《理論》〈電子理論〉[H22:問4]2極真空管の原理とその特徴に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は, 2 極真空管に関する記述である。文中の  に当てはまる語句を解答群の中から選びなさい。

真空中への電子の放出には,金属を高温にして固体内の電子が仕事関数より大きな熱エネルギーを得ることで電子を放出させる熱電子放出がよく用いられる。真空中において対向している二つの金属を考え,一方の金属のみを加熱する。この加熱される金属を電極 A とし,もう一方を電極 B とする。また,電極 A は接地され,その電位は零である。電極 A から熱電子が放出されている状況で,電極 B の電位を  (1)  とすると,電極 A から放出されたほとんどの電子は電極 B に集まる。他方,これとは逆の電位を電極 B に与えると,電極 A から放出されたほとんどの電子は電極 A に戻ってしまう。したがって,電極 AB 間の電圧-電流特性は  (2)  を示す。

電流が流れる方向の電圧を電極 AB 間に印加したとき,電極 A の温度が低ければ,真空中に電子はわずかしか存在せず,電極 B から出た電気力線はほとんどすべて電極 A で終端する。ここで,放出される電子数が電極 AB 間の電圧によらず一定とすると,電流は電圧  (3)  

しかし,電極 A の温度を上げていくと放出された電子の量が増え,その電子の  (4)  効果が顕著になる。温度を上げ続けるとさらに出てくる電子の量が増え,電子を  (5)  電界が電極 A の周りにできる。したがって,電極 A の温度が高いときは,電極 AB 間の電圧の大きさで飛び出てくる電子の量を変えられ,電圧で電流量を変化できる。

〔問4の解答群〕
         B            2                A                 A   A         

【ワンポイント解説】

 2 極真空管の原理及び特徴に関する問題です。
とは言いながらも,文章の中身をしっかりと読み,電磁気等の内容を理解していれば埋められる空欄も多いかと思います。
おそらく初見の受験生も多い内容ですが,その中でいかに選択肢を絞り正答を導き出せるかが重要となります。

1. 2 極真空管の原理及び特性
 2 極真空管の原理図を図1に示します。
真空中に二つの電極を設け,陰極側を加熱し,電極間に電圧をかけます。陰極では加熱することにより電子が飛び出す熱電子放出の原理を用いて電子を放出します。
陽極の電位が陰極の電位より高いときは,陰極から放出された電子が陽極側に引き寄せられ,陽極の電位が陰極の電位より低いときは,放出された電子のほどんどが陰極に戻ります。したがって,電極間に流れる電流は電極間の電圧や陰極から飛び出す電子の量により変化することになります。
 2 極真空管の特性を示したのが図2で,電圧が低いときには陰極から飛び出した電子が陽極に到達する数が電圧により変化するため,電流は電圧により変化する空間電荷により制限される領域となります。一方,電圧が上がると陰極から飛び出した電子は基本的に全て陽極に到達するため,陰極の温度による熱電子放出の量により電流が変化する温度により制限される領域になります。ただし,図2にも示しているように温度が上がると電極付近に負の空間電荷が形成され空間電荷により制限される領域が広がり,電圧により電流量を調整できる領域が広がることになります。


【解答】

(1)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)正,(ト)負,(ワ)電極 A と同電位,になると思います。
ワンポイント解説「1. 2 極真空管の原理及び特性」の通り,電極 A を接地した場合には,電極 B の電位をとすれば電極 A から放出された電子は電極 B に集まることになります。

(2)解答:カ
題意より解答候補は,(ヘ)増幅特性,(ル)抵抗と同じ特性,(カ)整流特性,になると思います。
ワンポイント解説「1. 2 極真空管の原理及び特性」の通り,電極 B の電位を正とした場合には電流が流れ,電極 B の電位を負とした場合には電流が流れないので,整流特性となります。

(3)解答:イ
題意より解答候補は,(イ)に依存しない,(ニ)の 2 乗に比例して増加する,(ヨ)に比例して増加する,になると思います。
ワンポイント解説「1. 2 極真空管の原理及び特性」の通り,問題文に示す「電極 B から出た電気力線はほとんどすべて電極 A で終端する」領域は,温度制限による領域となるため,電流は電圧に依存しないことになります。

(4)解答:ホ
題意より解答候補は,(ホ)空間電荷,(リ)分極,(ヌ)温度制限,になると思います。
ワンポイント解説「1. 2 極真空管の原理及び特性」の通り,温度を上げていくと電極 A での熱電子放出が増え,電極付近に負の空間電荷が形成されます。これにより電極 B から出た電気力線が空間電荷のところで吸収され,電極 A 付近での電界が小さくなる空間電荷効果が顕著になります。

(5)解答:チ
題意より解答候補は,(ハ)電極 B の方向に加速する,(チ)電極 A へ押し戻す,(ヲ)電極 A から引き出す,になると思います。
温度を上げるとさらに電子の数が増え,電極 A へ押し戻す電界が電極 A の周りにできることになります。



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