《機械》〈電気化学〉[H19:問6]電池,電気分解で用いられている電気化学システムに関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,電気化学システムに関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる語句を解答群の中から選び,その記号を記述用紙の解答欄に記入しなさい。

電池,電気分解で用いられている電気化学システムは,基本的に二つの電極と\( \ \fbox {  (1)  } \ \)である電解質から構成されている。電解質としては酸あるいはアルカリの水溶液がよく知られているが,アルカリ乾電池では電解質として\( \ \fbox {  (2)  } \ \)が用いられている。食塩電解においては食塩水が電解質となる。\( \ 100 \ \mathrm {[{}^{\circ }C]} \ \)以上の高温では水溶液は使用できず,イオン性融体である\( \ \fbox {  (3)  } \ \)塩が電解プロセスに利用されることがある。アルミニウムを製造するには電解プロセスが欠かせない。このアルミニウム電解製造は\( \ 1 \ 000 \ \mathrm {[{}^{\circ }C]} \ \)ほどの高温で行われるが,ここで主たる電解質として\( \ \fbox {  (4)  } \ \)が用いられている。

電気化学システムでは,二つの電極は短絡すると電気化学作用を示すことはできない。また,二つの電極系は混じり合うと副反応等が起こり,得られる目的製品が理論通りに得られないことがある。これらを防ぎ,二つの電極系を分離するために\( \ \fbox {  (5)  } \ \)が用いられることもある。

二つの電極系とは,そこで起こる電気化学反応の特性を考えて,アノードと\( \ \fbox {  (6)  } \ \)に分けられる。このうち,アノードでは\( \ \fbox {  (7)  } \ \)反応が起こる。

電池において,電池反応に直接関与する物質が活物質と呼ばれる。アルカリ乾電池を考えた場合,アノードには\( \ \fbox {  (8)  } \ \)が活物質として利用されている。

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 中 和     &(ロ)& 溶 融     &(ハ)& 塩化ナトリウム \\[ 5pt ] &(ニ)& アノライト        &(ホ)& 酸 化     &(ヘ)& 空 気 \\[ 5pt ] &(ト)& 硫 酸     &(チ)& 亜 鉛     &(リ)& 固体電解質 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 還 元     &(ル)& 電子伝導体        &(ヲ)& 基準電極 \\[ 5pt ] &(ワ)& 氷晶石     &(カ)& 電極活性     &(ヨ)& 水酸化カリウム \\[ 5pt ] &(タ)& アノード     &(レ)& 食     &(ツ)& ボーキサイト \\[ 5pt ] &(ネ)& カソード     &(ナ)& 炭 素     &(ム)& セパレータ \\[ 5pt ] &(ウ)& カソライト     &(ノ)& マンガン     &(オ)& イオン伝導体 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

電池や電気分解の化学反応に関する問題です。
電池や電気分解の両方から幅広く出題されています。解答群の選択肢が多いので,よく整理して選択することが重要です。
本問は(1)~(4)の配点が2点,(5)~(8)の配点が3点で後半の方が電験でも出題されやすい内容なので,後半は確実に得点しておきたい問題となります。

1.マンガン乾電池
正極に二酸化マンガン\( \ \left( \mathrm {MnO_{2}} \right) \ \),負極に亜鉛\( \ \left( \mathrm {Zn} \right) \ \),電解液に塩化亜鉛を用いるものが一般的で,電解液に水酸化カリウムを用いたものをアルカリマンガン乾電池(アルカリ乾電池)といいます。

①化学反応式(反応式は暗記不要です)
\[
\begin{eqnarray}
正極(カソード)&:&\mathrm {MnO_{2}+H^{+} + e^{-} → MnO(OH) } \\[ 5pt ] 負極(アノード)&:&\mathrm {Zn → Zn^{2+}+ 2e^{-}} \\[ 5pt ] 全体      &:&\mathrm {Zn+2MnO_{2}+2H^{+} → Zn^{2+} + 2MnO(OH)} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

②特徴
・一次電池として最も広く長く利用されている
・公称電圧は\( \ 1.5 \ \mathrm {V} \ \)程度
・アルカリマンガン乾電池の方が容量は大きいが,マンガン乾電池はしばらく時間が経過すると電圧が回復する性質がある
・アルカリマンガン乾電池の低価格化に伴い,現在はアルカリマンガン乾電池が主流となっている

2.銅の電解精製プロセス
乾式精錬で純度を\( \ 99 \ \mathrm {%} \ \)程度に上げた粗銅を,さらに純度を上げ\( \ 99.99 \ \mathrm {%} \ \)以上に上げるため,図1に示すようなプロセス行う方法です。陽極(アノード)に粗銅,陰極(カソード)に純銅を配置して,電解液に硫酸水溶液等を用いて,以下のような反応をさせます。
\[
\begin{eqnarray}
陽極(アノード)&:& \mathrm {Cu} &→& \mathrm {Cu}^{2+} +2\mathrm {e}^{-} \\[ 5pt ] 陰極(カソード)&:& \mathrm {Cu}^{2+} +2\mathrm {e}^{-} &→& \mathrm {Cu} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

3.イオン交換膜法による食塩電解
イオン交換膜法は最もポピュラーに使用されている方法で,図2のようなフローとなります。イオン交換膜はナトリウムイオン\( \ \mathrm {Na}^{+} \ \)のみが通過する構造となっています。また陽極と陰極の反応式は以下の通りとなります。
\[
\begin{eqnarray}
陽極(アノード)&:&2\mathrm {Cl}^{-} \ → \ \mathrm {Cl_{2}} \ + \ 2\mathrm {e}^{-} \\[ 5pt ] 陰極(カソード)&:&2\mathrm {Na}^{+} \ + \ 2\mathrm {H}^{+} \ + \ 2\mathrm {OH}^{-} \ + \ 2\mathrm {e}^{-} \ → \ \mathrm {H_{2}} \ + \ 2\mathrm {NaOH} \\[ 5pt ] 全体      &:&2\mathrm {NaCl} \ + \ 2\mathrm {H_{2}O} \ → \ \mathrm {Cl_{2}} \ + \ \mathrm {H_{2}} \ + \ 2\mathrm {NaOH} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【解答】

(1)解答:オ
題意より解答候補は,(ル)電子伝導体,(ヲ)基準電極,(オ)イオン伝導体,等になると思います。
電気分解で用いられている電気化学システムの電解質はイオン伝導体となります。

(2)解答:ヨ
題意より解答候補は,(ハ)塩化ナトリウム,(ト)硫酸,(リ)固体電解質,(ヨ)水酸化カリウム,(ワ)氷晶石,等になると思います。
ワンポイント解説「1.マンガン乾電池」の通り,アルカリ乾電池では電解質として水酸化カリウムが用いられます。解答群の中でアルカリ性の液体は水酸化カリウムのみなので,化学の知識があれば選択できるかと思います。

(3)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)溶融,(カ)電極活性,(レ)食,等になると思います。
\( \ 100 \ \mathrm {[{}^{\circ }C]} \ \)以上の高温では水溶液は使用できず,固体塩を加熱したイオン性融体である溶融塩が電解プロセスに利用されることがあります。

(4)解答:ワ
題意より解答候補は,(ハ)塩化ナトリウム,(ト)硫酸,(リ)固体電解質,(ヨ)水酸化カリウム,(ワ)氷晶石,等になると思います。
アルミニウム電解製造は\( \ 1 \ 000 \ \mathrm {[{}^{\circ }C]} \ \)ほどの高温で行われますが,ここで主たる電解質として氷晶石\( \ \mathrm {\left(Na_{3}AlF_{6}\right) } \ \)が用いられています。

(5)解答:ム
題意より解答候補は,(ニ)アノライト,(ヘ)空気,(ヲ)基準電極,(ム)セパレータ,(ウ)カソライト,等になると思います。
二つの電極系を混じり合うことを防ぎ,二つの電極系を分離するために用いられるのはセパレータとなります。

(6)解答:ネ
題意より解答候補は,(ニ)アノライト,(ネ)カソード,(ウ)カソライト,等になると思います。
ワンポイント解説「1.マンガン乾電池」,「2.銅の電解精製プロセス」及び「3.イオン交換膜法による食塩電解」の通り,二つの電極はアノードとカソードに分けられます。

(7)解答:ホ
題意より解答候補は,(イ)中和,(ホ)酸化,(ヌ)還元,になると思います。
ワンポイント解説「1.マンガン乾電池」,「2.銅の電解精製プロセス」及び「3.イオン交換膜法による食塩電解」の通り,アノードでは酸化反応が起こります。

(8)解答:チ
題意より解答候補は,(チ)亜鉛,(ツ)ボーキサイト,(ノ)マンガン,等になると思います。
ワンポイント解説「1.マンガン乾電池」の通り,アルカリ乾電池を考えた場合,アノードには亜鉛が活物質として利用されています。



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