《電力・管理》〈電気施設管理〉[H29:問6]電力系統における電力損失に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

電力系統における電力損失(発電所で発生した電力が,需要家に供給されるまでの間に発電所,変電所及び送電線や配電線でその一部が失われること)に関して,次の問に答えよ。

(1) 電力損失を発電所所内電力と送変配電設備に分け,それぞれの損失を構成する内容について簡単に述べよ。なお,発電所は汽力を原動力とする火力発電所とし,直流送電は想定しなくてよい。

(2) 近年の水力発電所所内電力の所内比率(発電電力量に対する所内電力量の割合),及び送変配電設備の損失率について,全国平均実績値\( \ [\mathrm{%}] \ \)として最も近いものを解答群の中から選び,それぞれその記号を答えよ。

 〔解答群〕
  (イ) \( \ 1 \ \)  (ロ) \( \ 5 \ \)  (ハ) \( \ 10 \ \)  (ニ) \( \ 15 \ \)  (ホ) \( \ 20 \ \)  (ヘ) \( \ 30 \ \)   

(3) 発電所を除く電力系統における電力損失軽減対策について三つ挙げ,それぞれ簡潔に説明せよ。

【ワンポイント解説】

発電,変電,送電の各分野から少しずつ出題されているため,満点も取りにくいですが,部分点もある程度取れそうな問題です。(2)が分かるのであれば,かなり高得点が望めるので,その場合は是非とも選択したい問題と言えます。

【解答】

(1)電力損失を構成する内容
(ポイント)
・火力発電所は,ボイラーへ水を供給するための給水ポンプの動力が最も大きく,誘引通風機や押込通風機等の大型補機も多いため,所内率は\( \ 2~6 \ \mathrm{%} \ \)程度となります。
・変圧器では鉄損や銅損があります。
・送電設備では電線の抵抗損があります。

(試験センター解答例)
a 発電所所内電力
 発電のために使用する動力,照明,電熱などをいう。
 火力発電所では,冷却水循環やボイラ給水,送風などのほか,排煙脱硫装置や石炭灰の処理などの動力が必要になる場合もある。

b 送変配電設備の電力損失
 送電線路・変電所・配電線路中で消費される銅損や鉄損,その他の電力損失であり,潮流や力率などによって変動する。電力系統の電力損失では一番大きい。
 送配電線の抵抗損(オーム損)がメインで,変圧器では鉄損や銅損が発生する。超高圧送電線ではコロナ損,地中送電線では誘電体損やシース損がある。

(2)水力発電所所内電力の所内比率及び送変配電設備の損失率
 所内比率:イ
 損失率 :ロ

(3)電力系統における電力損失軽減対策
(ポイント)
・電力損失には送電線を流れる電流値が大きく関係しています。
・電圧の格上げ,力率改善,系統の見直し等はすべて電流値に影響します。

(試験センター解答例)
以下から三つ挙げてあれば正解とする。
a 潮流改善
電力系統間をつなぐ連系送配電線路を新設するなどして各電力系統を流れる電力潮流を改善し,電力損失の軽減を図る。
b 過負荷解消
過負荷傾向にある送配電線路に対し新たに送配電線路を新設・増設するなどにより過負荷を解消し,電力損失の軽減を図る。
c 力率改善
遅れ力率で値が悪いと電流が増え電力損失が増加することから,電力コンデンサを設置して遅れの無効電力を打ち消し電力損失の軽減を図る。
d 電圧格上げ
電力損失は電流と抵抗によるものであり,送電線や高圧配電線の格上げ(上位電圧への移行)により電流値を抑え電力損失の軽減を図る。



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