用変成器の比誤差,比補正
計器用変成器において,公称の変圧比もしくは変流比\( \ K_{\mathrm {n}} \ \)が真の変圧比もしくは変流比\( \ K \ \)に対してどれだけ差異があるかの割合を比誤差\( \ \varepsilon \ \)といい,
\[
\begin{eqnarray}
\varepsilon &=&\frac {K_{\mathrm {n}}-K}{K}\times 100 \ \mathrm {[%]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
で求められます。また,真の変圧比もしくは変流比\( \ K \ \)にするために補正すべき割合を比補正\( \ \alpha \ \)といい,
\[
\begin{eqnarray}
\alpha &=&\frac {K-K_{\mathrm {n}}}{K_{\mathrm {n}}}\times 100 \ \mathrm {[%]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
で求められます。
【解答】
(1)解答:ロ
題意より,解答候補は(ロ)負担,(ニ)許容,(ト)抵抗,(リ)リアクタンス,等になると思います。
ワンポイント解説「2.変流器の等価回路」の通り,変流器の二次側に接続される電流計などの負荷は負担と呼ばれます。
(2)解答:ホ
題意より,解答候補は(ホ)励磁インピーダンス,(ワ)励磁アドミタンス,(ヨ)漏れインピーダンス,等になると思います。
ワンポイント解説「2.変流器の等価回路」の通り,励磁インピーダンスが大きければ,励磁電流が十分に小さくなり一次電流\( \ I_{1} \ \)と二次電流\( \ I_{2} \ \)の比である変流比はほぼ正確に巻数に反比例します。
(3)解答:カ
題意より,解答候補は(ハ)\( \ \displaystyle \frac {I_{2n}}{I_{1n}} \ \),(ヲ)\( \ \displaystyle \frac {I_{1n}}{I_{2n}} \ \),(カ)\( \ \displaystyle \frac {I_{1}}{I_{2}} \ \),になると思います。
ワンポイント解説「3.計器用変成器の比誤差,比補正」の通り,変流比に対する誤差は,
\[
\begin{eqnarray}
\varepsilon &=&\frac {\displaystyle \frac {I_{1n}}{I_{2n}}-\frac {I_{1}}{I_{2}}}{ \displaystyle \frac {I_{1}}{I_{2}}}\times 100 \ \mathrm {[%]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
で求められます。
(4)解答:チ
題意より,解答候補は(イ)比透磁率,(チ)比,(ル)打切り,になると思います。
ワンポイント解説「3.計器用変成器の比誤差,比補正」の通り,変流比に対する誤差を比誤差といいます。
(5)解答:ヌ
題意より,解答候補は(ヘ)高誘電率,(ヌ)高透磁率,等になると思います。
ワンポイント解説「2.変流器の等価回路」の通り,励磁電流を小さくすることで比誤差は小さくなりますが,高透磁率(=磁束を通しやすい)のものほど小さい励磁電流で同じ大きさの二次誘導起電力を誘起することができるので,比誤差が小さくなります。