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【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
一般に,三相送配電線に接続される変圧器は\( \ \Delta – \mathrm {Y} \ \)又は\( \ \mathrm {Y} – \Delta \ \)結線されることが多く,\( \ \mathrm {Y} \ \)結線の中性点は接地インピーダンス\( \ Z_{\mathrm {n}} \ \)で接地される。 この接地インピーダンス\( \ Z_{\mathrm {n}} \ \)の大きさや種類によって種々の接地方式がある。 中性点の接地方式に関する記述として,誤っているのは次のうちどれか。
(1) 中性点接地の主な目的は,\( \ 1 \ \)線地絡などの故障に起因する異常電圧(過電圧)の発生を抑制したり,地絡電流を抑制して故障の拡大や被害の軽減を図ることである。中性点接地インピーダンスの選定には,故障点のアーク消弧作用,地絡リレーの確実な動作などを勘案する必要がある。
(2) 非接地方式\( \ \left( Z_{\mathrm {n}}→\infty \right) \ \)では,\( \ 1 \ \)線地絡時の健全相電圧上昇倍率は大きいが,地絡電流の抑制効果が大きいのがその特徴である。 わが国では,一般の需要家に供給する\( \ 6.6 \ \mathrm {[kV]} \ \)配電系統においてこの方式が広く採用されている。
(3) 直接接地方式\( \ \left( Z_{\mathrm {n}}→0 \right) \ \)では,故障時の異常電圧(過電圧)倍率が小さいため,わが国では,\( \ 187 \ \mathrm {[kV]} \ \)以上の超高圧系統に広く採用されている。一方,この方式は接地が簡単なため,わが国の\( \ 77 \ \mathrm {[kV]} \ \)以下の下位系統でもしばしば採用されている。
(4) 消弧リアクトル接地方式は,送電線の対地静電容量と並列共振するように設定されたリアクトルで接地する方式で,\( \ 1 \ \)線地絡時の故障電流はほとんど零に抑制される。このため,遮断器によらなくても地絡故障が自然消滅する。しかし,調整が煩雑なため近年この方式の新たな採用は多くない。
(5) 抵抗接地方式\( \ \left( Z_{\mathrm {n}}= \right. \ \)ある適切な抵抗値\( \ \left. R \ \mathrm {[\Omega ]} \right) \ \) は,わが国では主として\( \ 154 \ \mathrm {[kV]} \ \)以下の送電系統に採用されており,中性点抵抗により地絡電流を抑制して,地絡時の通信線への誘導電圧抑制に大きな効果がある。しかし,地絡リレーの検出機能が低下するため,何らかの対応策を必要とする場合もある。
【ワンポイント解説】
各中性点接地方式の特徴やその使用電圧の違いに関する問題です。少し問題文は長いですが,知識があればわりと間違いは見つけやすいかと思います。
\( \ 1 \ \)線地絡電流や健全相対地電圧がどうなるかを考えれば,\( \ 1 \ \)線地絡電流が大きいと通信線への誘導障害が発生しやすい,健全相対地電圧が大きいと絶縁保護対策が必要等その他の内容は推測しやすいので,まずはこの\( \ 2 \ \)つを理解しておきましょう。
1.中性点接地方式の種類と特徴
各中性点接地方式の特徴は下表の通りです。
高電圧では線路や機器絶縁にコストがかかるので直接接地を採用し,合わせて高速遮断や高速再閉路が採用されている,低電圧では一線地絡時の健全相の電圧上昇がそれほど問題とならないため中性点接地を不要とし,\( \ \Delta -\Delta \ \)結線を採用できるようにしている等,丸暗記ではなくなぜそうするのかも理解しておくと良いと思います。
\[
\begin{array}{|c|c|c|c|c|}
\hline
& 非接地 & 抵抗接地 & 消弧リアクトル接地 & 直接接地 \\
\hline
地絡電流 & 小 & 中 & 最小 & 最大 \\
\hline
健全相電圧上昇 & 大 & 中 & 大 & 小 \\
\hline
リレー検出 & 難 & 容易 & 難 & 確実 \\
\hline
コスト & 0 & 中 & 大 & 小 \\
\hline
電圧階級 & \ ~33 \ \mathrm {kV} \ & \ 22~154 \ \mathrm {kV} \ & \ 66~77 \ \mathrm {kV} \ & \ 187 \ \mathrm {kV}~ \ \\
\hline
\end{array}
\]
【解答】
解答:(3)
(1):正しい
問題文の通り,中性点接地の主な目的は\( \ 1 \ \)線地絡などの故障に起因する異常電圧(過電圧)の発生を抑制したり,地絡電流を抑制して故障の拡大や被害の軽減を図ることです。また,中性点接地インピーダンスの選定には,故障点のアーク消弧作用,地絡リレーの確実な動作などを勘案して決定されます。
(2):正しい
ワンポイント解説「1.中性点接地方式の種類と特徴」の通り,非接地方式は\( \ 1 \ \)線地絡時の健全相電圧上昇は大きいですが,地絡電流の抑制効果が高いので,健全相電位上昇があまり問題にならない\( \ 6.6 \ \mathrm {[kV]} \ \)配電系統で採用されています。
(3):誤り
ワンポイント解説「1.中性点接地方式の種類と特徴」の通り,直接接地方式は\( \ 1 \ \)線地絡時の健全相電圧上昇が小さいため,\( \ 187 \ \mathrm {[kV]} \ \)以上の超高圧系統に広く採用されていますが,\( \ 77 \ \mathrm {[kV]} \ \)以下の下位系統では一般に採用されません。
(4):正しい
消弧リアクトル接地方式は,送電線の対地静電容量と並列共振するように設定されたリアクトルで接地する方式で,ワンポイント解説「1.中性点接地方式の種類と特徴」の通り\( \ 1 \ \)線地絡時の故障電流はほとんど零になりますが,調整が煩雑なため近年この方式の新たな採用は多くありません。
(5):正しい
ワンポイント解説「1.中性点接地方式の種類と特徴」の通り,抵抗接地方式は主として\( \ 154 \ \mathrm {[kV]} \ \)以下の送電系統に採用されており,中性点抵抗により地絡電流を抑制し,地絡時の通信線への誘導電圧抑制に大きな効果がある反面,地絡リレーの検出機能が低下するため,その辺りを考慮して設計する必要があります。