【問題】
【難易度】★★★★☆(やや難しい)
次の文章は,ディジタルフィルタに関する記述である。文中の に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
アナログ信号にフィルタを作用させて周波数選択を行う場合,演算増幅器などを用いてアナログ信号のままで行うこともできるが,アナログ信号を量子化した後,ディジタル演算により行うこともできる。
一般にアナログフィルタに対してディジタルフィルタは,特性が安定していること,特性を容易に変化させられることなどの利点があるものの,ハードウェアが複雑になることやリアルタイム応答性の点で不利となる。
ディジタルフィルタには,巡回形と非巡回形のフィルタがあり,前者を (1) フィルタ,後者を (2) フィルタという。
巡回形フィルタは非巡回形フィルタに比べ,低い次数で鋭い周波数特性を得られるが,安定性に留意する必要がある。
一方,非巡回形フィルタは常に安定であり,多項式係数に対称性をもたせることで (3) として,ひずみの少ない出力波形を得ることができる。しかし,鋭い周波数特性を得るためには高い次数が必要となり,遅延時間が大きくなる。また,周波数特性が急激に変化するカットオフ周波数近辺で大きな誤差を生じる (4) 現象が知られており,この現象を抑制するために窓関数を用いることがある。窓関数にはハミング窓やハニング窓があるほか,パラメータによりユーザが効果を指定できる (5) 窓などがある。
ディジタルフィルタ演算を実行するプロセッサとして積和演算機能やメモリ構成などを専用に強化した (6) があり,各種信号処理に用いられている。
〔問7の解答群〕
(イ) メインフレーム (ロ) IIR (ハ) バートレット(ニ) DSP (ホ) カイザー (ヘ) ギブス(ト) 線形位相特性 (チ) ブラックマン (リ) アクティブ(ヌ) 周期的 (ル) FIR (ヲ) 縦続形構成(ワ) パッシブ (カ) 発 散 (ヨ) 固定小数点演算
【ワンポイント解説】
ディジタルフィルタはフーリエ変換を用いた演算によるフィルタです。正確に勉強すると長い数式が出てくる内容ですが,本問はその概要となっています。本問のような特殊な問題は出題されても選択問題なので,不要な方は飛ばしても良いと思いますが,一種の場合は配点が高いので勉強しておいても良いかもしれません。
【用語の解説】
(イ)メインフレーム
コンピュータで企業等で使う大型の計算機をメインフレームと言います。
(ロ) IIR ,(ル) FIR
ディジタルフィルタにはインパルス応答が無限のものと有限のものがあり,無限のものを IIR ,有限のものを FIR と言います。
(ハ)バートレット
よくわからない用語ですが,インターネットで調べると西洋梨が出てきます。
(ニ)DSP
デジタルシグナルプロセッサの略で消費電力が少なく,積和演算機能やメモリ構成などを専用に強化したプロセッサです。
(ホ)カイザー
窓関数の一つで他の窓関数では変更可能なパラメータはありませんが,カイザー窓はパラメータを自由にとることができます。
(ヘ)ギブス
FIRで元の信号に対し有限領域を取り出した際,カット周波数付近で急激に誤差が大きくなる現象を言います。
(ト)線形位相特性
位相が周波数に比例する特性を言います。
(チ)ブラックマン
窓関数の一つであり,周波数分解能力がそれほど必要なく,微弱な成分を検出したい場合に使用します。
(リ)アクティブ,(ワ)パッシブ
アクティブフィルタは能動素子であるトランジスタやオペアンプを使用したフィルタで,パッシブフィルタは抵抗やコンデンサを使用したフィルタです。いずれもアナログフィルタとなります。
(ヲ)縦続形構成
ディジタルフィルタの構成方式の一つです。
(ヨ)固定小数点演算
小数点以下を固定することで演算を早くする方法です。
【解答】
(1)解答:ロ
(2)解答:ル
題意より解答候補は,(ロ) IIR ,(リ)アクティブ,(ル)FIR,(ワ)パッシブになると思いますが,ディジタルフィルタで巡回形のものが IIR フィルタ,非巡回形のものが) FIR フィルタとなります。
(3)解答:ト
非巡回形フィルタは常に安定であり,多項式係数に対称性をもたせることとなっているので,(ト)線形位相特性となります。
(4)解答:ヘ
題意より解答候補は,(ヘ)ギブスのみとなります。
(5)解答:ホ
題意より解答候補は,(ホ)カイザー,(チ)ブラックマン,になると思いますが,パラメータによりユーザが効果を指定できるのはカイザー窓となります。
(6)解答:ニ
題意より解答候補は,(ニ) DSP ,(ヨ)固定小数点演算になると思いますが,積和演算機能やメモリ構成などを専用に強化したものは DSP です。