《電力》〈送電〉[H29:問3] 系統保護リレーシステムに関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,系統保護リレーシステムに関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

系統保護リレーシステムは,電力系統の安定運用を維持するための重要な役割を担っており,系統事故様相をよく把握し,絶えず保護性能の改善に努め,設備形成や系統運用計画と十分協調のとれたシステムとしていくことが必要である。
送電線に事故が発生した場合には,事故除去リレー装置により事故区間を高速度に選択遮断した後に自動的に\( \ \fbox {  (1)  } \ \)を行うことで,大部分の事故は正常系統に復旧する。しかし,万一,多重事故や設備損壊などにより,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)が成功しない際に事故波及のおそれがある場合は,事故波及防止リレー装置により事故波及を局限化する。その後,系統操作により正常系統に復旧する。
事故除去リレー装置のうち,事故区間を高速かつ確実に選択遮断できる方式として,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)リレーが挙げられる。事故除去リレー装置では,系統事故を速やかに検出し,健全な電力系統から事故区間を確実に切り離すために,様々な信頼度向上策が講じられている。特に基幹系統では,\( \ \fbox {  (3)  } \ \)により保護の確実化を図っている。
しかし,事故除去リレー装置の動作失敗や\( \ \fbox {  (4)  } \ \)の発生による事故除去時間の遅延,さらには大規模電源の脱落や事故除去区間の広範囲化により,系統脱調,周波数異常,電圧異常や設備過負荷などの種々の異常状態を引き起こすことがある。この影響を系統全体に波及拡大するのを防止し,電力系統の安定運転を維持するのが事故波及防止リレー装置の役割である。
なお,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)方式の選定にあたっては,一時的な無電圧・欠相状態の発生による過渡安定性のほか,火力機や原子力機の\( \ \fbox {  (5)  } \ \)の問題を考慮する必要がある。

〔問3の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 再閉路   &(ロ)& 送電線2回線の同時事故         &(ハ)& 方向距離 \\[ 5pt ] &(ニ)& 遮断器不動作事象   &(ホ)& 軸ねじれ   &(ヘ)& 多系列化 \\[ 5pt ] &(ト)& 過電圧   &(チ)& 過電流   &(リ)& 直列多重化 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 経済運用面   &(ル)& 高集積素子の採用   &(ヲ)& 母線事故 \\[ 5pt ] &(ワ)& リモートバックアップ         &(カ)& ローカルバックアップ   &(ヨ)& \mathrm {PCM} \ 電流差動
\end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

リレーに関する問題は毎年のように出題されています。本問の内容のみでなく,他にも様々な継電器があり今後も出題される可能性が高いと思います。

【用語の解説】

(イ)再閉路
雷等の一時的な過電圧の場合,一旦事故区間を遮断し,しばらくした後閉路することで,元通りに復旧することが多いです。この一連の操作を再閉路と言います。
(ハ)方向距離
方向距離リレーでは,リレーから事故点までの電気的距離が一定値以内であれば動作します。
(ホ)軸ねじれ
系統の電気的振動がタービンの振動と共振して,軸ねじれの応力が発生する現象です。
(ヘ)多系列化 
基幹系統では,誤動作や誤不動作を防止する目的で多系列化を実施しています。
(ト)過電圧
電圧がある値以上になった時に動作するリレーです。
(チ)過電流
短絡等で電流がある値以上になった際に動作するリレーです。
(リ)直列多重化
本用語は恐らく多系列化の誤答を狙った選択肢で,あまり使用することはないと思います。
(ル)高集積素子の採用
半導体等でよく集積回路という言葉を使用しますが,リレーではあまり馴染みのない用語です。
(ワ)リモートバックアップ,(カ)ローカルバックアップ
コンピュータ等でバックアップをするときのバックアップの仕方を言っていると思います。本問にはあまり関係ありません。
(ヨ)\( \ \mathrm {PCM} \ \)電流差動
\( \ \mathrm {PCM} \ \)は\( \ \mathrm {Pulse \ Code \ Modulation} \ \)の略であり,送電線の二か所における瞬時値の電流和を測定し,設定した範囲から逸脱した場合に動作するリレーです。非常に高速度で選択遮断できるので,現在では主保護リレーの主流となっています。

【解答】

(1)解答:イ
日本の電力系統では高速再閉路方式を採用しています。

(2)解答:ヨ
題意より解答候補は(ト)過電圧,(チ)過電流,(ヨ)\( \ \mathrm {PCM} \ \)電流差動,になりますが,事故区間を高速に選択遮断できる方式として(ヨ)\( \ \mathrm {PCM} \ \)電流差動が主流となっています。また,一般的に後備保護として距離リレーを採用しています。

(3)解答:ヘ
基幹系統では多系列化により,誤動作や誤不動作を防止しています。

(4)解答:ニ
題意より解答候補は(ロ)送電線2回線の同時事故,(ニ)遮断器不動作事象,(ヲ)母線事故,になると思いますが,問題文に「事故除去時間の遅延,さらには大規模電源の脱落や事故除去区間の広範囲化」となっていますので,該当するのは遮断器不動作事象のみとなります。

(5)解答:ホ
題意より解答候補は(ホ)軸ねじれ,(ヌ)経済運用面,になると思いますが,緊急時の対応なので,軸ねじれがより適当になると思います。



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