《電力》〈原子力〉[R05:問2]沸騰水型軽水炉及び加圧水型軽水炉の出力制御に関する空欄穴埋問題

1 【問題】
2 【ワンポイント解説】
3 【解答】

【問題】

【難易度】★★☆☆☆（やや易しい）

次の文章は，沸騰水型軽水炉及び加圧水型軽水炉の出力制御に関する記述である。文中の$ \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ $に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

制御棒による出力制御は沸騰水型，加圧水型の双方で用いられており，中性子$ \ \fbox {　（１）　} \ $材を充填した制御棒を炉心内に挿入又は炉心外へ引き抜くことにより，原子炉出力を制御する。制御棒を炉心内へ挿入する位置は沸騰水型と加圧水型では一般的に異なっており，沸騰水型では炉心の$ \ \fbox {　（２）　} \ $から挿入される。

この他の方法としては，沸騰水型軽水炉では$ \ \fbox {　（３）　} \ $による出力制御があり，$ \ \fbox {　（３）　} \ $が増加することで冷却材中のボイドの体積比率が低下し，中性子の$ \ \fbox {　（４）　} \ $効果が高くなるので，原子炉出力は増加する。

加圧水型軽水炉では，$ \ \fbox {　（５）　} \ $濃度による出力制御がある。これは$ \ \fbox {　（５）　} \ $が中性子を吸収する性質を利用して出力を制御するものであり，一次冷却材にこれを注入して濃度を増すと，原子炉出力は減少する。

〔問2の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&（イ）&　クロム　　　　　&（ロ）&　生成　　　　　&（ハ）&　反射 \\[ 5pt ] &（ニ）&　炉心スプレー　　　　　　　&（ホ）&　上部　　　　　&（ヘ）&　透過 \\[ 5pt ] &（ト）&　減速　　　　　&（チ）&　下部　　　　　&（リ）&　増殖 \\[ 5pt ] &（ヌ）&　ほう素　　　　　&（ル）&　吸収　　　　　&（ヲ）&　横 \\[ 5pt ] &（ワ）&　原子炉圧力　　　　　&（カ）&　トリチウム　　　　　　　&（ヨ）&　炉心流量 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

日本で採用されている軽水炉の出力制御に関する問題です。
原子炉での核分裂反応により発生するのは高速中性子，核分裂反応に寄与するのは熱中性子で，原子炉の出力は熱中性子の量を一定にすることで維持されます。高速中性子を熱中性子に減速するのが減速材（軽水）で，熱中性子の量を調整するのが沸騰水型軽水炉においてはボイド（再循環流量），加圧水型軽水炉においてはホウ素濃度となります。

1.原子炉（軽水炉）の型式
①沸騰水型(BWR)
蒸気発生器を持たないので，放射性物質がタービンに直接持ち込まれるのが大きな特徴で，他には以下の特徴があります。
・炉心圧力が低く蒸気発生器や加圧器がないので，構造が加圧水型(PWR)と比較して簡単。
・再循環ポンプを持ち，ポンプでの流量によって出力を調整する。炉心流量が増えるとボイドが減少し，中性子の減速効果が高くなるので，反応は促進する。
・制御棒でも出力を調整するが，汽水分離器があるので，下から上に向かって挿入される。
・何らかの原因で出力が上昇すると気泡が発生し，反応が抑制されるため，自動で出力が抑制される。

出典：電験戦士教本「原子力・その他発電」　P.46
ＵＲＬ：https://denkenia-archives.stores.jp/

②加圧水型(PWR)
蒸気発生器で蒸気を発生させるので，通常運転時放射性物質がタービンに持ち込まれないという特徴があり，他にも以下のような特徴があります。
・タービン系統に放射性物質が持ち込まれないので，タービンや復水器のメンテナンス時に放射能対策が不要。
・加圧器を持ち，原子炉内の圧力が高い。圧力を上げることで軽水の沸点が上がるので，沸騰しない。
・ホウ素濃度で出力調整を行う。ホウ素には中性子を吸収する性質があるのでホウ素濃度を増すと反応は減少する。
・制御棒の抜き差しでも出力調整するが，上から下に向かって挿入されるため，安全性に有利である。
・蒸気発生器等の過程を経る分，若干熱効率は劣る。

出典：電験戦士教本「原子力・その他発電」　P.48
ＵＲＬ：https://denkenia-archives.stores.jp/

【解答】

(1)解答：ル
題意より解答候補は，（ロ）生成，（ハ）反射，（ヘ）透過，（ト）減速，（リ）増殖，（ル）吸収，になると思います。
ワンポイント解説「1.原子炉（軽水炉）の型式」の通り，制御棒は中性子吸収材を充填したものであり，制御棒を挿入すると熱中性子が減少し出力が低下します。

(2)解答：チ
題意より解答候補は，（ホ）上部，（チ）下部，（ヲ）横，になると思います。
ワンポイント解説「1.原子炉（軽水炉）の型式」の通り，沸騰水型では炉心の下部から挿入されます。

(3)解答：ヨ
題意より解答候補は，（ニ）炉心スプレー，（ワ）原子炉圧力，（ヨ）炉心流量，になると思います。
ワンポイント解説「1.原子炉（軽水炉）の型式」の通り，沸騰水型では再循環ポンプでの炉心流量による出力制御があります。

(4)解答：ト
題意より解答候補は，（ロ）生成，（ハ）反射，（ヘ）透過，（ト）減速，（リ）増殖，（ル）吸収，になると思います。
ワンポイント解説「1.原子炉（軽水炉）の型式」の通り，炉心流量が増加することで冷却材中のボイドの体積比率が低下し，中性子の減速効果が高くなるので，高速中性子から多くの熱中性子が生成され原子炉出力は増加します。

(5)解答：ヌ
題意より解答候補は，（イ）クロム，（ヌ）ほう素，（カ）トリチウム，になると思います。
ワンポイント解説「1.原子炉（軽水炉）の型式」の通り，加圧水型ではほう素濃度による出力制御があり，ほう素濃度が高くなると多くの中性子を吸収し出力は減少します。