【問題】
【難易度】★★★★☆(やや難しい)
次の文章は,原子力発電所の原子炉の核分裂に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる語句を解答群の中から選び,その記号をマークシートに記入しなさい。
核分裂の連鎖反応は,ウラン\( \ 235 \ \)に中性子が当たって核分裂反応が起こり,その結果発生した中性子が他の\( \ 235 \ \)に当たって再び核分裂を起こすという現象を繰り返すことであるが,その\( \ 1 \ \)サイクル前後での中性子の増加率を増倍率という。仮想的に原子炉が無限に大きく,中性子の漏れがない場合の値を\( \ \fbox { (1) } \ \)増倍率という。実際は吸収や外部への漏れを考慮する必要がある。これを考慮した値を\( \ \fbox { (2) } \ \)増倍率といい,臨界の場合は\( \ 1 \ \)となる。
一方,臨界からのずれの程度を表すのが反応度である。軽水炉は,\( \ \fbox { (3) } \ \)(燃料温度係数),原子炉冷却材(中性子減速材)の温度係数とボイド係数を総合した反応度係数が\( \ \fbox { (4) } \ \)となっており,出力の上昇に伴い反応度が減り,核分裂反応が減少して出力上昇が自動的に抑えられる。この特性を軽水炉の固有の安全性又は\( \ \fbox { (5) } \ \)という。
〔問2の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& フィードパック係数 &(ロ)& 設 計 &(ハ)& 等 価 \\[ 5pt ]
&(ニ)& コーストダウン性 &(ホ)& ドップラー係数 &(ヘ)& レイノルズ数 \\[ 5pt ]
&(ト)& 自己制御性 &(チ)& 無 限 &(リ)& 負 \\[ 5pt ]
&(ヌ)& 実 効 &(ル)& 正 &(ヲ)& 理 論 \\[ 5pt ]
&(ワ)& インタロック &(カ)& 零 &(ヨ)& マスター \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
原子炉内の核分裂反応に関する問題です。
内容は知っていればという問題ですが,全体としてやや専門性が高い内容かと思います。
(3)以降が多くの受験生が解ける内容かと思いますので,ぜひそちらの内容は理解しておくようにして下さい。
1.無限増倍率と実効増倍率
増倍率とは,核分裂反応におけるある世代の中性子数に対する\( \ 1 \ \)サイクル後の次の世代の中性子数を比をいいます。
専門用語では原子炉の大きさが無限であると仮定した無限増倍率\( \ k_{\infty } \ \)と有限の大きさとして外部の漏れ等を考慮した実効増倍率\( \ k_{\mathrm {e}} \ \)があります。
①無限増倍率\( \ k_{\infty } \ \)
原子炉の大きさが無限大であると仮定し,中性子の炉心の外への漏れがないとした場合の増倍率です。燃料や減速材の配置・種類といった構成で決まります。原子炉における無限増倍率\( \ k_{\infty } \ \)は,以下の\( \ 4 \ \)つの因子の積で表され\( \ 4 \ \)因子公式と呼びます。
\[
\begin{eqnarray}
k_{\infty } &=&\varepsilon p f \eta \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
\( \ \varepsilon \ \)(高速中性子利用率)
熱中性子炉においては,熱中性子に減速しないと核分裂反応はおきませんが,一部の高速中性子はウラン\( \ 238 \ \)にぶつかり核分裂を起こすことがあり,その割合をいいます。
\( \ p \ \)(共鳴脱出確率)
高速中性子が減速する中でウラン\( \ 238 \ \)に吸収されずに熱中性子として残る確率をいいます。
\( \ f \ \)(熱中性子利用率)
核分裂を起こしやすい熱中性子になった後,その中性子が燃料にどれだけ吸収されたかの割合です。
\( \ \eta \ \)(再生率)
燃料に熱中性子が\( \ 1 \ \)個吸収されたとき,平均して何個の新しい高速中性子が生まれるかの割合です。
②実効増倍率\( \ k_{\mathrm {e}} \ \)
実際の原子炉における,中性子が外へ漏れ出る割合等を考慮した増倍率です。
炉心から中性子が漏れない確率(非漏洩確率)を\( \ P \ \)とすると,実効増倍率\( \ k_{\mathrm {e}} \ \)は以下の式になります。
\[
\begin{eqnarray}
k_{\mathrm {e}} &=&k_{\infty }P \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
2.原子炉の自己制御性
原子炉には何らかの形で核分裂反応が上昇したときに,反応が自動的に抑制される以下のような自己制御性があります。
①ボイド効果
沸騰水型軽水炉\( \ \left( \mathrm {BWR} \right) \ \)特有の自己制御性で,以下の(1)~(6)を経て反応が抑制されます。
(1) 核分裂反応増大
(2) 軽水の温度上昇
(3) 減速材(軽水)中の気泡が増加
(4) 高速中性子が反応に適した熱中性子に減速しにくくなる
(5) 熱中性子の減少
(6) 核分裂反応減少
②減速材の温度効果
加圧水型軽水炉\( \ \left( \mathrm {PWR} \right) \ \)の自己制御性で,以下の(1)~(6)を経て反応が抑制されます。
(1) 核分裂反応増大
(2) 軽水の温度上昇
(3) 軽水の密度低下
(4) 高速中性子が反応に適した熱中性子に減速しにくくなる
(5) 熱中性子の減少
(6) 核分裂反応減少
③ドップラー効果
原子燃料であるウランの特性(温度上昇によりウラン\( \ 238 \ \)の熱中性子吸収量が増加する特性)による自己制御性で,以下の(1)~(5)を経て反応が抑制されます。
(1) 核分裂反応増大
(2) 核燃料の温度上昇
(3) ウラン\( \ 238 \ \)の熱中性子吸収量増加
(4) 熱中性子の減少
(5) 核分裂反応減少
【解答】
(1)解答:チ
題意より解答候補は,(ロ)設計,(ハ)等価,(チ)無限,(ヌ)実効,(ヲ)理論,になると思います。
ワンポイント解説「1.無限増倍率と実効増倍率」の通り,仮想的に原子炉が無限に大きく,中性子の漏れがない場合の値を無限増倍率といいます。
(2)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ロ)設計,(ハ)等価,(チ)無限,(ヌ)実効,(ヲ)理論,になると思います。
ワンポイント解説「1.無限増倍率と実効増倍率」の通り,吸収や外部への漏れを考慮した値を実効増倍率といいます。
(3)解答:ホ
題意より解答候補は,(イ)フィードパック係数,(ホ)ドップラー係数,(ヘ)レイノルズ数,になると思います。
ワンポイント解説「2.原子炉の自己制御性」の通り,燃料の温度が上がるとウラン\( \ 238 \ \)の熱中性子吸収量が増加し反応が低下しますが,その温度が上がったときの係数をドップラー係数(燃料温度係数)といいます。
(4)解答:リ
題意より解答候補は,(リ)負,(ル)正,(カ)零,になると思います。
ワンポイント解説「2.原子炉の自己制御性」の通り,軽水炉においては反応度係数は負となり,核分裂反応が増加し温度が上昇しても反応は抑えられることになります。
(5)解答:ト
題意より解答候補は,(ニ)コーストダウン性,(ト)自己制御性,(ワ)インタロック,(ヨ)マスター,になると思います。
ワンポイント解説「2.原子炉の自己制御性」の通り,軽水炉において出力上昇が自動的に抑えられる特性を自己制御性といいます。














愛知県出身 愛称たけちゃん