《機械》〈回転機〉[H27:問5]円筒形同期発電機の誘導起電力に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,円筒形同期発電機の誘導起電力に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

円筒形同期発電機は,電機子巻線の各コイル辺に誘導される起電力の波形がギャップの磁束密度の分布と相似であるため,ギャップの磁束密度分布がなるべく正弦波形に近くなるように回転子構造上の工夫をしている。しかし,ギャップの磁束密度の分布はほぼ\( \ \fbox {  (1)  } \ \)に近くなり,起電力の波形もひずみ波になりやすい。そこで電機子巻線を分布巻及び短節巻にすることによって,電機子巻線の誘導起電力を正弦波形に近づけている。

毎極毎相のスロットの数が1の集中巻・全節巻では,毎極毎相の起電力は,そのスロットの各コイルの起電力の\( \ \fbox {  (2)  } \ \)となる。

分布巻の場合は,いくつかのスロットにコイルが分布して巻かれているため,隣り合ったスロットのコイルの起電力は位相が異なり,毎極毎相の起電力は,それらのコイルの起電力のフェーザ図上の\( \ \fbox {  (3)  } \ \)となる。また,短節巻ではコイルの両コイル辺の起電力の位相差が電気角で\( \ \fbox {  (4)  } \ \mathrm {[rad]} \ \)より小さいため,そのコイルの起電力は全節巻の場合より小さくなる。その結果,分布巻・短節巻での誘導起電力は,集中巻・全節巻で得られる誘導起電力の値に、分布係数と短節係数との積である巻線係数を乗じた値となるが,誘導起電力の\( \ \fbox {  (5)  } \ \)が小さくなる利点がある。

〔問5の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& スカラ積     &(ロ)& 高調波     &(ハ)& 代数和 \\[ 5pt ] &(ニ)& \frac {\pi}{2}     &(ホ)& 電圧変動     &(ヘ)& 半円形 \\[ 5pt ] &(ト)& ベクトル和     &(チ)& 2\pi     &(リ)& ベクトル差 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 脈 動     &(ル)& \pi     &(ヲ)& 三角形 \\[ 5pt ] &(ワ)& 代数差     &(カ)& ベクトル積     &(ヨ)& 台 形 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

同期機の巻線に関する問題で,電験のテキストレベルではあまり記載がなく専門書に記載がある内容であり,内容が非常に高度であるため電験一種レベルの問題であると思います。しかし,問題慣れすることである程度解答は推測することができる空欄もあるため,過去問習熟が活きてくると思います。

1.集中巻と分布巻
集中巻は,電機子巻線を一つのスロットに集中して巻き付ける巻線方式で,ギャップの磁束密度の分布がほぼ台形に近い形になってしまい,起電力もひずみ波になってしまいます。一方,分布巻は電機子巻線を二つ以上のスロットに巻き付ける巻線方式で,ギャップの磁束密度の分布をより正弦波に近い形にしようとする巻線方式です。発電機で使用されているのは分布巻となります。


出典:三菱電機株式会社 HP
https://www.mitsubishielectric.co.jp/

2.全節巻と短節巻
全節巻はコイル幅が\( \ \pi \ \mathrm {rad} \ \)で磁極のピッチに等しい巻線方式で,短節巻はコイル幅が磁極のピッチより小さい巻線方式です。

【解答】

(1)解答:ヨ
集中巻は磁束密度の分布がほぼ台形になるという特徴があります。

(2)解答:ハ
(3)解答:ト
集中巻の場合は毎極巻相の起電力の位相が等しいため,その合計はスカラー和(代数和)となり,分布巻では隣合ったスロットの起電力の位相が異なるため,その合計はベクトル和となります。

(4)解答:ル
ワンポイント解説「2.全節巻と短節巻」の通り,短節巻は位相差が電気角で\( \ \pi \ \mathrm {[rad]} \ \)より小さい巻線方式です。

(5)解答:ロ
分布巻では誘導機起電力は小さくなりますが,それ以上に高調波の値は大幅に減少することができます。



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