《電力》〈火力〉[R08:問5]火力発電所で行われる水の処理に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★★(難しい)

次の文章は,火力発電所で行われる水の処理に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

一次水処理は,ボイラに送り込まれる前に原水中の不純物などを取り除くために行われるもので,大きく除濁と脱塩に分けられる。脱塩は,水に溶解した状態の物質を除去するもので,一般的に\( \ \fbox{ (1) } \ \)が用いられる。

二次水処理は,配管の腐食や配管内面への\( \ \fbox{ (2) } \ \)の付着を防止するものである。復水・給水の\( \ \fbox{ (3) } \ \)調整にはアンモニアが,蒸気ドラムにおける不純物の除去には\( \ \fbox{ (4) } \ \)ソーダ系が主に用いられる。最新の貫流ボイラでは,ボイラ給水に\( \ \fbox{ (5) } \ \)を注入することで,配管内表面にヘマタイトの不動態皮膜を形成して,鉄や銅の溶出を抑制する\( \ \fbox{ (5) } \ \)処理法が用いられることが多い。

プラントから出された排水は,総合排水処理装置で水質を良くするとともに,汚濁物質は分離脱水して,焼却可能なケーキ状に加工処理する。

取水した海水を温排水として海に放流する際は,その温度管理が重要である。具体的には,海の\( \ \fbox{ (6) } \ \)から取水する方法や,取水した海水の一部を\( \ \fbox{ (7) } \ \)に通さずに直接放流する方法がある。

〔問5の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 表層     &(ロ)& フッ素 \\[ 5pt ] &(ハ)& 沖合     &(ニ)& 復水器 \\[ 5pt ] &(ホ)& スケール     &(ヘ)& 次亜塩素酸 \\[ 5pt ] &(ト)& 深層     &(チ)& イオン交換樹脂 \\[ 5pt ] &(リ)& 水素冷却器     &(ヌ)& 電気伝導率 \\[ 5pt ] &(ル)& 硬度     &(ヲ)& りん酸 \\[ 5pt ] &(ワ)& 塩素     &(カ)& 酸素 \\[ 5pt ] &(ヨ)& \mathrm{pH}     &(タ)& 凝集剤 \\[ 5pt ] &(レ)& 軸受冷却水冷却器         &(ソ)& 活性炭 \\[ 5pt ] &(ツ)& スラッジ     &(ネ)& フロック \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

火力発電所における水処理および温排水対策に関する総合的な問題で,やや専門性が高い問題です。
汽力発電ではプラントのランキンサイクルに起因し,大量のボイラ給水と復水器での冷却水を使用します。それぞれ求められる水質も異なり,ボイラ給水では様々な工程を経て管理されながらボイラに送水されます。

1.ボイラ補給水の一次水処理
河川水や工業用水などの原水を純水にする処理です。

①除濁
 凝集沈殿法,ろ過法等を用い,懸濁物質の除去を行います。凝集沈殿法では水中の微細な汚れや濁りをある程度大きく重くなった粒子の塊(フロック)にし沈殿させます。

②脱塩
 イオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂:カチオン,陰イオン交換樹脂:アニオン)等を用い,原水に溶存したイオンを除去した純水を製造します。

2.プラント内の二次水処理
プラント内の機器や配管の腐食防止,および不純物の析出による熱伝導率低下・閉塞を引き起こすスケールの付着防止を目的とします。

①\( \ \mathrm {pH} \ \)調整
 給水系・復水系配管の防食のため,アンモニアを注入してアルカリ性(\( \ \mathrm {pH} \ 8.5 \sim 9.5 \ \)程度)に維持します。

②溶存酸素の除去
 ボイラの配管の腐食防止のため,脱気器やヒドラジン注入等により溶存酸素の低減を図ります。ただし,ヒドラジンは使用の規制化が進められているため,脱気器のみとするプラントもあります。

③ドラムボイラ水処理
 蒸気ドラム内では水が濃縮されるため,スケール化成分(硬度成分・シリカ等)の析出防止およびアルカリ腐食防止にりん酸三ナトリウム等(りん酸ソーダ系)が添加され,蒸気ドラム下部からのブローによって排出されます。

④酸素処理
高純度の水が得られる貫流ボイラでは,敢えて微量の酸素を注入することで鋼材表面に酸化皮膜ヘマタイト(\( \ \mathrm{Fe_{2} O_{3}} \ \))を形成させ,スケールや腐食生成物の溶出を大幅に低減する酸素処理が広く採用されています。

3.復水器冷却水の温排水温度対策
復水器の冷却には海水等が用いられ,ボイラ給水のような厳密な水質管理は不要ですが,復水器での熱交換をし温排水として海に返されるため,温度管理が必要となります。周辺海域への熱影響を低減するため,以下の手法などが取られます。

①深層取水
 夏場など表層水温が高い時期に,水温が低い深層から冷却水を取水します。これにより,復水器での真空を高く保持することができます。

②復水器バイパス
 取水した海水の一部を復水器に通さずそのまま放水路へバイパスさせ,復水器を通過した温水と混合して放流します。これにより放水路での放水温度が上がりすぎないようにします。

【解答】

(1)解答:チ
題意より解答候補は,(チ)イオン交換樹脂,(タ)凝集剤,(ソ)活性炭,等になると思います。
ワンポイント解説「1.ボイラ補給水の一次水処理」の通り,一次水処理の脱塩は,一般にイオン交換樹脂が用いられます。

(2)解答:ホ
題意より解答候補は,(ホ)スケール,(ツ)スラッジ,(ネ)フロック,等になると思います。
ワンポイント解説「2.プラント内の二次水処理」の通り,二次水処理の目的として適切なのはスケールの付着の防止となります。スラッジはボイラ水中に浮遊または沈殿する泥状のもので蒸気ドラムにおいてスラッジを形成しブローにより排出します。

(3)解答:ヨ
題意より解答候補は,(ヌ)電気伝導率,(ル)硬度,(ヨ)\( \ \mathrm {pH} \ \),等になると思います。
ワンポイント解説「2.プラント内の二次水処理」の通り,復水・給水にアンモニアが用いられるのは\( \ \mathrm {pH} \ \)調整のためとなります。

(4)解答:ヲ
題意より解答候補は,(ヘ)次亜塩素酸,(ヲ)りん酸,等になると思います。
ワンポイント解説「2.プラント内の二次水処理」の通り,蒸気ドラムにおける不純物の除去にはりん酸ソーダ系が用いられます。

(5)解答:カ
題意より解答候補は,(ロ)フッ素,(ワ)塩素,(カ)酸素,等になると思います。
ワンポイント解説「2.プラント内の二次水処理」の通り,貫流ボイラにおいては,ボイラ給水に酸素を注入することで,配管内表面にヘマタイトの不動態皮膜を形成する方法が取られます。

(6)解答:ト
題意より解答候補は,(イ)表層,(ハ)沖合,(ト)深層,になると思います。
ワンポイント解説「3.復水器冷却水の温排水温度対策」の通り,海の深層から取水する方法が取られることがあります。

(7)解答:ニ
題意より解答候補は,(ニ)復水器,(リ)水素冷却器,(レ)軸受冷却水冷却器,になると思います。
ワンポイント解説「3.復水器冷却水の温排水温度対策」の通り,温排水の温度管理のために取水した海水の一部を復水器に通さずに直接放流する方法があります。



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