【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
次の文章は,自家用電気工作物による波及事故に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
a)自家用電気工作物による波及事故とは,自家用電気工作物の\( \ \fbox { (1) } \ \)又は自家用電気工作物の誤操作若しくは\( \ \fbox { (2) } \ \)ことにより一般送配電事業者等に供給支障を発生させた事故とされている。
b)架空配電系統で発生した事故は,一般送配電事業者等の配電用変電所で遮断するが,雷による事故や樹木等が一時的に電線に接触して起きる地絡が多いため,一定時間経過後に\( \ \fbox { (3) } \ \)再送電し,停電時間を短縮している。
事故点が自家用電気工作物側にあり,開閉器等により切り離されていない場合,再送電によって再び事故電流が流れ,配電用変電所で遮断し,停電となる。この場合,一般送配電事業者等の供給支障となるため,自家用電気工作物を設置する者は,系統と接続する電圧が\( \ 3 \ 000 \ \mathrm {V} \ \)以上の場合は,自家用電気工作物の\( \ \fbox { (4) } \ \)する産業保安監督部長に報告しなければならない。
c)波及事故の原因として高圧地中引き込みケーブルの地絡事故がある。その原因として\( \ \fbox { (5) } \ \)現象が多く見られる。そのため\( \ \fbox { (5) } \ \)現象への耐性を強化した\( \ \mathrm {E-E} \ \)タイプ(内部半導電層/絶縁体/外部半導電層の\( \ 3 \ \)層同時押出成形)のケーブルの採用が推奨されている。
〔問4の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 設置の場所を管轄 &(ロ)& 電気主任技術者を認定 \\[ 5pt ]
&(ハ)& 破損 &(ニ)& 復旧しない \\[ 5pt ]
&(ホ)& 手動により &(ヘ)& 火災 \\[ 5pt ]
&(ト)& 風水害被害 &(チ)& 停止させる \\[ 5pt ]
&(リ)& 紫外線劣化 &(ヌ)& 自動的に \\[ 5pt ]
&(ル)& 遠隔操作にて &(ヲ)& 操作しない \\[ 5pt ]
&(ワ)& シュリンクバック &(カ)& 水トリー \\[ 5pt ]
&(ヨ)& 運用保安を監督 && \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
電気関係報告規則と自家用電気工作物で発生する事故を組み合わせた問題です。
実務では電気工作物を安全に扱うと同時に,何かがあった際には事故報告を行う必要があります。波及事故自体は条文には掲載されていませんが,電験でもよく出題される用語なので,内容をよく覚えておきましょう。
1.時限順送方式
送配電線の事故は,落雷による事故が圧倒的に多く,一時的な事故であるため,一旦遮断器を開放し再度投入する自動再閉路方式が採用されています。
電験では配電線で採用される時限順送方式に関する出題が多いので,そちらを理解しておきましょう。
配電線のどこかで故障があった場合,直近の遮断器を開放し,故障の復旧を行います。
図1の例では,例えば図の\( \ \mathrm {F} \ \)点で故障があった場合,
①配電用変電所の遮断器を開放します。同時に自動開閉器を開放します。
②一定時間経過後に遮断器を投入します。
③数秒後,自動開閉器\( \ 1 \ \)を自動投入します。
④数秒後,自動開閉器\( \ 2 \ \)を自動投入します。
⑤再度,故障が発生した場合には遮断器を開放し,自動開閉器\( \ 2 \ \)はロックします。
その後②~③を繰り返し,対応の必要な最小区間のみを停止することになります。
【解答】
(1)解答:ハ
電気関係報告規則第1条第2項第7号及び電気関係報告規則第3条第1項第12号に規定されている通り,破損となります。
(2)解答:ヲ
電気関係報告規則第1条第2項第7号及び電気関係報告規則第3条第1項第12号に規定されている通り,操作しないとなります。
(3)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ホ)手動により,(ヌ)自動的に,(ル)遠隔操作にて,になると思います。
ワンポイント解説「1.時限順送方式」の通り,配電系統で発生する事故は一過性の事故である場合も多いので,一定時間経過後に自動的に再送電する方式が取られています。
(4)解答:イ
電気関係報告規則第3条第1項第12号に規定されている通り,設置の場所を管轄となります。
(5)解答:カ
題意より解答候補は,(リ)紫外線劣化,(ワ)シュリンクバック,(カ)水トリー,になると思います。
このうち高圧地中引き込みケーブルでの事故が多いのは水トリー現象です。水トリー現象は\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルに水分が混入することにより樹枝状に劣化する現象をいいます。シュリンクバックはケーブル製造時に残っている残留応力が日射や通電による温度変化により解放されシースが収縮する現象で,ケーブルが露出し水分が混入する等の問題が発生する可能性がありますが,本選択肢としてはより水トリーの方が適切となります。
<電気関係報告規則第1条(抜粋)>
2 この省令において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。
七 「供給支障事故」とは,(1)破損事故又は電気工作物の誤操作若しくは電気工作物を(2)操作しないことにより電気の使用者(当該電気工作物を管理する者を除く。以下この条において同じ。)に対し,電気の供給が停止し,又は電気の使用を緊急に制限することをいう。ただし,電路が自動的に再閉路されることにより電気の供給の停止が終了した場合を除く。
<電気関係報告規則第3条(抜粋)>
電気事業者(法第38条第4項各号に掲げる事業を営む者に限る。以下この項において同じ。)又は自家用電気工作物を設置する者は,電気事業者にあっては電気事業の用に供する電気工作物(原子力発電工作物及び小規模事業用電気工作物を除く。以下この項において同じ。)に関して,自家用電気工作物を設置する者にあっては自家用電気工作物(鉄道営業法,軌道法又は鉄道事業法が適用され又は準用される自家用電気工作物であって,発電所,蓄電所,変電所又は送電線路(電気鉄道の専用敷地内に設置されるものを除く。)に属するもの(変電所の直流き電側設備又は交流き電側設備を除く。)以外のもの,原子力発電工作物及び小規模事業用電気工作物を除く。以下この項において同じ。)に関して,次の表の事故の欄に掲げる事故が発生したときは,それぞれ同表の報告先の欄に掲げる者に報告しなければならない。この場合において,二以上の号に該当する事故であって報告先の欄に掲げる者が異なる事故は,経済産業大臣に報告しなければならない。
一 感電又は電気工作物の破損若しくは電気工作物の誤操作若しくは電気工作物を操作しないことにより人が死傷した事故(死亡又は病院若しくは診療所に入院した場合に限る。)
報告先:電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長
二 電気火災事故(工作物にあっては、その半焼以上の場合に限る。)
報告先:電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長
三 電気工作物の破損又は電気工作物の誤操作若しくは電気工作物を操作しないことにより,他の物件に損傷を与え,又はその機能の全部又は一部を損なわせた事故
報告先:電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長
十二 一般送配電事業者の一般送配電事業の用に供する電気工作物,配電事業者の配電事業の用に供する電気工作物又は特定送配電事業者の特定送配電事業の用に供する電気工作物と電気的に接続されている電圧\( \ 3 \ 000 \ \mathrm {V} \ \)以上の自家用電気工作物の(1)破損又は自家用電気工作物の誤操作若しくは自家用電気工作物を(2)操作しないことにより一般送配電事業者,配電事業者又は特定送配電事業者に供給支障を発生させた事故
報告先:電気工作物の(4)設置の場所を管轄する産業保安監督部長