《機械》〈同期機〉[R06:問1]界磁電流と電機子電流による磁束が合成された磁束に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,同期機のエアギャップの磁束に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

同期電動機や同期発電機のエアギャップの磁束は,界磁電流が作る磁束と,電機子電流による磁束が合成された磁束となる。このように,電機子電流によるギャップ磁束への影響・作用を\( \ \fbox {  (1)  } \ \)と呼ぶ。電機子電流による磁束のうち界磁磁束と同じ向きの成分による作用は\( \ \fbox {  (2)  } \ \)といい,電機子電流による磁束のうち界磁磁束と直交する成分による作用は\( \ \fbox {  (3)  } \ \)という。

同期発電機の端子電圧に対して,電機子電流の位相が遅れている場合には\( \ \fbox {  (4)  } \ \)となり,内部誘導起電力の大きさは,無負荷誘導起電力と比べて\( \ \fbox {  (5)  } \ \)。

〔問1の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 誘導作用     &(ロ)& 増磁作用     &(ハ)& 交差磁化作用 \\[ 5pt ] &(ニ)& 同位相     &(ホ)& 直交界磁作用       &(ヘ)& 電機子作用 \\[ 5pt ] &(ト)& 電機子反作用       &(チ)& 強磁作用     &(リ)& 直交磁化作用 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 減磁作用     &(ル)& 弱磁作用     &(ヲ)& 逆位相 \\[ 5pt ] &(ワ)& 大きくなる     &(カ)& 変わらない     &(ヨ)& 小さくなる \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

同期機の電機子反作用に関する問題です。
主磁束である界磁巻線の磁束のみであれば大きな問題は発生しないのですが,電機子巻線においても磁束が発生するため合成磁束が大きくなったり小さくなったりします。
本問については名称を覚えていて遅れ→減磁,進み→増磁,と丸暗記して解けた受験生もいたかもしれませんが,中身についても理解していくようにして下さい。

1.同期発電機の電機子反作用
同期発電機の電機子反作用は,界磁磁束に電機子巻線による磁束が合成されることにより発生し,その力率により交さ磁化作用,減磁作用,増磁作用が起こります。

①交さ磁化作用
力率\( \ 1 \ \)のときは界磁磁極と電機子巻線が図1(a)に示すような関係にあります。
このとき,電機子巻線による磁束は界磁磁極の磁束に対し強め合う部分と弱め合う部分が発生し,これを交さ磁化作用といいます。
このときの無負荷誘導起電力を\( \ {\dot E}_{0} \ \),誘導起電力を\( \ \dot E \ \),電機子電流を\( \ {\dot I}_{\mathrm {a}} \ \),電機子反作用リアクタンスを\( \ X_{\mathrm {a}} \ \)とすると,ベクトル図は図1(b)のようになります。増磁作用は磁気飽和のため増加割合が低く,全体としては減磁し無負荷誘導起電力\( \ {\dot E}_{0} \ \)よりも誘導起電力\( \ \dot E \ \)の方が小さくなります。

②減磁作用
遅れ力率\( \ 0 \ \)のときは界磁磁極と電機子巻線が図2(a)に示すような関係にあります。
このとき,電機子巻線による磁束は界磁磁極の磁束を弱め,これを減磁作用といいます。
このときの無負荷誘導起電力を\( \ {\dot E}_{0} \ \),誘導起電力を\( \ \dot E \ \),電機子電流を\( \ {\dot I}_{\mathrm {a}} \ \),電機子反作用リアクタンスを\( \ X_{\mathrm {a}} \ \)とすると,ベクトル図は図2(b)のようになります。ベクトル図からも\( \ {\dot E}_{0} > \dot E \ \)となることがわかるかと思います。

③増磁作用
進み力率\( \ 0 \ \)のときは界磁磁極と電機子巻線が図3(a)に示すような関係にあります。
このとき,電機子巻線による磁束は界磁磁極の磁束を強め,これを増磁作用といいます。
このときの無負荷誘導起電力を\( \ {\dot E}_{0} \ \),誘導起電力を\( \ \dot E \ \),電機子電流を\( \ {\dot I}_{\mathrm {a}} \ \),電機子反作用リアクタンスを\( \ X_{\mathrm {a}} \ \)とすると,ベクトル図は図3(b)のようになります。ベクトル図からも\( \ {\dot E}_{0} < \dot E \ \)となることがわかるかと思います。

【解答】

(1)解答:ト
題意より解答候補は,(イ)誘導作用,(ロ)増磁作用,(ハ)交差磁化作用,(ホ)直交界磁作用,(ヘ)電機子作用,(ト)電機子反作用,(チ)強磁作用,(リ)直交磁化作用,(ヌ)減磁作用,(ル)弱磁作用,になると思います。
ワンポイント解説「1.同期発電機の電機子反作用」の通り,界磁電流が作る磁束に,電機子電流によるギャップ磁束への影響・作用が発生することを電機子反作用といいます。

(2)解答:ロ
題意より解答候補は,(イ)誘導作用,(ロ)増磁作用,(ハ)交差磁化作用,(ホ)直交界磁作用,(ヘ)電機子作用,(ト)電機子反作用,(チ)強磁作用,(リ)直交磁化作用,(ヌ)減磁作用,(ル)弱磁作用,になると思います。
ワンポイント解説「1.同期発電機の電機子反作用」の通り,進み力率で電機子電流による磁束のうち界磁磁束と同じ向きの成分による作用は増磁作用といいます。

(3)解答:ハ
題意より解答候補は,(イ)誘導作用,(ロ)増磁作用,(ハ)交差磁化作用,(ホ)直交界磁作用,(ヘ)電機子作用,(ト)電機子反作用,(チ)強磁作用,(リ)直交磁化作用,(ヌ)減磁作用,(ル)弱磁作用,になると思います。
ワンポイント解説「1.同期発電機の電機子反作用」の通り,力率が\( \ 1 \ \)で電機子電流による磁束のうち界磁磁束と直交する成分による作用は交差磁化作用といいます。

(4)解答:ヌ
題意より解答候補は,(イ)誘導作用,(ロ)増磁作用,(ハ)交差磁化作用,(ホ)直交界磁作用,(ヘ)電機子作用,(ト)電機子反作用,(チ)強磁作用,(リ)直交磁化作用,(ヌ)減磁作用,(ル)弱磁作用,になると思います。
ワンポイント解説「1.同期発電機の電機子反作用」の通り,同期発電機の端子電圧に対して,電機子電流の位相が遅れている場合に発生する作用は減磁作用となります。

(5)解答:ヨ
題意より解答候補は,(ワ)大きくなる,(カ)変わらない,(ヨ)小さくなる,になると思います。
ワンポイント解説「1.同期発電機の電機子反作用」の通り,遅れ力率で減磁作用となるとき,内部誘導起電力の大きさは,無負荷誘導起電力と比べて小さくなります



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