《電力・管理》〈火力〉[H30:問1] 熱効率に影響する運転時の管理項目に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

化石燃料を使用する現用の汽力発電方式で,蒸気タービンとボイラの効率に影響する運転時の管理項目を「蒸気温度・蒸気圧力」以外に三つ挙げ,どのように制御すれば効率を高めることができるか,損失の増加や設備への影響などの問題点と併せて説明せよ。

【ワンポイント解説】

平成30年度の電力管理の論説問題の中では,最も分かりやすい問題であったと思います。復水器真空度と排ガス温度は出ると良いです。火力発電所のタービン及びボイラ側の系統図をイメージしながら解くと良いと思います。下図の系統図を頭に入れ,どうなるかを検討してみて下さい。


【解答】

(ポイント)
・熱ロスが発生する場所はボイラ本体,復水器,排ガスなので,それぞれに対する項目を列挙します。
・ボイラでの空気量が足りないと不完全燃焼で燃料が燃え切らず,空気量が多すぎると燃焼温度が下がり,排ガスロスが増え,押込通風機等の補機の電力ロスも増えます。
・排ガス温度が高いとロスが大きくなり,排ガス温度が低いと露点に達し,各部に低温腐食を起こします。
・復水器真空度は,真空度が低くなると熱落差が低下し,効率が低下します。復水器は全体の熱量の半分をロスすると言われています。

(試験センター解答例)
(1)「ボイラ排ガス中の酸素濃度」(=過剰空気率)
過剰空気率が適正であるときは燃料が完全燃焼するため効率が高まる。大きすぎるとボイラ内の燃焼温度が下がり,排ガス損失が増加する。小さすぎると不完全燃焼となり未燃損失が増加する。

(2)「空気予熱器出口排ガス温度」(=排ガス温度)
空気予熱器で燃焼用空気を予熱すれば炉内温度が高くなり,燃料の蒸発量,燃焼速度が増加するため,燃料が完全燃焼し効率が高まるとともに,排ガスの熱を利用して空気を加熱することで効率は上昇する。また,排ガスの熱を利用し,節炭器で給水を加熱すると効率を向上することができる。排ガス温度が高くなると排出エネルギーが増加し,低すぎると空気予熱器や節炭器の低温部腐食が多くなる。

(3)「復水器真空度」(=真空度)
復水器の真空度を増加させればタービン出口蒸気の排気圧が低くなり排出エネルギーが小さくなるため,タービンの熱落差を増加させることとなり,効率は向上する。真空度を高めれば効率は上昇するが,復水が過剰に冷却されるため,効率は低下する。他にも真空度が高いことによるタービン振動の増加も懸念される。



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