《電力・管理》〈火力〉[H21:問1]タービン発電機への逆相電流の影響に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★★★(難しい)

タービン発電機に逆相電流が流れた場合,回転子に発生する現象とその影響並びに対策について述べよ。

また,タービン発電機に要求される逆相電流の制限値がどのように設定されているかを述べよ。

【ワンポイント解説】

タービン発電機に逆相電流が流れた場合の影響に関する問題です。
私もそうですが,火力発電を運転経験している人間でも触れることが少ない内容で,かなり専門性が高いです。
選択する受験生はごく少数かと思いますが,不平衡電流により逆相電流が発生し,回転子に\( \ 2 \ \)倍周波数の電圧が誘起されることは何度か出題されたことがある内容なので覚えておいた方が良いかと思います。

1.タービン発電機に逆相電流が流れた場合の影響と対策
タービン発電機に不平衡負荷が接続されると,正相成分と速度は同じですが,向きが反対の逆相電流が流れます。これにより,回転子から見ると約\( \ 2 \ \)倍の周波数で導体を切ることになり,\( \ 2 \ \)倍周波数の電圧が誘起され,回転子に\( \ 2 \ \)倍周波数の渦電流が流れることになります。この高調波電流により,以下のような問題が発生する可能性があります。
 ・回転子のくさびがなまされてせん断破壊
 ・保持環が熱膨張し焼きばめ部にアークが発生し,材料を損傷
 ・発電機軸にねじり応力
 ・固定子巻線に大きな電磁力が発生
 ・固定子各部の振動
 ・タービン翼の振動 等
この対策として,以下の方法が取られます。
 ・くさびに耐熱特殊材を用いて,許容温度を上げる
 ・逆相電流リレーを設け,警報を発信し,\( \ \mathrm {JEC} \ \)で規定される短時間運転時の許容電流(逆相電流の定格電流に対する割合の\( \ 2 \ \)乗と時間の積)を超える場合には発電機を停止する
 ・回転子に制動巻線を設け,制動分電流を流す 等

【解答】

(ポイント)
・ワンポイント解説「1.タービン発電機に逆相電流が流れた場合の影響と対策」の通りです。
・すべてを完璧に記載するよりも,関連する内容を絞り出して書き出すと高得点が得られるかと思います。

(試験センター解答)
(現象)
タービン発電機に流れる逆相電流は,発電機内部に回転子と逆方向に回転する磁界を作り,これが界磁巻線に鎖交すると回転子に\( \ 2 \ \)倍周波数の電圧が誘起される。このため回転子には同周波数の渦電流(制動電流)が発生する。この電流は,表皮効果により主に回転子のくさびと保持環の間を流れる。くさびと保持環の接触部などは接触抵抗が大きいため,この部分を通る渦電流によって過熱される。

(影響)
この結果,
・くさびがなまされてせん断破壊を起こす。
・保持環が熱膨張し,焼きばめ部分があまくなってアークが発生し,材料を損傷する。
などの影響を与える。

(対策)
そこで,
・回転子に制動巻線を設け,制動分電流を流す。
・くさびに特殊耐熱材を用いる。
・発電機に逆相電流リレーを設け,警報の発報や発電機の停止を行う。
などの対策が採られる。

(制限値の設定)
タービン発電機に要求される逆相電流の制限値は,\( \ \mathrm {JEC\left( 2130-2000\right) } \ \)において次のように規定されている。
・連続運転に対しては,定格電流に対する一定の比率
・故障状態での短時間運転に対しては,上記比率の二乗と時間の積
また,これらの制限値は,回転子の冷却方式や発電機容量により,以下のような傾向で定められている。
・間接冷却方式より直接冷却方式の方が小さい。
・直接冷却方式の場合,発電機容量の大きい方が小さくなる。
・短時間運転においては,空冷式より水素冷却式の方が小さい。



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