【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
次の文章は,発変電所用の酸化亜鉛形避雷器の試験に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。
酸化亜鉛形避雷器は,優れた非直線抵抗特性を持っているため,直列ギャップを必要としないので,放電遅れがなく,構造的に簡単,かつ小形である。酸化亜鉛形避雷器の試験には,一般的な構造検査や絶縁抵抗測定試験のほか,代表的な次のような試験が挙げられる。
a.漏れ電流試験は,定格電圧の\( \ 90 \ \mathrm {[%]} \ \)及び連続使用電圧に相当する商用周波電圧を印加して測定する。この場合,全漏れ電流の他,\( \ \fbox { (1) } \ \)漏れ電流を測定する。
b.\( \ \fbox { (2) } \ \)試験は,酸化亜鉛形避雷器の電圧-電流特性の小電流域における所定の電流値(\( \ \fbox { (1) } \ \)漏れ電流\( \ 1~3 \ \mathrm {[mA]} \ \))に対する避雷器端子間電圧を測定する。\( \ \fbox { (2) } \ \)は,連続使用電圧や\( \ \fbox { (3) } \ \)に耐える能力の指標になる。
c.\( \ \fbox { (4) } \ \)試験は,急しゅん波雷インパルス,雷インパルス及び開閉インパルスの\( \ 3 \ \)種類の電流波形について,所定の電流値における\( \ \fbox { (4) } \ \)の値を求める。
d.酸化亜鉛形避雷器が「実系統で課せられる責務を果たした後,引き続き使用できること」を確認するために行う試験を\( \ \fbox { (5) } \ \)試験という。\( \ 30 \ \)年間の使用期間中の連続運転電圧の課電,雷サージ(公称放電電流)\( \ 15 \ \)回,開閉サージ(遮断器の正常動作で発生するレベル)\( \ 50 \ \)回,\( \ \fbox { (3) } \ \)\( \ 50 \ \)回の\( \ 4 \ \)種類の電気的ストレスを等価模擬した試験を行う。
〔問3の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 定格電圧 &(ロ)& 抵抗分 &(ハ)& 共振過電圧 \\[ 5pt ]
&(ニ)& 制限電圧 &(ホ)& 負荷遮断時の過電圧 &(ヘ)& 短時間過電圧 \\[ 5pt ]
&(ト)& 安定性評価 &(チ)& 直流分 &(リ)& 公称電圧 \\[ 5pt ]
&(ヌ)& 容量分 &(ル)& 放電開始電圧 &(ヲ)& 耐電圧 \\[ 5pt ]
&(ワ)& 動作開始電圧 &(カ)& 熱的破壊 &(ヨ)& 動作責務 \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
避雷器の試験に関する問題です。
\( \ 1 \ \)種になると避雷器等の試験方法に関する問題も出題され,なかなか電験の書籍では取り扱わない内容の問題が出題されます。
本問に関しては,試験内容についてあまり知らなくても類推できる空欄もあるため,諦めずに\( \ 2 \ \)箇所や\( \ 3 \ \)箇所の空欄が正答できるようにしましょう。
1.酸化亜鉛(\( \ \mathrm {ZnO} \ \))形避雷器の電圧-電流特性
酸化亜鉛形避雷器の電圧-電流特性は図1のようになり,電験\( \ 2 \ \)種の頃よりも詳細な特性を理解しておく必要があります。
避雷器としての特性としては,商用周波数領域,開閉サージ,雷サージに区分されます。
2.避雷器の試験方法
避雷器の試験には以下の試験があります。電験においては具体的な数値を暗記する必要はありませんが,避雷器に求められる責務をイメージしながら概要を知っておくようにしましょう。
①漏れ電流試験
定格電圧の\( \ 90 \ \mathrm {[%]} \ \)及び連続使用電圧に相当する商用周波電圧を印加して,全漏れ電流と抵抗漏れ電流を測定します。
避雷器は\( \ \mathrm {ZnO} \ \)を誘電体とするコンデンサのような構造をしているため,容量分と抵抗分の電流があり,\( \ \mathrm {ZnO} \ \)素子が劣化してくると抵抗分が大きく変化します。
②動作開始電圧試験
小電流領域における所定の電流値(抵抗漏れ電流\( \ 1~3 \ \mathrm {[mA]} \ \))に対する避雷器端子間電圧を測定し,連続使用電圧や短時間過電圧に耐える能力を試験します。
使用電圧に応じ電圧の下限値が設定されています。
③制限電圧試験
雷サージ及び開閉サージに対する制限電圧の値を求めることが目的の試験で,規定されている急しゅん波雷インパルス,雷インパルス,開閉インパルスの電流波形について,制限電圧を求める試験となります。
④安定性評価試験
実系統で課せられる責務を果たし,引き続き使用できることを確認するための試験で,周囲温度\( \ 25 \ ℃ \ \)で\( \ 30 \ \)年間の使用期間中の連続運転電圧の課電,雷サージ\( \ 15 \ \)回,開閉サージ\( \ 50 \ \)回,短時間過電圧\( \ 50 \ \)回の\( \ 4 \ \)種類の電気的ストレスを想定した試験を行います。
【解答】
(1)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)抵抗分,(チ)直流分,(ヌ)容量分,になると思います。
ワンポイント解説「2.避雷器の試験方法」の通り,漏れ電流試験においては全漏れ電流と抵抗分漏れ電流を測定します。
(2)解答:ワ
題意より解答候補は,(イ)定格電圧,(ハ)共振過電圧,(ニ)制限電圧,(ト)安定性評価,(リ)公称電圧,(ル)放電開始電圧,(ヲ)耐電圧,(ワ)動作開始電圧,等になると思います。
ワンポイント解説「2.避雷器の試験方法」の通り,動作開始電圧試験が適当となります。内容から選択肢を絞るようにしましょう。
(3)解答:ヘ
題意より解答候補は,(ホ)負荷遮断時の過電圧,(ヘ)短時間過電圧,(カ)熱的破壊,になると思います。
ワンポイント解説「2.避雷器の試験方法」の通り,短時間過電圧となります。内容がわからなくても,(カ)熱的破壊が電流によるものだから除外し,後半のd.の文章から(ホ)負荷遮断時の過電圧を除外できると良いと思います。
(4)解答:ニ
題意より解答候補は,(イ)定格電圧,(ハ)共振過電圧,(ニ)制限電圧,(ト)安定性評価,(リ)公称電圧,(ル)放電開始電圧,(ヲ)耐電圧,(ワ)動作開始電圧,等になると思います。
ワンポイント解説「2.避雷器の試験方法」の通り,制限電圧が適当となります。図1の内容を理解していると類推が可能になるかと思います。
(5)解答:ト
題意より解答候補は,(イ)定格電圧,(ハ)共振過電圧,(ニ)制限電圧,(ト)安定性評価,(リ)公称電圧,(ル)放電開始電圧,(ヲ)耐電圧,(ワ)動作開始電圧,等になると思います。
ワンポイント解説「2.避雷器の試験方法」の通り,安定性評価試験が適当となります。