《電力》〈送電〉[R04:問6]直流送電の特徴と交直変換器に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,直流送電に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

直流送電は,各国で系統連系,長距離大電力送電,洋上風力からの送電などを目的として,導入例が増えている。

直流送電は,長距離大電力送電であっても交流系統のように同期安定性の問題がなく送電容量を送電線の\( \ \fbox {  (1)  } \ \)まで大きくできる,海底ケーブルを用いる場合であっても交流系統と異なり線路の\( \ \fbox {  (2)  } \ \)による送電容量低下がない,送電電力を高速かつ正確に制御することができるなどの利点を有している。また周波数の異なる電力系統の連系のための\( \ \fbox {  (3)  } \ \)を実現できることも直流送電の利点である。一方,直流送電には,交直変換器の費用がかさむ,交直変換器に起因する交流側の高調波への対策が必要である,大容量の直流\( \ \fbox {  (4)  } \ \)が技術開発の途上にあるため多端子構成には課題があるなどの短所もある。

直流送電用の変換器としては,これまで他励式変換器が広く用いられてきたが,近年は自励式変換器の採用例も増えている。

① 他励式変換器

サイリスタを用いた変換器であり,位相制御により有効電力制御を行う。有効電力の増大に伴い無効電力の消費も増大するため,変換器容量の\( \ 60 \ % \ \)程度の\( \ \fbox {  (5)  } \ \)などが必要となる。変換器の制御にあたっては,順変換器側の定電流制御に,逆変換器側における\( \ \fbox {  (6)  } \ \)を避けるための定余裕角制御を組み合わせるなどの方式が採用される。なお短絡容量の\( \ \fbox {  (7)  } \ \)交流系統に接続した場合,変換器の制御が不安定となることがある。

② 自励式変換器

自己消弧素子を用いた変換器であり,有効電力と無効電力を独立して高速に制御することができる。このため,自励式変換器では,基本的には\( \ \fbox {  (5)  } \ \)が不要であるとともに,変換器容量の範囲内で\( \ \mathrm {STATCOM} \ \)(静止形無効電力補償装置)と同様の\( \ \fbox {  (8)  } \ \)安定化制御が可能である。

最近は,変換器セルを複数個接続しアームを構成する回路を用いた変換器も現れている。この回路構成の変換器を\( \ \fbox {  (9)  } \ \)変換器と呼ぶ。この場合,等価的なスイッチング回数が増えるため交流側の高調波電流を低減できるが,それに伴いスイッチング損失も増えるため,最適なスイッチング周波数を選ぶことが重要である。

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 中性点クランプ           &(ロ)& 小さい \\[ 5pt ] &(ハ)& 周波数     &(ニ)& 遮断器 \\[ 5pt ] &(ホ)& 断路器     &(ヘ)& \mathrm {BTB} \\[ 5pt ] &(ト)& \mathrm {PWM}     &(チ)& 大きい \\[ 5pt ] &(リ)& 交流フィルタ     &(ヌ)& モジュラーマルチレベル \\[ 5pt ] &(ル)& 分路リアクトル     &(ヲ)& 送電損失 \\[ 5pt ] &(ワ)& 固有送電容量     &(カ)& 並列コンデンサ \\[ 5pt ] &(ヨ)& 熱容量     &(タ)& 潮流過負荷抑制 \\[ 5pt ] &(レ)& 充電電流     &(ソ)& 電圧 \\[ 5pt ] &(ツ)& 高調波不安定     &(ネ)& 転流失敗 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

前半が直流送電の特徴,後半が交直変換器に関する内容,を問う問題です。
交直変換器の自励式変換器は無効電力制御を行うことが可能であることから,近年世界的にも普及が進んで導入件数も増えてきているため,電験でも出題された印象があります。
概要で良いので,特徴を理解しておくようにして下さい。

1.直流送電の得失
<直流送電のメリット>
・安定度の問題がないため,送電線の熱的許容電流まで送電容量を増やせます。したがって,大容量の送電に有利です。
・無効電流による損失がないので,送電損失が少ないです。したがって,長距離送電に有利です。
・同容量のケーブルで,交流に比べ\( \ \sqrt {2} \ \)倍までの電圧を送電できます。
・電圧最大値が実効値と等しいので,絶縁強度を低減が図れます。
・静電容量による充電電流が流れないため,誘電損が発生しません。
・送電線が2条で良いため,建設コストが下がります。

<直流送電のデメリット>
・交直変換装置が必要です。
・交流のように零点がないため,高電圧・大電流の遮断が難しいです。
・変換装置から高調波が発生するため,フィルタや調相設備の設置が必要です。
大地帰路方式において,電食が発生しやすいです。
・変圧器で電圧の変成ができません。

2.交直変換器
以前は他励式変換器が主流でしたが,パワーエレクトロニクス技術向上に伴い,自励式変換器が開発され導入が増えてきています。
他励式と自励式の特徴は下表の通りとなります。
\[
\begin{array}{|c|c|c|}
\hline
& 他励式 & 自励式 \\
\hline
半導体素子 & サイリスタ & \mathrm {GTO},\mathrm {IGBT} \\
\hline
制御 & 外部電源による転流 & 外部電源が不要 \\
\hline
調相設備 & 必要 & 不要 \\
\hline
高調波 & フィルタ設備が必要 & フィルタ設備が不要 \\
\hline
設置面積 & 大きい(調相設備,フィルタ) & 小さい \\
\hline
コスト & 安価 & 高価 \\
\hline
変換所での電力損失 & 小さい & 大きい(近年低下傾向) \\
\hline
\end{array}
\]


出典:ほくでんネットワーク HP
https://www.hepco.co.jp/network/stable_supply/efforts/north_reinforcement/new_equipment_peculiarity.html

【解答】

(1)解答:ヨ
題意より解答候補は,(ワ)固有送電容量,(ヨ)熱容量,等になると思います。
ワンポイント解説「1.直流送電の得失」の通り,直流送電は交流系統のような同期安定性の問題がないため,送電容量を送電線の熱容量まで大きくすることが可能となります。

(2)解答:レ
題意より解答候補は,(ヲ)送電損失,(レ)充電電流,(ソ)電圧,等になると思います。
ワンポイント解説「1.直流送電の得失」の通り,直流送電は線路の充電電流による送電容量低下がありません。

(3)解答:ヘ
題意より解答候補は,(イ)中性点クランプ,(ヘ)\( \ \mathrm {BTB} \ \),(ト)\( \ \mathrm {PWM} \ \),等になると思います。
周波数の異なる電力系統の連系には\( \ \mathrm {BTB}\left( \mathrm {Back \ to \ Back}\right) \ \)が採用されることがあります。\( \ \mathrm {BTB} \ \)方式は\( \ 2 \ \)組の交直変換装置を背中合わせとなるようにした設備で,交直変換装置間に直流送電線がないものとなります。

(4)解答:ニ
題意より解答候補は,(ニ)遮断器,(ホ)断路器,等になると思います。
ワンポイント解説「1.直流送電の得失」の通り,直流送電は零点がないため,大容量の直流遮断器の開発が難しいという現状にあります。

(5)解答:カ
題意より解答候補は,(リ)交流フィルタ,(ル)分路リアクトル,(カ)並列コンデンサ,等になると思います。
ワンポイント解説「2.交直変換器」の図にも記載がありますが,他励式変換器には調相設備に大容量の並列コンデンサが必要となります。

(6)解答:ネ
題意より解答候補は,(タ)潮流過負荷抑制,(ツ)高調波不安定,(ネ)転流失敗,等になると思います。
逆変換器側においてはサイリスタのオンオフ制御により直流を交流に変換しますが,そのオンオフ制御がうまく制御しなくなることを転流失敗といい,それを避けるために定余裕角制御を組み合わせなどの方式が採用されます。

(7)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)小さい,(チ)大きい,になると思います。
短絡容量は大きいほど電圧や周波数の変動が少ないため,短絡容量の小さい交流系統に接続した場合には,変換器の制御が不安定となる可能性があります。したがって,他励式は比較的大きな交流系統と接続する必要があります。

(8)解答:ソ
題意より解答候補は,(ハ)周波数,(ソ)電圧,になると思います。
自励式変換器は,変換器自身に無効電力制御機能があるため,変換器容量の範囲内で電圧安定化制御が可能となります。

(9)解答:ヌ
題意より解答候補は,(イ)中性点クランプ,(ト)\( \ \mathrm {PWM} \ \),(ヌ)モジュラーマルチレベル,等になると思います。
高電圧化のため半導体素子を直列接続していた変換器を改良し,高電圧化や低損失化を実現するためセルと呼ばれる回路を複数個接続しアームを構成した変換器をモジュラーマルチレベル変換器\( \ \left( \mathrm {MMC:Modular Multilevel Converter}\right) \ \)といいます。



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