《理論》〈電気及び電子計測〉[H27:問4]ホール測定に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,ホール測定に関する記述である。文中の\(\fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$}\)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

図のような,\(x\)方向に\(a\),\(y\)方向に\(b\),\(z\)方向に\(c\)の大きさをもった直方体の試料がある。ただし,試料は正孔がキャリヤの多数を占める\(p\)形半導体とする。

いま\(y=0\)の面が正に,\(y=b\)の面が負になるように電圧\(V_{\mathrm {y}}\)を掛けたとすると,一様な\(y\)方向の電界\(E_{\mathrm {y}}\)の大きさは\(\fbox {  (1)  }\)となり,電流が流れる。\(y\)方向のキャリヤの平均速度\(v_{\mathrm {y}}\)は,散乱がある半導体においては\(v_{\mathrm {y}}=\mu E_{\mathrm {y}}\)という比例関係が成り立つ。この\(\mu \)は\(\fbox {  (2)  }\)と呼ばれる。

ここで,垂直な\(z\)方向(図中で上向き)に磁束密度\(B_{\mathrm {z}}\)を加えると,磁界中を平均速度\(v_{\mathrm {y}}\)で\(y\)方向に動くキャリヤは,電荷量が単位電荷\(q\)であることから,\(x\)方向に大きさ\(\fbox {  (3)  }\)のローレンツ力\(F_{\mathrm {L}}\)を受ける。すると,\(x=a\)の面では正孔が溜まり,正に帯電し,\(x=0\)の面で正孔不足となり負に帯電して,\(x\)方向に電界\(E_{\mathrm {x}}\)が発生する。キャリヤが\(x\)方向の電界から受ける力\(qE_{\mathrm {x}}\)とローレンツ力\(F_{\mathrm {L}}\)は打ち消し合い,平衡状態となるので,\(E_{\mathrm {x}}\)の大きさは\(\fbox {  (4)  }\)となる。そこで\(x=0\)の面と\(x=a\)の面の間に発生する電圧\(V_{\mathrm {H}}\)と\(y\)方向に印加した電圧\(V_{\mathrm {y}}\)の比の大きさは\(\fbox {  (5)  }\)である。

以上の関係から磁束密度が分かっている場合には\(\mu \)を求めることができ,また\(\mu \)が分かった試料は,磁気センサとして用いることができる。

〔問4の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& \left| \mu E_{\mathrm {y}}B_{\mathrm {z}}\right|   &(ロ)& \left| \frac {V_{\mathrm {y}}}{b}\right|   &(ハ)& \left| q v_{\mathrm {y}}B_{\mathrm {z}}a\right| \\[ 5pt ] &(ニ)& \left| \frac {\mu E_{\mathrm {y}}B_{\mathrm {z}}}{c}\right|   &(ホ)& \left| \frac {\mu B_{\mathrm {z}}a}{b}\right|   &(ヘ)& \left| q\mu E_{\mathrm {y}}B_{\mathrm {z}}\right| \\[ 5pt ] &(ト)& \left| \frac {\mu B_{\mathrm {z}}}{c}\right|   &(チ)& 抵抗率    &(リ)& \left| q v_{\mathrm {y}}B_{\mathrm {z}}b\right| \\[ 5pt ] &(ヌ)& 伝導度   &(ル)& \left| \frac {V_{\mathrm {H}}}{b}\right|   &(ヲ)& \left| \frac {\mu E_{\mathrm {y}}B_{\mathrm {z}}}{a}\right| \\[ 5pt ] &(ワ)& \left| \frac {V_{\mathrm {y}}}{a}\right|   &(カ)& \left| \frac {\mu B_{\mathrm {z}}}{a}\right|   &(ヨ)& 移動度
\end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

ホール測定に関する問題となっていますが,中身はローレンツ力の計算に関する問題です。問題文を落ち着いて読み,確実に解答できるようにしましょう。

1.ローレンツ力
 磁束密度\(B{[C]}\)の磁界中において,\(q\mathrm {[C]}\)の電荷が,磁界と垂直方向に速度\(v\mathrm {[m/s]}\)で運動しているとき,電荷にかかるローレンツ力\(F\mathrm {[N]}\)は,
\[
F=qvB
\] となります。

【解答】

(1)解答:ロ
電圧\(V_{\mathrm {y}}\)により,\(y\)方向に一様な電界\(E_{\mathrm {y}}\)がかかったので,
\[
E_{\mathrm {y}}=\left| \frac {V_{\mathrm {y}}}{b}\right|
\] と求められる。

(2)解答:ヨ
\(\mu \)は移動度と呼ばれます。

(3)解答:ヘ
題意を図に示すと図2のようになる。ワンポイント解説「1.ローレンツ力」より,\(x\)方向のローレンツ力の大きさ\(F_{\mathrm {L}}\)は,
\[
\begin{eqnarray}
F_{\mathrm {L}}&=& \left| qv_{\mathrm {y}}B_{\mathrm {z}}\right| \\[ 5pt ] &=& \left| q\mu E_{\mathrm {y}}B_{\mathrm {z}}\right| \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(4)解答:イ
平衡状態において,\(x\)方向の電界から受ける力\(qE_{\mathrm {x}}\)とローレンツ力\(F_{\mathrm {L}}\)は等しいので,
\[
\begin{eqnarray}
qE_{\mathrm {x}}&=& \left| q\mu E_{\mathrm {y}}B_{\mathrm {z}}\right| \\[ 5pt ] E_{\mathrm {x}}&=& \left| \mu E_{\mathrm {y}}B_{\mathrm {z}}\right| \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(5)解答:ホ
\(x=0\)の面と\(x=a\)の面の間に発生する電圧\(V_{\mathrm {H}}\)の大きさは,
\[
\begin{eqnarray}
V_{\mathrm {H}}&=& E_{\mathrm {x}}a \\[ 5pt ] &=& \left| \mu E_{\mathrm {y}}B_{\mathrm {z}}a\right| \\[ 5pt ] &=& \left| \mu \frac { V_{\mathrm {y}}}{b}B_{\mathrm {z}}a\right| \\[ 5pt ] &=& \left| \frac {\mu B_{\mathrm {z}}a}{b} V_{\mathrm {y}}\right| \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,\(V_{\mathrm {H}}\)と\(V_{\mathrm {y}}\)の比の大きさは,
\[
\frac {V_{\mathrm {H}}}{V_{\mathrm {y}}}= \left| \frac {\mu B_{\mathrm {z}}a}{b} \right|
\] と求められる。



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