《電力・管理》〈火力〉[H26:問1] 火力発電所における燃料の燃焼に関する計算問題

【問題】

【難易度】★☆☆☆☆(易しい)

火力発電所における燃料の燃焼に関して,次の問に答えよ。

なお,原子量は,水素(\(\mathrm {H}\)) \(1\),炭素(\(\mathrm {C}\)) \(12\),酸素(\(\mathrm {O}\)) \(16\),硫黄(\(\mathrm {S}\)) \(32\)である。また,問題文中にある\([\mathrm {Nm^{3}}]\)は,標準状態(\(0℃\),\(101 \ 325 \ \mathrm {Pa}\) )における気体の体積\([ \mathrm {m^{3}} ] \)を表す単位である。

(1) 炭素が完全燃焼すると二酸化炭素になるが,\(1 \ \mathrm {kg}\)の炭素の完全燃焼に必要な酸素の質量\([ \mathrm {kg} ] \)を求めよ。

 次に,水素\(1 \ \mathrm {kg}\),硫黄\(1 \ \mathrm {kg}\)の完全燃焼に必要な酸素の質量\([ \mathrm {kg} ] \)をそれぞれ求めよ。

(2) 上記(1)では完全燃焼に必要な酸素を質量で求めた。しかし多くの場合,気体の量は体積で示した方が便利である。そこで\(1 \ \mathrm {kg}\)の炭素の完全燃焼に必要な酸素の体積\([\mathrm {Nm^{3}}]\)を求めよ。

(3) 質量比で炭素\(70 \ %\),水素\(7.5 \ %\),硫黄\(0.6 \ %\),酸素\(8.5 \ %\)を含む石炭について,完全燃焼するために必要な単位質量当たりの理論空気量\([\mathrm {Nm^{3}} / \mathrm {kg}]\)を求めよ。

 ただし,空気中には体積百分率で\(21 \ %\)の酸素を含むものとし,かつ,上記以外の成分は燃焼とは関係ないものとする。

【ワンポイント解説】

火力の燃焼計算に関する問題です。(3)の酸素の取扱いがキーポイントとなりそうですが,一種としては比較的取り組みやすい問題と言えると思います。各原子の原子量や空気中の酸素の割合は問題で与えられているとは限らないので,暗記しておくようにしましょう。

【解答】

(1)炭素,水素,硫黄\(1 \ \mathrm {kg}\)の完全燃焼に必要な酸素の質量
炭素,水素,硫黄の燃焼反応式は下式の通りとなる。
\[
\begin{eqnarray}
&&\mathrm {C}+\mathrm {O}_{2}→ \mathrm {CO}_{2} \\[ 5pt ] &&\mathrm {H}_{2}+\frac {1}{2}\mathrm {O}_{2}→ \mathrm {H}_{2}\mathrm {O} \\[ 5pt ] &&\mathrm {S}+\mathrm {O}_{2}→ \mathrm {SO}_{2} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] よって,炭素,水素,硫黄それぞれが完全燃焼するのに必要な酸素の質量\(M_{\mathrm {C}}\),水素\(M_{\mathrm {H}}\),硫黄\(M_{\mathrm {S}}\)は,
\[
\begin{eqnarray}
M_{\mathrm {C}}&=&\frac {1}{12}\times 32 \\[ 5pt ] &≒&2.6667 → 2.67 \ \mathrm {[kg]} \\[ 5pt ] M_{\mathrm {H}}&=&\frac {1}{2}\times \frac {1}{2}\times 32 \\[ 5pt ] &=&8 \ \mathrm {[kg]} \\[ 5pt ] M_{\mathrm {S}}&=&\frac {1}{32}\times 32 \\[ 5pt ] &=&1 \ \mathrm {[kg]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(2)\(1 \ \mathrm {kg}\)の炭素の完全燃焼に必要な酸素の体積\([\mathrm {Nm^{3}}]\)
標準状態において気体の体積は,\(1 \ \mathrm {kmol}\)あたり\(22.4 \ \mathrm {Nm^{3}}\)であるので,)\(1 \ \mathrm {kg}\)の炭素の完全燃焼に必要な酸素の体積\(O_{\mathrm {C}}\)は,
\[
\begin{eqnarray}
O_{\mathrm {C}}&=&\frac {1}{12}\times 22.4 \\[ 5pt ] &≒&1.8667 → 1.87 \ \mathrm {[\mathrm {Nm^{3}}]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(3)石炭が完全燃焼するために必要な単位質量あたりの理論空気量\([\mathrm {Nm^{3}} / \mathrm {kg}]\)
\(1 \ \mathrm {kg}\)の水素及び硫黄が完全燃焼に必要な酸素の体積\(O_{\mathrm {H}}\)及び\(O_{\mathrm {S}}\)は,
\[
\begin{eqnarray}
O_{\mathrm {H}}&=&\frac {1}{2}\times \frac {1}{2}\times 22.4 \\[ 5pt ] &=&5.6 \ \mathrm {[\mathrm {Nm^{3}}]} \\[ 5pt ] O_{\mathrm {S}}&=&\frac {1}{32}\times 22.4 \\[ 5pt ] &=&0.7 \ \mathrm {[\mathrm {Nm^{3}}]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるから,題意の石炭が完全燃焼するのに必要な酸素の体積\(O_{\mathrm {F}}\)は,
\[
\begin{eqnarray}
O_{\mathrm {F}}&=&0.7\times 1.8667+0.075\times 5.6+0.006\times 0.7 – \frac {0.085}{32}\times 22.4 \\[ 5pt ] &=&1.3067+0.42+0.0042 – 0.0595 \\[ 5pt ] &=&1.6714 \ \mathrm {[\mathrm {Nm^{3}}]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるので,石炭が完全燃焼するのに必要な理論空気量\(A_{0}\)は,
\[
\begin{eqnarray}
A_{0}&=&\frac {O_{\mathrm {F}}}{0.21} \\[ 5pt ] &=&\frac {1.6714}{0.21} \\[ 5pt ] &=&7.9590 → 7.96 \ \mathrm {[\mathrm {Nm^{3}} / \mathrm {kg}]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。



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