《電力》〈送電〉[R02:問6]架空送電線に適用される再閉路に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,架空送電線に適用される再閉路に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

架空送電線は,雷による事故が多いが,保護リレーにより速やかに事故電流を遮断すれば,がいしは損傷を受けないで再使用できることが多い。したがって,一旦,事故電流を遮断してアークイオンを消滅させれば絶縁は回復するため,開放された遮断器の再投入によって再送電する再閉路の成功率は高い。このため適切な\( \ \fbox {  (1)  } \ \)時間後,自動的に再閉路する方式が多く適用されている。超高圧系統に適用されている高速度再閉路方式の\( \ \fbox {  (1)  } \ \)時間は,絶縁回復特性を考慮し,かつ,過渡安定性の向上を目的に\( \ \fbox {  (2)  } \ \)秒程度にしている。

架空送電線に適用される自動再閉路方式には,大別して次の方式がある。以下では,平行二回線送電線の相の定義を\( \ 1 \ \)号線の\( \ \mathrm {a} \ \),\( \ \mathrm {b} \ \),\( \ \mathrm {c} \ \)相,\( \ 2 \ \)号線の\( \ \mathrm {a} \ \),\( \ \mathrm {b} \ \),\( \ \mathrm {c} \ \)相の六相とする。

① 三相再閉路方式:平行二回線送電線の片回線側に事故が発生した場合,事故相に関係なく,事故回線を三相とも\( \ \fbox {  (3)  } \ \)の変電所で遮断し,一定時間後再閉路する方式である。健全相からの誘導はなく,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)時間を\( \ \fbox {  (4)  } \ \)できる利点がある。

② 単相再閉路方式:\( \ \fbox {  (5)  } \ \)事故に限って,その事故相を遮断し,一定時間後再閉路する方式である。この場合,健全である相は送電を継続したままである。健全相からの誘導により,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)時間は\( \ \fbox {  (6)  } \ \)なる可能性がある。

③ 多相再閉路方式:平行二回線送電線のうち事故相のみを遮断し,一定時間後再閉路する方式であり,両回線同時の多重事故に対しても高速に再閉路しようとするものである。二回線六相のうち,遮断中における両回線の異なる相での\( \ \fbox {  (7)  } \ \)の連系を条件としており,系統の過渡安定性向上への効果が非常に大きい。

なお,②,③の場合は,遮断器は\( \ \fbox {  (8)  } \ \)ごとに独立して開閉操作できることが必要である。

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 回線     &(ロ)& 長く     &(ハ)& 5~10 \\[ 5pt ] &(ニ)& 三相以上     &(ホ)& 二相以上     &(ヘ)& 送受電端 \\[ 5pt ] &(ト)& 60     &(チ)& 送電端     &(リ)& 1 \ 線地絡 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 0.5~1.0     &(ル)& 無電圧     &(ヲ)& 2 \ 線地絡 \\[ 5pt ] &(ワ)& 短く     &(カ)& 相     &(ヨ)& 受電端 \\[ 5pt ] &(タ)& 過電圧     &&     &&  \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

送電線での高速再閉路方式に関する出題です。
雷過電圧をはじめとした過電圧は一過性の異常電圧である場合が多いので,本問のように事故が発生した区間を遮断し,一定時間経過した後再投入することで復旧することが多くあります。
本問より内容は浅めですが,\( \ 2 \ \)種で平成28年問6に出題されているので,対策ができている受験生も多かったかもしれません。

1.高速再閉路方式の種類とその特徴
①三相再閉路方式
 事故相,健全相関係なく回線毎に遮断と再閉路を行う方式です。再閉路時に同期を確認する必要があります。
 健全相からの誘導がないため,無電圧時間を短くできる,装置の構成が単純にできるという特徴があります。平行二回線では健全な回線の潮流や位相角の検出を行うことで高速再閉路は可能となりますが,一回線送電線では各系統の同期を確認して再閉路を行う必要があるため,高速再閉路にすることはできません。

②単相再閉路方式
 \( \ 1 \ \)線地絡事故時に事故相のみを遮断し,事故収束後再閉路する方式です。再閉路時の同期検定を必要としませんが,健全相が残っているためその誘導により消イオン時間が長くなり,再閉路に時間を要します。
 装置がやや複雑になりますが,一回線送電線にも適用でき,三相再閉路方式よりも\( \ 1 \ \)線地絡事故時の過渡安定度が高くなります。

③多相再閉路方式
 あらゆる事故に対し事故相のみを遮断し,再閉路する方式です。過渡安定度の面で信頼性が高いため主幹系統で利用されていますが,事故相のみを確実に遮断するという高い信頼性が求められ,保護形式が複雑になります。一般に再閉路の条件は,二回線六相のうち健全相の相数が二相以上かつ両回線の異なる相が残っていることとなっています。

【解答】

(1)解答:ル
題意より解答候補は,(ル)無電圧,(タ)過電圧,等になると思います。
一旦遮断器で線路を遮断し自動的に再閉路するまでの時間は無電圧時間と呼ばれます。

(2)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ハ)\(5~10\),(ト)\(60\),(ヌ)\(0.5~1.0\),になると思います。
高速度再閉路方式の無電圧時間は,早いほど系統への影響が小さい一方消イオン時間が短すぎてもいけないので,一般に\(0.5~1.0\)秒程度が採用されています。

(3)解答:ヘ
題意より解答候補は,(ヘ)送受電端,(チ)送電端,(ヨ)受電端,になると思います。
三相再閉路方式では事故区間を切り離す必要があるので,事故回線を送受電端の変電所で遮断する必要があります。

(4)解答:ワ
題意より解答候補は,(ロ)長く,(ワ)短く,になると思います。
ワンポイント解説「1.高速再閉路方式の種類とその特徴」の通り,三相再閉路方式では,健全相からの誘導がなく,消イオン時間が短くなるので,無電圧時間を短くできる利点があります。

(5)解答:リ
題意より解答候補は,(リ)\( \ 1 \ \)線地絡,(ヲ)\( \ 2 \ \)線地絡,になると思います。
ワンポイント解説「1.高速再閉路方式の種類とその特徴」の通り,単相再閉路方式は\( \ 1 \ \)線地絡時にその事故相を遮断し,一定時間後再閉路する方式です。送電線の事故は\( \ 1 \ \)線地絡事故が圧倒的に多いので,多くの事故に対応できると読み替えることもできると思います。

(6)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)長く,(ワ)短く,になると思います。
ワンポイント解説「1.高速再閉路方式の種類とその特徴」の通り,単相再閉路方式では,健全相からの誘導があるため,消イオン時間が長くなるので,無電圧時間が長くなる可能性があります。

(7)解答:ホ
題意より解答候補は,(ニ)三相以上,(ホ)二相以上,になると思います。
ワンポイント解説「1.高速再閉路方式の種類とその特徴」の通り,多相再閉路方式においては二回線六相のうち,遮断中における両回線の異なる相での二相以上の連系を条件としています。

(8)解答:カ
題意より解答候補は,(イ)回線,(カ)相,になると思います。
単相再閉路方式及び多相再閉路方式では健全相を遮断せず故障相のみを遮断する必要があるため,ごとに独立して遮断器は開閉操作できることが必要となります。



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