《電力・管理》〈送電〉[R03:問5]特別高圧送電線で使用される懸垂がいし及び避雷装置に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

特別高圧送電線の装置について,次の問に答えよ。

(1) 送電線に使用されている懸垂がいしについて,送電線が課電された状態で,不良がいしを検出する方法に関し,異なる測定項目を二つ挙げ,それぞれについて具体的な検出方法について答えよ。ただし,目視点検は除くものとする。

(2) 近年,抵抗接地系の送電線にギャップ付送電用避雷装置が広く設置されていきている。

 a) 図1に示す酸化亜鉛型の避雷要素部と直列ギャップから構成される\( \ 77 \ \mathrm {kV} \ \)用ギャップ付送電用避雷器装置のⒶとⒷが,図2の\( \ 77 \ \mathrm {kV} \ \)送電線の①~④の通常どこに接続されるか理由を含めて答えよ。

  記載例 Ⓐ:①,Ⓑ:②,理由:・・・

 b) 落雷による送電線トリップを極力防止するために設置される,この装置の作動メカニズムを答えよ。

【ワンポイント解説】

送電線の懸垂がいしと避雷装置に関する問題です。
完全に知っているかどうかの問題なので,知らなかった場合は解答を見て覚えておきましょう。
(1)の懸垂がいしの点検方法はやや専門性が高い内容かと思います。(2)の避雷装置について概要を解答できれば十分に合格圏内には入れるかと思います。

【解答】

(1)送電線が課電された状態で,不良がいしを検出する方法に関し,異なる測定項目を二つと具体的な検出方法
(ポイント)
・懸垂がいしはその電圧や汚損レベルに応じ多数のがいしを直列に接続し使用されますが,長期間屋外にて使用されるため,がいし連の一部が不良がいしとなると,他の健全がいしの分担電圧が大きくなりフラッシオーバする可能性が高くなります。したがって,分担電圧,絶縁抵抗,漏れ電流等を測定すれば良いことがわかるかと思います。
・送電線を停止して鉄塔を登り全がいしを確認することは現実的ではないため,解答に示されているような課電中での測定方法があります。

(試験センター解答)
  以下の中から二つ記載されていればよい。なお,検出方法は具体的な方法又は検出方式名のどちらかが記載されていればよい。
・測定項目:各がいしの分担電圧
 検出方法:分担電圧を測定し,その低下を検出する方法。その方式にはネオン管(ネオンランプ)式,音響(ギャップ)式,音響パルス式,自走式,光パルス式などがある。

・測定項目:各がいしの絶縁抵抗値
 検出方法:静電容量の大きなコンデンサをがいしに並列に接続し,がいしの交流分担電圧を零にしてから,直流電圧を印加して絶縁抵抗値を測定し,その低下を検出する方法で,主に\( \ 275 \ \mathrm {kV} \ \)・\( \ 500 \ \mathrm {kV} \ \)に用いられる。その方式には自走式不良がいし検出器を用いる方式がある。

・測定項目:各がいしからの漏れ電流
 検出方法:漏れ電流を測定し,送電線からの漏れ電流に対する比率から不良がいしを検出する方法で主に\( \ 33 \ \mathrm {kV} \ \)以下に用いられる。その方式には\( \ \mathrm {KD} \ \)式がある。

・測定項目:がいし近傍の電界
 検出方法:電界を測定し,その変化から不良がいしを検出する方法。その方式には電界測定式不良がいし検出器,\( \ \mathrm {MG} \ \)管式不良がいし検出器などを用いる方式がある。

・測定項目:各がいしの振動周波数
 検出方法:音波を発信してがいしを振動させた状態でこれを用いて振動周波数を測定し,その低下から不良がいしを検出する方法。その方式にはドップラー振動計を用いる方式がある。

(2)a)図1のギャップ付送電用避雷器装置のⒶとⒷが,図2の\( \ 77 \ \mathrm {kV} \ \)送電線の①~④の通常どこに接続されるかとその理由
(ポイント)
・送電線用ギャップ付避雷器の設置目的は,アークホーンでフラッシオーバする前に雷過電圧を避雷器側で放電させ,続流による地絡事故を防止するためです。したがって,アークホーンに対し並列に接続する必要があります。
・避雷要素部側を常時無荷電に,また電線振動等の荷重が加わらないようにするため鉄塔アーム側に固定して,直列ギャップ側を送電線側に接続します。

(試験センター解答)
Ⓐ:④,Ⓑ:①
理由:質量のある避雷要素部を常時無課電で安定的に取り付けるため

(2)b)落雷による送電線トリップを極力防止するために設置される,この装置の作動メカニズム
(ポイント)
・フラッシオーバや逆フラッシオーバによる碍子の損傷を防止するためにアークホーンは設けられていますが,アークホーンで放電すると続流により地絡事故となり一旦遮断器が動作し再閉路する必要があります。酸化亜鉛の優れた特性により続流を最小限に抑えられるため,送電線トリップを防止することが可能となります。

(試験センター解答)
雷サージ過電圧の侵入時にギャップ付送電用避雷装置の気中ギャップがフラッシオーバして放電電流が流れた後,系統電圧による電流(続流)を避雷要素部の酸化亜鉛素子の特性により非常に小さく抑えて,ほとんど半サイクル以内に気中ギャップで消弧することにより,送電線トリップを防止する。



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