《電力》〈変電〉[H28:問5] 変電所機器の耐震設計に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,変電所機器の耐震設計に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

変電機器のうち,がいし形機器やブッシングの固有振動数は\( \ \fbox {  (1)  } \ \)程度であり,高電圧の機器になるほど低くなる。実際の地震波の卓越振動数は,上記固有振動数の範囲にあるので,頭部荷重が大きい変電機器は地震波との\( \ \fbox {  (2)  } \ \)を起こす可能性があるため,適切な\( \ \fbox {  (3)  } \ \)耐震設計を採用する必要がある。がいし形機器の設計地震力は加速度\( \ \fbox {  (4)  } \ \)\(\mathrm {m/s^{2}} \ \)の共振正弦3波を架台下端に印加する手法が用いられる。また,変圧器のブッシングは設計地震力として加速度\( \ \fbox {  (5)  } \ \)\(\mathrm {m/s^{2}} \ \)の共振正弦\( \ 3 \ \)波をブッシングポケット下端に印加する設計手法が一般的に用いられるが,基礎や\( \ \fbox {  (6)  } \ \)の条件によっては個別検討となる場合もある。
変圧器本体は剛体とみなせるため\( \ \fbox {  (7)  } \ \)耐震設計が採用されており,設計地震力は加速度\( \ 5 \ \mathrm {m/s^{2}} \ \)である。本体や中身の強度は輸送時の外力や\( \ \fbox {  (8)  } \ \)の大きさなどから決まり,耐震構造上は十分な強度を有している。ただし,変圧器本体を基礎に固定する\( \ \fbox {  (9)  } \ \)については,破断した際に本体の滑動が生じるおそれがあるため,強度を十分に確保することが必要である。

〔問5の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 0.5     &(ロ)& 0.3     &(ハ)& 収 束 \\[ 5pt ] &(ニ)& 静 的     &(ホ)& 短絡電磁力      &(ヘ)& 地 盤 \\[ 5pt ] &(ト)& 架 台     &(チ)& 過渡的     &(リ)& 50 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 擬共振     &(ル)& 動 的     &(ヲ)& 0.1~0.5\mathrm {Hz} \\[ 5pt ] &(ワ)& アンカーボルト      &(カ)& 風 圧     &(ヨ)& 0.5~10\mathrm {Hz} \\[ 5pt ] &(タ)& 3     &(レ)& 共 振     &(ソ)& 5 \\[ 5pt ] &(ツ)& 震 源
\end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

変電設備はその変圧器,遮断器及び避雷器等に多数の支持がいしがあり,その固有振動数が\(0.5~10\mathrm {Hz}\)であり,過去の地震データの振動数も同範囲にあるので,耐震対策を十分に打つ必要があります。変電所では水平加速度のみを考慮しますが,これは鉛直加速度が水平加速度に比べ半分程度であり,影響が少ないと考えられているからです。

1.変電設備での耐震設計(屋外)
①がいし形機器
・水平加速度は\( \ \mathrm {3 \ m/s^{2}} \ \)の動的設計を採用します。
・波形は共振の正弦3波を採用します。(共振が最も厳しい条件となります。)

②変圧器のブッシング部
・水平加速度は\( \ \mathrm {5 \ m/s^{2}} \ \)の動的設計を採用します。
・波形は共振の正弦3波を採用し,ブッシングポケット下端に印加します。

【用語の解説】

(ニ)静的,(ル)動的
 昔は静的設計を採用していましたが,高電圧・高圧化に伴う機器の大型化が進み,動的設計を採用するようになりました。
(ホ)短絡電磁力
 短絡事故時には大きな電流が流れるため,大きな磁界が発生し,結果大きな力が機器に加わります。
(ト)架台
 ケーブル等は架台で支えて布設することがあります。
(ヌ)擬共振
 変電所で採用している耐震設計の方法を擬共振法と言います。
(ワ)アンカーボルト
 変圧器を地面に置いた後,そこから動かないようにアンカーボルトを打ちますが,アンカーボルトには地震時に非常に大きな力が加わり,その水平加速度に耐える能力が求められます。
(レ)共振
 物体の固有振動数と地震の固有振動数が一致すると,振幅がさらに大きくなる現象です。

【解答】

(1)解答:ヨ
解答候補は(ヲ)\( \ 0.1~0.5 \ \mathrm {Hz} \ \),(ヨ)\( \ 0.5~10 \ \mathrm {Hz} \ \),になると思いますが,がいし形機器のほとんどが振動数\( \ 0.5~10 \ \mathrm {Hz} \ \)の範囲内になっています。

(2)解答:レ
解答候補は(ヌ)擬共振,(レ)共振,になると思います。変電機器で採用されているのは擬共振法ですが,擬共振を起こすという日本語はありません。

(3)解答:ル
解答候補は(ニ)静的,(チ)過渡的,(ル)動的,になると思いますが,ワンポイント解説「1.変電設備での耐震設計」の通り,がいし形機器では動的設計を採用します。

(4)解答:タ
解答候補は(イ)\( \ 0.5 \ \),(ロ)\( \ 0.3 \ \),(タ)\( \ 3 \ \),(ソ)\( \ 5 \ \),になると思いますが,ワンポイント解説「1.変電設備での耐震設計」の通り,がいし形機器で採用する水平加速度は\( \ \mathrm {3 \ m/s^{2}} \ \)です。\( \ \mathrm {3 \ m/s^{2}} \ \)とほぼ同じ大きさである\( \ 0.3 \ [ \mathrm {G} ] \ \)と混同しないように注意が必要です。

(5)解答:ソ
解答候補は(イ)\( \ 0.5 \ \),(ロ)\( \ 0.3 \ \),(タ)\( \ 3 \ \),(ソ)\( \ 5 \ \),になると思いますが,ワンポイント解説「1.変電設備での耐震設計」の通り,変圧器のブッシングで採用する水平加速度は\( \ \mathrm {5 \ m/s^{2}} \ \)です。こちらも\( \ \mathrm {5 \ m/s^{2}} \ \)とほぼ同じ大きさである\( \ 0.5 \ [ \mathrm {G} ] \ \)と混同しないように注意が必要です。

(6)解答:ヘ
解答候補は(ヘ)地盤,(ト)架台,になると思いますが,耐震設計で重要となってくるのは地盤です。

(7)解答:ニ
解答候補は(ニ)静的,(チ)過渡的,(ル)動的,になると思いますが,ワンポイント解説「1.変電設備での耐震設計」の通り,変圧器本体では静的設計を採用します。

(8)解答:ホ
解答候補は(ホ)短絡電磁力,(カ)風圧,になると思いますが,変圧器としてより影響が大きいのは短絡電磁力です。

(9)解答:ワ
題意より,解答候補は(ワ)アンカーボルトのみになると思います。



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