《電力・管理》〈送電〉[H24:問5]我が国の電力系統に採用されている直流連系に関する論説問題

【問題】

【難易度】★☆☆☆☆(易しい)

わが国の一般電気事業者(※現在の一般送配電事業者)(沖縄電力株式会社を除く)の電力系統は,互いに連系して広域運営が行われている。この系統連系の中には,直流を介する連系(直流連系)が存在する。次の問に答えよ。

(1)直流連系の一般的な長所を四つ,短所を三つ挙げよ。

(2)系統周波数が同じ電力系統間の連系であるにもかかわらず,直流を介した連系が三つ存在する。そのうちの一つについて,連系箇所を挙げ,直流連系を採用するに至った最も大きな技術的理由を一つ述べよ。

【ワンポイント解説】

直流送電に関する問題は二次試験の論説問題においては定番の問題となっていますので,ほとんどの受験生が選択した問題であると考えられます。
丸暗記というよりも,それぞれのメリットデメリットに関して理由を理解しながら暗記すると忘れにくくなるかと思います。

1.直流送電のメリットデメリット
<直流送電のメリット>
・安定度の問題がないため,送電線の熱的許容電流まで送電容量を増やせます。したがって,大容量の送電に有利です。
・無効電流による損失がないので,送電損失が少ないです。したがって,長距離送電に有利です。
・同容量のケーブルで,交流に比べ\( \ \sqrt {2} \ \)倍までの電圧を送電できます。
・電圧最大値が実効値と等しいので,絶縁強度を低減が図れます。
・静電容量による充電電流が流れないため,誘電損が発生しません。
・送電線が\( \ 2 \ \)条で良いため,建設コストが下がります。

<直流送電のデメリット>
・交直変換装置が必要です。
・交流のように零点がないため,高電圧・大電流の遮断が難しいです。
・変換装置から高調波が発生するため,フィルタや調相設備の設置が必要です。
・大地帰路方式において,電食が発生しやすいです。
・変圧器で電圧の変成ができません。

2.日本での直流送電の現状
下図のように日本では直流連系されている場所があります。
①北海道ー本州直流連系
 北海道と本州を結ぶ直流送電で,送電距離も\( \ 167 \ \mathrm {km} \ \)と非常に長く,直流送電のメリットが享受できると考えられます。完成も\( \ 1979 \ \)年と最も古いです。
②紀伊水道直流連系
 本州と四国を結ぶ直流送電で,送電距離は\( \ 100 \ \mathrm {km} \ \),完成が\( \ 2000 \ \)年とどちらも覚えやすい数字となっています。
③南福光連系所
 北陸電力と中部電力を繋ぐ直流連系で,関西電力との三者間の潮流制御をしやすくするために設置された直流送電を伴わない交直変換のみを行う送電です。


出典:Power Academy 電気の施設訪問レポート vol.17

【解答】

(1)直流連系の一般的な長所を四つ,短所を三つ
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.直流送電のメリットデメリット」の通りです。試験センターの解答とワンポイント解説で少し異なる内容もありますが,解答にも「一般的な」と書いてあるので,ワンポイント解説の内容も正解と考えて良いと思います。

(試験センター解答)
直流連系の一般的な長所及び短所は,次のとおりである。
(a)長所
① ケーブルで送電する場合,充電電流に起因した無効電力発生がないので,そのための無効電力補償装置が不要である。
② 交流系統の短絡容量が連系によって増大しない。
③ 潮流を自由に,かつ高速に制御できる。
④ 送電端と受電端との間の電圧位相差に起因する安定度問題がないので,長距離大容量送電による連系が可能である。
⑤ 交流系統の事故が他の交流系統に波及しない。
⑥ 交流連系と比べて送電線条数が少なくて済むので,送電線の支持物を小形にできる。
⑦ 周波数の異なる系統を連系することができる。
(b)短所
① 直流連系の両端に変換設備が必要である。
② 交流系統の短絡容量が小さい場合,電圧不安定問題,発電機軸ねじり(ねじれも可)問題,及び高調波不安定現象を発生する可能性がある。
③ 多端子連系の場合は,制御と保護とが複雑になる。
④ 高調波対策が必要である。

(2)我が国の直流連系箇所を一つ挙げ,直流連系を採用するに至った最も大きな技術的理由
(ポイント)
・ワンポイント解説「2.日本での直流送電の現状」の通りです。

(試験センター解答)
同じ系統周波数の電力系統間の直流連系は,以下の三つであり,採用するに至った最大の技術的理由は,それぞれの連系ごとに下記のとおりである。
① 北海道 – 本州間直流連系
採用するに至った最大の技術的理由は,海底ケーブルによる海峡横断送電であるため,交流連系での無効電力発生を回避できること。
② 南福光直流連系
採用するに至った最大の技術的理由は,ループ系統での潮流制御の自由度確保
③ 紀伊水道直流連系
採用するに至った最大の技術的理由は,海底ケーブルによる海峡横断送電であるため,交流連系での無効電力発生を回避できること。



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