《法規》〈電気施設管理〉[R03:問4]電力系統の連系と直流連系に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,電力系統の連系に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

a) 系統連系の主な特徴は,次のとおりである。

 ・連系した系統全体で経済的な電源運用ができる。

 ・設備事故や急激な需要の変化に対し,相互に電力を融通することができるので,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)の節減を図ることができる。

 ・\( \ \fbox {  (2)  } \ \)が増加するため,大容量遮断器を採用する必要がある。

 ・誘導障害が増加するため,対策が必要になる。

 ・系統の連系に伴い,系統の安定を維持するため,\( \ \fbox {  (3)  } \ \)の調整が複雑になる。

b) 系統の連系方法は,直流による連系と交流による連系があるが,直流による連系の主な特徴は,次のとおりである。

 ・連系送電線としてケーブルを使用する場合でも,ケーブルによる\( \ \fbox {  (4)  } \ \)がないため,長距離の送電が可能である。

 ・周波数の異なる交流系統間の連系が容易である。

 ・交流系統の\( \ \fbox {  (2)  } \ \)が増加しない。

 ・大規模な変換装置が必要になる。

c) 全国規模の系統連系の管理は,現在は\( \ \fbox {  (5)  } \ \)が行っている。

〔問4の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& ベース供給力       &(ロ)& 電力損失 \\[ 5pt ] &(ハ)& 高調波     &(ニ)& 小売電気事業者同士 \\[ 5pt ] &(ホ)& アグリゲーター     &(ヘ)& 電力系統利用協議会 \\[ 5pt ] &(ト)& 発熱     &(チ)& 雷害 \\[ 5pt ] &(リ)& 充電電流     &(ヌ)& 短絡容量 \\[ 5pt ] &(ル)& 周波数     &(ヲ)& 漏えい電流 \\[ 5pt ] &(ワ)& 電力広域的運営推進機関           &(カ)& 供給予備力 \\[ 5pt ] &(ヨ)& インバランス料金     && \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

電力の広域連系と直流送電に関する問題です。
いずれも\( \ 2 \ \)種の頃から扱ってきたような内容なので,多くの受験生が高得点を取得できたのではないかと思います。
(5)の管理機関は少し特殊な問題となるかと思うので,誤答を選択しても仕方ない空欄かもしれません。

1.系統連系の特徴
<系統連系のメリット>
・負荷需要や電源の構成が異なる系統を連系することで,効率的な発電設備の運用を行うことが可能となるため,発電設備の需要率を上げることができます。
・電源設備を全体として高効率に運用することができるため,燃料費等のコスト削減を図れます。
・様々な設備の大容量化を図ることができ,共同開発等も可能となるため,全体としてスケールメリットが得られます。
・系統の事故時の予備力を他系統からの融通で対応できるため,運転予備力や予備設備の削減が可能となります。
・連系されている発電機の数が増えるため,需要変動に対する即応性が高くなり,周波数も安定しやすいです。

<系統連系のデメリット>
・短絡容量が増大するため,大容量遮断器を採用する必要があります。
・電源と負荷の構成が複雑となるため,系統周波数の調整が複雑となります。
・系統事故の波及事故が増大する可能性が高くなるため,対策が必要となります。
・誘導障害が増加するため,対策が必要となります。

2.直流送電の得失
<直流送電のメリット>
・安定度の問題がないため,送電線の熱的許容電流まで送電容量を増やせます。したがって,大容量の送電に有利です。
・無効電流による損失がないので,送電損失が少ないです。したがって,長距離送電に有利です。
・同容量のケーブルで,交流に比べ\( \ \sqrt {2} \ \)倍までの電圧を送電できます。
・電圧最大値が実効値と等しいので,絶縁強度を低減が図れます。
・静電容量による充電電流が流れないため,誘電損が発生しません。
・送電線が2条で良いため,建設コストが下がります。

<直流送電のデメリット>
・交直変換装置が必要です。
・交流のように零点がないため,高電圧・大電流の遮断が難しいです。
・変換装置から高調波が発生するため,フィルタや調相設備の設置が必要です。
大地帰路方式において,電食が発生しやすいです。
・変圧器で電圧の変成ができません。

【解答】

(1)解答:カ
題意より,解答候補は(イ)ベース供給力,(ロ)電力損失,(ヲ)漏えい電流,(カ)供給予備力,等になるかと思います。
ワンポイント解説「1.系統連系の特徴」の通り,系統連系することにより,予備力を他系統からの融通で補うことが可能となるため,供給予備力の節減を図ることが可能となります。

(2)解答:ヌ
題意より,解答候補は(ハ)高調波,(ト)発熱,(チ)雷害,(リ)充電電流,(ヌ)短絡容量,(ヲ)漏えい電流,等になるかと思います。
ワンポイント解説「1.系統連系の特徴」の通り,系統連系することにより短絡容量が増大することになります。短絡容量が増大すると,事故電流が増大するため,大容量の遮断器が必要となります。

(3)解答:ル
題意より,解答候補は(イ)ベース供給力,(ル)周波数,(ヨ)インバランス料金,等になるかと思います。
ワンポイント解説「1.系統連系の特徴」の通り,系統連系により系統構成が複雑になると周波数の調整,すなわち有効電力の調整が複雑になります。

(4)解答:リ
題意より,解答候補は(ロ)電力損失,(リ)充電電流,(ヲ)漏えい電流,等になるかと思います。
ワンポイント解説「2.直流送電の得失」の通り,直流の場合には交流のようなケーブルの静電容量による充電電流の概念がないため,長距離送電が可能となります。

(5)解答:ワ
題意より,解答候補は(ニ)小売電気事業者同士,(ホ)アグリゲーター,(ヘ)電力系統利用協議会,(ワ)電力広域的運営推進機関,になるかと思います。
このうち全国規模の系統連系の管理は電力広域的運営推進機関が行っています。アグリゲーターはデマンドレスポンスに対する仲介事業者で,電力系統利用協議会は電力自由化に伴い設立された法人で中間的な立場で送電線の設備形成や運用ルールの策定等を行う機関です。



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