【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
次の文章は,放射と光に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
放射とは,電磁波あるいは粒子の形によって伝搬するエネルギーのことである。電磁波の波長範囲は\( \ 10^{-16}~10^{8} \ \mathrm {m} \ \)であり,その波長によって宇宙線,ガンマ線,\( \ \mathrm {X} \ \)線,紫外放射,可視放射(光),赤外放射,電波などに区分され,それぞれ特有の性質を持っている。このうち人の目に入って,明るさの感覚を生じさせる\( \ \fbox { (1) } \ \mathrm {nm} \ \)の波長範囲を可視放射(光)という。
単位時間にある面を通過する放射エネルギーの量を放射束という。単位はワット\( \ \mathrm {[W]} \ \)又はジュール毎秒\( \ \mathrm {[J/s]} \ \)であり,物理量である。
放射束に\( \ \fbox { (2) } \ \)における人の目の感度(分光視感効率)を乗じた量\( \ \mathit {\Phi } \ \)を\( \ \fbox { (3) } \ \)といい,単位はルーメン\( \ \mathrm {[lm]} \ \)である。これは,物理量に人の目の感度を乗じた量であることから,心理物理量と呼ばれる。また,この\( \ \mathit {\Phi } \ \)は,ある放射体からの分光放射束を\( \ \mathit {\Phi }_{\mathrm {e}}\left( \lambda \right) \ \mathrm {[W/nm]} \ \),標準分光視感効率を\( \ V\left( \lambda \right) \ \)とすれば,次式より求まる。
\[
\begin{eqnarray}
\mathit {\Phi }&=&K_{\mathrm {m}}\int _{\lambda _{1}}^{\lambda _{2}}V\left( \lambda \right) \mathit {\Phi }_{\mathrm {e}}\left( \lambda \right) \mathrm {d}\lambda \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
ここで,\( \ \lambda \ \)は波長\( \ \mathrm {[nm]} \ \),\( \ \lambda _{1} \ \)から\( \ \lambda _{2} \ \)までは可視放射(光)の波長範囲,\( \ K_{\mathrm {m}} \ \)は\( \ \fbox { (4) } \ \)であり,その値は約\( \ \fbox { (5) } \ \mathrm {nm} \ \)において約\( \ 683 \ \mathrm {lm/W} \ \)である。
〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 暗所視下 &(ロ)& 照度 &(ハ)& 明所視下 \\[ 5pt ]
&(ニ)& 300~700 &(ホ)& 555 &(ヘ)& 380~780 \\[ 5pt ]
&(ト)& 固有光束係数 &(チ)& 光束 &(リ)& 507 \\[ 5pt ]
&(ヌ)& 400~870 &(ル)& 薄明視下 &(ヲ)& 500 \\[ 5pt ]
&(ワ)& 最大視感効果度 &(カ)& 光度 &(ヨ)& 形態係数 \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
人間の目はすべての光の強さを感じるものではなく,見える範囲の波長が限られており,下図の通り波長によってその感じ方も違います。本問はその内容の出題です。途中専門分野への入口となっているような内容もありますが,電験ではそこまで深い内容は出題されません。
【用語の解説】
(ロ)照度
光源によって照らされた面の明るさで記号は\( \ E \ \mathrm {[lx]} \ \)を用いるのが一般的です。光束\( \ \mathit {\Phi } \ \mathrm {[lm]} \ \)を面積\( \ A \ \mathrm {[m^{2}]} \ \)で割ったものとなります。
\[
\begin{eqnarray}
E&=&\frac {\mathit {\Phi }}{A} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
(ト)固有光束係数
固有入射光束係数というある光源から放射された光束がどの程度入射されるかを示す係数がありますが,この選択肢も同意味を示しているものと思います。
(チ)光束
目に見える光の量のことで,電磁気の分野でいうと電束のようなイメージで良いです。
(ワ)最大視感効果度
分光視感効率が最大となる波長における標準分光視感効果度すなわち人間にとって最も見えやすい波長における感度で,波長は\( \ 555 \ \mathrm {[nm]} \ \)程度で\( \ 683 \ \mathrm {[lm/W]} \ \)となります。
(カ)光度
点光源から光束\( \ \mathit {\Phi } \ \)を立体角で割ったもので,記号は\( \ I \ \mathrm {[cd]} \ \)を用いるのが一般的です。
光束の密度を表す度合いと考えると良いと思います。
\[
\begin{eqnarray}
I&=&\frac {\mathit {\Phi }}{\omega } \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
(ヨ)形態係数
熱放射でのステファン・ボルツマンの法則の式における輻射エネルギーを求める際に使用する係数です。
【解答】
(1)解答:ヘ
題意より,解答候補は(ニ)\( \ 300~700 \ \),(ヘ)\( \ 380~780 \ \),(ヌ)\( \ 400~870 \ \),となると思います。ワンポイント解説の図の通り,人間の目に見える可視光の範囲は\( \ 380~780 \ \ \mathrm {nm} \)程度となります。
(2)解答:ハ
題意より,解答候補は(イ)暗所視下,(ハ)明所視下,(ル)薄明視下,となると思います。放射束に乗じる量は明所視下の感度となります。
(3)解答:チ
題意より,解答候補は(ロ)照度,(チ)光束,(カ)光度,となると思います。問題文の内容は光束に関する内容ですが,記号と単位から分かると理想です。
(4)解答:ワ
題意より,解答候補は(ト)固有光束係数,(ワ)最大視感効果度,(ヨ)形態係数,となると思います。上記【用語の解説】より,最も適当なのは最大視感効果度であることが分かると思います。
(5)解答:ホ
題意より,解答候補は(ホ)\( \ 555 \ \),(リ)\( \ 507 \ \),(ヲ)\( \ 500 \ \),となると思います。最大視感効果度は,波長は\( \ 555 \ \mathrm {[nm]} \ \)程度で\( \ 683 \ \mathrm {[lm/W]} \ \)となります。