《電力・管理》〈電気施設管理〉[H24:問4]大容量変圧器及びGISの輸送及び現地据付工事に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

大容量変電機器の信頼性確保に関して大容量変圧器及び大容量\( \ \mathrm {GIS} \ \)を例にとり,次の問に答えよ。

(1) 大容量変電機器の品質を確保するために,輸送及び現地据付けに関して,設計時に配慮する事項を説明せよ。

 a.大容量変圧器及び大容量\( \ \mathrm {GIS} \ \)に共通して配慮する事項

 b.大容量変圧器及び大容量\( \ \mathrm {GIS} \ \)に個別に配慮する事項

(2) 現地据付けにおいて品質管理に必要な配慮事項を,①作業環境,②絶縁物の吸湿防止,③異物混入防止に関して,機器ごとにそれぞれ説明せよ。

【ワンポイント解説】

変圧器の設計を行うメーカー勤務の方や変圧器や\( \ \mathrm {GIS} \ \)の更新を担当したことがある方ならばある程度類推して記述可能な問題かと思います。
変圧器や\( \ \mathrm {GIS} \ \)の構造として,できるだけ工場で組立を行い現地での工事は最低限にしたいという観点で考えていきましょう。

【解答】

(1)a.大容量変圧器及び大容量\( \ \mathrm {GIS} \ \)に共通して配慮する事項
(ポイント)
・一体で持っていくことが望ましいですが,どちらも重量,サイズとも大きい機器であるため,ある程度分解して運搬していく必要があります。
・輸送経路を検討する際には,道路の重量制限や高さ制限,車両の回転半径等をよく検討し,時間帯も夜間~早朝に行うのが一般的となります。

(試験センター解答)
工場で試験を終えた変電機器は,必要に応じて輸送のための分解,梱包を行ってから,現地へ輸送される。そして現地ではこれらの分解された機器を組み立て,絶縁媒体の封入を行い,正規状態となる。大容量変電機器の設計に際して,輸送においては,輸送単位が機器一体輸送,又は分解数を極小化するように配慮されており,品質向上に役立っている。
また,現地据付けにおいては,現地作業の範囲を極小化,単純化し,施工不良の発生を防止するように設計されている。

(1)b.大容量変圧器及び大容量\( \ \mathrm {GIS} \ \)に個別に配慮する事項
(ポイント)
・大容量変圧器は非常にサイズが大きいため,分解して輸送するのが一般的です。その中で輸送や現地工事で粉じんの侵入を防ぎたいため,本体の分解はできるだけ極小化し,リード線や冷却ファン等の周辺設備を容易に現地で取り付け可能な構造にしておく等の工夫がなされます。
・\( \ \mathrm {GIS} \ \)は変圧器程の重量はありませんが,様々な機器を一体型としているため,その形状がやや複雑となりやすい傾向があります。したがって,ある程度分解して運搬することになりますが,できるだけ現地工事を簡略化するために,はめ合い構造やボルト締結としたりしています。

(試験センター解答)
① 変圧器では,リードの接続においては,工場製造時に取り付けた羽子板端子構造によるボルト締結として,現地でのリード切断などを行わない構造としていること,冷却部取り付け部の接続では,取り付け部のバルブを本体側のフランジに取り付けたまま,冷却器を取り外せる構造により分解,輸送時の防水,防塵効果を高めることが上げられる。
② \( \ \mathrm {GIS} \ \)では,通電部の通電接触子を用い,導体部に,はめあい構造,ボルト締結といった簡易な接続方式を採用し,複雑な作業を伴わず,確実な接続ができるように配慮されている。一方,タンク接続においては,フランジ部の防水構造化,吸着剤取り付けによる防湿対策がなされている。また金属異物の発生しにくいはめ合い構造による異物対策がなされている場合もある。

(2)現地据付けにおいて品質管理に必要な配慮事項を,①作業環境,②絶縁物の吸湿防止,③異物混入防止に関して,機器ごとにそれぞれ説明
(ポイント)
・現地組み立て作業時には,工場から輸送にて維持してきた品質を損なうことがない様,粉じん,吸湿等に十分に注意する必要があります。
・雨天時の作業中止,周辺が土である場合には散水の実施,隔壁を設置する等の措置がとられます。私が担当した発電所建設時も雨天が続き,作業の調整が必要となったことがありました。
・具体的な数値等が試験センターの解答には記載がありますが,そこまで解答しなくても十分に合格点は得られると思います。

(試験センター解答)
a.大容量変圧器
① 作業環境:タンク内に塵埃や異物が混入しないために周囲に隔壁や蓋いを設置するなどの防塵措置を施すと共に,作業場周辺に散水を行うなどの作業環境を整備し,場合により粉塵計を使用して防塵管理を行う。
② 吸湿防止:タンク内作業時における絶縁物の吸湿を防止するために,絶縁物の露出時間を管理すると共に,作業に使用する乾燥空気の湿度とタンクの内部湿度を管理する。現地作業中に吸湿した水分を熱湯噴霧循環により乾燥させ,絶縁物表面部分の水分量を基準値以下にする。
高真空下(\( \ 0.1 \ \)から\( \ 3 \ \mathrm {[Torr]} \ \))脱気装置を通して脱気ろ過した絶縁油を注油する。
③ 異物混入防止:真空脱気注油後,さらに絶縁油中の微小な塵埃を除去し,脱気度を向上させるために,タンク内の絶縁油を真空脱気装置を通して脱気ろ過循環する。
b.大容量\( \ \mathrm {GIS} \ \)
① 作業環境:現地接続部の組み立て後の品質は,作業環境の影響を受けやすい。雨天時の作業を回避すると共に,湿度,風速 及び塵埃を基準値以下に確保する必要がある。(湿度\( \ 80 \ \mathrm {[%]} \ \)以下,風速\( \ 5 \ \mathrm {[m / s]} \ \)以下,塵埃は\( \ 20 \ [ \)カウント\( \ \mathrm { / min]} \ \)以下)
② 吸湿防止:組み立て中では,所定の防水処理を行い,吸着剤の放置時間は\( \ 30 \ \)分以内とする。
③ 異物混入防止:作業中はフランジ面への保護カバー取り付けや,Oリングの傷,異物のないことの確認に留意し,防塵フェンスや防塵ハウスを適用し,防塵に配慮して接続作業を行う。ガス処理を行う前に導体接続部の目視確認を行い,真空掃除機などを用いて,タンク内部を清掃後,吸着剤を取り付ける。



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