《機械》〈回転機〉[H30:問2]永久磁石同期電動機に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,永久磁石同期電動機に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

同期電動機の回転子(界磁)は電磁石が一般的であるが,界磁に永久磁石を用いたもの(永久磁石同期電動機。以下,\( \ \mathrm {PM} \ \)モータという)と回転子が鉄心のみで構成されたもの(リラクタンスモータ)もある。\( \ \mathrm {PM} \ \)モータは,回転子に永久磁石を配置しているため,電磁石を用いる方法に比べて\( \ \fbox {  (1)  } \ \)が必要なく,かご形誘導電動機と同様にシンプルな構造となる。

\( \ \mathrm {PM} \ \)モータは回転子への磁石の配置方法により,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)磁石形(\( \ \mathrm {SPM} \ \))と埋込磁石形(\( \ \mathrm {IPM} \ \))の二種類に分けられる。\( \ \mathrm {SPM} \ \)は磁石の磁束を有効活用できるので高トルクで\( \ \fbox {  (3)  } \ \)の少ないモータであり,可変速ドライブを行う場合に制御性,応答性の良いモータである。しかし,高速回転時に磁石の剥がれや飛散の可能性があり,構造上の対策を必要とする。一方\( \ \mathrm {IPM} \ \)は磁石が回転子鉄心内部にあるので,回転子鉄心は高速回転時の磁石を保護しているだけでなく,その構造によってリラクタンストルクも得られ,運転速度領域を広くとれる利点がある。しかしその反面,磁石の磁束の有効活用の面では\( \ \mathrm {SPM} \ \)に比べ劣り,磁極位置による\( \ \fbox {  (3)  } \ \)も増加する。

\( \ \mathrm {PM} \ \)モータは近年発達の著しいネオジム合金等の\( \ \fbox {  (4)  } \ \)永久磁石を用いることで小形・軽量となる利点があることから,家庭用機器,\( \ \mathrm {OA} \ \)機器,電気自動車などに多く用いられてきたが,最近では小形軽量であることを活かし鉄道車両用の大出力機への開発も進められている。

\( \ \mathrm {PM} \ \)モータの可変速運転は,可変電圧・可変周波数の電力変換装置と組み合わせて構成される。このうち高性能な精密可変速運転を目的とするベクトル制御では,回転子の角度を検出し\( \ 1 \ \)台のインバータで\( \ \fbox {  (5)  } \ \)の\( \ \mathrm {PM} \ \)モータを駆動するのが原則となる。

〔問2の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 表面   &(ロ)& 複数台   &(ハ)& フラッシオーバ \\[ 5pt ] &(ニ)& 励磁装置   &(ホ)& 全て   &(ヘ)& 滑り \\[ 5pt ] &(ト)& 超電導   &(チ)& 1 \ 台     &(リ)& 突極 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 希土類    &(ル)& トルクリプル    &(ヲ)& アルニコ \\[ 5pt ] &(ワ)& 消磁装置   &(カ)& 固定子鉄心   &(ヨ)& フェライト \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

永久磁石電動機はハイブリットカー等に使用され,現在非常に幅広く利用されています。したがって,今後の電験の問題にも類題が再出題される可能性は高いと思いますので,概要を理解するようにしましょう。

1.\( \ \mathrm {SPM} \ \)と\( \ \mathrm {IPM} \ \)の違い
図1(a)のように回転子の表面に永久磁石を張り付けたものを\( \ \mathrm {SPM} \ \) (Surface Permanent Magnet),永久磁石を回転子内部においたものを\( \ \mathrm {IPM} \ \) (Interior Permanent Magnet) と言います。\( \ \mathrm {SPM} \ \)はどの場所でも固定子電流から永久磁石までの距離が等しいため,一定のトルクが得られやすい特徴があります。
一方,\( \ \mathrm {IPM} \ \)は,場所により固定子から永久磁石までの等価ギャップが変わるので突極機のような特徴に持ちますが,永久磁石の固定が容易であり,高速回転も可能であるから,高出力・高効率の運転が可能となります。

【用語の解説】

(ハ)フラッシオーバ
 送電線に落雷した際に,非常に高いサージ電圧が発生し,それによりがいしの絶縁が破壊されアーク放電を生じる現象です。
(ト)超電導
 ある特定の金属等を冷却していった時,ある温度を境に急激に電気抵抗が小さくなり,ほぼ零になる現象を言います。
(ヌ)希土類
 周期表の\( \ 3 \ \)族に属する金属で,別名レアアースとも呼ばれます。
(ル)トルクリプル
 リプルは乱れという意味を持ちますが,トルクリプルは一定のトルクに対する変動幅という解釈で良いです。
(ヲ)アルニコ
 アルニコはアルミニウム・ニッケル・コバルトの頭文字を組み合わせたもので,アルニコ磁石は非常に強い磁力を持つ磁石の一つです。
(ヨ)フェライト
 酸化鉄を主原料とした磁石で,安価であることから非常によく普及されています。家庭で見るマグネットはほぼフェライト磁石であると思います。

【解答】

(1)解答:ニ
題意より,解答候補は(ニ)励磁装置,(ワ)消磁装置,(カ)固定子鉄心,になると思います。通常の同期電動機は励磁装置で電磁石を作りますが,\( \ \mathrm {PM} \ \)モータはその代わりに永久磁石を使用するため,励磁装置が不要となります。

(2)解答:イ
ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {SPM} \ \)と\( \ \mathrm {IPM} \ \)の違い」の通り,\( \ \mathrm {SPM} \ \)を回転子の表面に張り付けたものなので表面となります。

(3)解答:ル
題意より,解答候補は(ハ)フラッシオーバ,(ヘ)滑り,(ル)トルクリプル,となると思います。ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {SPM} \ \)と\( \ \mathrm {IPM} \ \)の違い」の通り,\( \ \mathrm {SPM} \ \)はどの場所でも固定子電流から永久磁石までの距離が等しいため,トルクリプルが少なくなります。

(4)解答:ヌ
題意より,解答候補は(ヌ)希土類,(ヲ)アルニコ,(ヨ)フェライト,となると思います。\( \ \mathrm {PM} \ \)モータは周期表の\( \ 3 \ \)族に属する希土類の金属(レアアース)を使用します。

(5)解答:チ
題意より,解答候補は(ロ)複数台,(ホ)全て,(チ)\( \ 1 \ \)台,になると思います。\( \ \mathrm {PM} \ \)モータの精密可変速運転は原則\( \ 1 \ \)台のインバータで\( \ 1 \ \)台の\( \ \mathrm {PM} \ \)モータを駆動します。



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